法律には、「解釈」という作業が欠かせません。
単純に「人」と言っても、その法律の目的によって
意味が違ってきたりします。
今日は、そんな法律の解釈の基本の基本を
ちょっとかじってみましょう(^ ^)
(高速道路の上を走る「人」@横浜マラソン2022)
<毎日更新554日目>
法律の世界では、「解釈」というものが問題に
なります。
法律は文章の形で書かれていて、それを読んでシンプルに
全ての問題が解決できればベストですが、現実の社会は
そうも行きません。
例えば、刑法という法律では、殺人罪という犯罪が定められています。
刑法199条
ここでいう「人を殺した」の「人」とは具体的に何を意味するのでしょうか?
そう思うでしょうね。
他方で、刑法では堕胎罪という犯罪も定められています。
刑法212条
堕胎罪の客体は、当然「胎児」ということになります。
「人」を殺すと最低でも5年以上の懲役、他方で胎児を殺す堕胎だと、
1年以下の懲役となります。
それでは、この「人」と「胎児」はどう違うのか?
そう思いますよね。
では、その生まれて「人」になるのはどの時点なのでしょうか?
ここで、「胎児」から「人」になる人の始期について、
主に次の2つの学説があります。
<一部露出説>
<全部露出説>
この点、刑法の世界では、「一部露出説」をとるとされています。
それは、刑法の世界では、
一部とはいえ母体から出ているのであれば、それは「胎児」ではなく「人」として保護されるべきだから
という価値観が背景にあります。
こんな風に、「人」という法律の言葉だけでは必ずしも明らかではないので、
その法律の趣旨にさかのぼってその意味するところを考える必要がある、
これがまさに法の「解釈」と言われる作業です。
このように、「人」の始期について、刑法の世界では
「一部露出説」がとられます。
ところが、これが民事の世界となると、「一部露出説」ではなく、
「全部露出説」がとられます。
それはなぜか?
民事の世界で人の始期が問題となる一番典型的な場面は
相続、つまり人が亡くなって、その人の財産を誰が受け継ぐか、
というところです。
この点、民法では、胎児の相続について次のような規定があります。
民法886条
要するに、胎児が死産だったときには、この胎児は相続権がない、
ということを意味します。
これはどういうことでしょうか?
これをわかりやすく図にするとこんな感じに。
この中で、まず夫が死亡し、その後胎児が生きて生まれたときは、
亡くなった夫の財産は、妻が1/2、生まれてきた子どもが1/2
相続することになります。
この場合、夫の母は、夫の財産について相続権はありません。
ところが、この胎児が死産で生まれてきた場合は、逆に
夫の母が1/3、妻が2/3の割合で夫の財産を相続することに
なります。
このように、子どもが生きて生まれるか、死産になってしまうかで、
妻からすれば
の違いが出ることになります。
ただ、「胎児」から「人」になるのがいつなのか?
という人の始期の問題としては、刑法の世界のように
できるだけ緊急的に保護しなければならない、
という要請はありません。
そのようなわけで、民事の世界では、刑法の世界とは違い、
人の始期については「全部露出説」がとられているのです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
このように、刑法と民法でなぜ「人」の始期について
解釈が異なるのか?
それは、その法律の目的(立法趣旨)が違うから。
刑法はあくまで「人」の安全を保護するという必要があります。
だから、なるべく早い段階で「人」になった方が良い。
なので「一部露出説」
他方で、民法の世界では、生きて生まれたか、死産だったかがという
結果が重要で、「人」の始期の早い遅いはそれほど重要ではありません。
ここでは、誰に相続権があるのかをはっきりさせることこそ重要なので、
むしろどの時点から「人」になるのかについても、
外から見てわかりやすい基準が求められます。
なので「全部露出説」
どうです?
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また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。