社員に残業を頼んだら
副業を理由に残業を断られた。
こんなとき
会社としてはどう対処したら
よいのでしょうか?
(今日の「棒人間」 本業と副業をかけもち??)
<毎日更新1281日目>
すまんけど、ちょっと今日残業をお願いしたいんだけど。
ごめんなさい、今日はタイミーで副業なんです〜。
え、あなたタイミーさん??
世の中には
「タイミーさん」と呼ばれる人が
出現しているそうです。
「タイミーさん」というのは
1日に数時間だけ働く
アルバイトのことだとか。
会社員としてフルタイムで働きつつ
業務時間外に数時間だけの
「副業」に利用する人もいるそうですね。
会社としては
社員に残業をして欲しいのに
社員が副業を理由に残業を拒否。
このような場合
会社としてはどう対処したら
よいのでしょうか?
そもそも
会社は原則として社員の副業を
禁止することはできない
とされています。
なぜなら
基本的に社員の勤務時間以外の
時間は自由時間であって
原則としてその時間をどう過ごすかは
社員の自由ということになるからです。
ただし
社員の副業をまったく自由にしてしまうと
会社の仕事に支障が出たり
会社の利益が害される場合があります。
そこで
には
会社は例外的に社員の副業を制限できる
とされています。
逆に
こうした事情がなければ
やはり社員の副業は制限できない
ということになります。
それでは
副業を理由に社員が残業を拒否した場合
会社はどう対処したらよいのでしょうか?
ここで
まず会社の残業命令の性質を
考える必要があります。
そもそも
会社が社員に残業を命じるには
その社員の同意が必要なのか?
これについては
最高裁の判例で
社員の同意は不要であると
判断したものがあります。
会社と社員は
「雇用契約」を締結しており
この雇用契約上の義務として
社員は会社に対して労務を
提供することになります。
また
会社は社員に対して
この雇用契約に基づいて
必要な業務を命じる権限があります。
この会社の業務命令権に基づき
会社は社員に対して
業務命令として残業を
命じることができます。
ただし
社員に残業をさせるにも
上限の規制があります。
すなわち
残業は原則として月45時間
年間360時間までとされています。
ただし
労使が特別に合意した場合には
例外的にこれを超えて
残業させることができます。
しかし
その場合でも
以下の規制がかかります。
ですから
会社に業務命令権があるといっても
この上限規制に違反して残業を
命ずることはできないことは当然です。
それでは
会社が業務命令として社員に
残業を命じたとして
それでも社員が副業を理由に
残業を拒否した場合
会社としてはどう対処
したらよいでしょうか?
一般には
社員が会社の業務命令に
従わない場合は
懲戒処分や
極端な場合は懲戒解雇といった処分を
検討することになります。
まず
社員に懲戒処分を行うという場合
あらかじめ就業規則で懲戒の規定を
整備しておく必要があります。
その上で
懲戒処分自体も適正な手続きで
行われる必要があります。
よく争いになるのが
社員が業務命令に違反したとして
そもそも会社がきちんとした
業務命令を出したか否かが
争われるケースがあります。
会社は口頭で何度も
注意したはずだと言い
社員はそんなの聞いてません
というパターンです。
そこで前提として
会社が業務命令を出すにあたっては
後々のトラブルが予想される場合には
なるべく書面かメールなど
証拠が残る形で出すべきです。
次に
懲戒解雇ですが
その他の懲戒処分を出しても
その社員の姿勢が改まらない場合は
懲戒解雇を検討することもあるでしょう。
しかし、現実には
懲戒解雇は会社にとって
非常にハードルが高く
後々社員から裁判で不当解雇を
争われるリスクが非常に高いです。
ですから
社員が業務命令に従わないからといって
そう簡単に懲戒解雇の処分を
行うべきではありません。
この場合は
まず社員が自ら会社を
退職してくれるように促す
「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」
という方法を用いるべきでしょう。
適法な退職勧奨を行うに
あたっての注意点などは
下記の記事をご覧ください。
今の時代
副業を行う社員も増えてくるでしょう。
社員の副業をめぐるトラブルや
「裁判沙汰」を予防するためにも
副業や会社の業務命令に関する
法的なルールは押さえておかれた方が
よいかと思います。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。