離婚に伴う財産分与制度といって
夫婦の財産を離婚の際に分ける制度があります。
経営者が持つ会社の株式が
離婚の際の財産分与の対象とされると
会社の株式がばらばらに分散し
会社の経営が危うくなる場合があります。
(今日の「棒人間」 会社がバラバラになってしまう??)
<毎日更新1302日目>
先日
ある会社の創業者で
今は後継者である息子さんに経営をバトンタッチした
会長さんがご相談にお見えになりました。
会長、どうもお久しぶりです。今日はどうされましたか?
どうも。今日は息子に経営をバトンタッチした会社のことで相談したいのです。
息子さんが継いでいる会社の件ですね。具体的にはどんなご相談でしょうか?
実は、お恥ずかしい話ですが、息子が結婚した妻と折り合いが悪く、このたび離婚することになったのです。
そうだったんですか。
それで、息子の離婚は仕方ないのですが、それに伴って1つ心配なことがあるんです。
それは、どんなことでしょう?
会社の株はもともと私が100%持っていて、それを約10年くらいかけて息子に全部贈与したのです。
なるほど、後継者である息子さんに株を贈与されたわけですね。
はい。ところが、この度息子が離婚することになって、妻側には財産分与の権利があると聞いたのです。
確かに、おっしゃるとおり離婚に伴う財産分与の権利はありますね。
そうなると、離婚によって息子の妻に会社の株を財産分与で取られてしまうのではないか、そうなると会社の株がバラバラになってしまって、どうなるのか、それがとても心配なのです。
なるほど、わかりました。
確かに、夫婦の婚姻期間中に形成された財産は、離婚の際に財産分与の対象にはなります。
しかし、親から贈与された財産などは、「特有財産」といって、財産分与の対象から除かれます。
ということは、うちの場合は、私が贈与した株は息子の離婚の財産分与の対象から外れる、ということですか?
その通りです。婚姻期間中に会長から贈与された株は、息子さんの「特有財産」になりますので、財産分与で妻に取られる、ということはありません。
わかりました。それを聞いて安心しました。
離婚に伴う財産分与というのは
聞いたことがある方も
おられると思います。
今の日本では
結婚する夫婦の3組に1組が
離婚するという時代ですから
誰にとっても「離婚」は他人ごと
とは言えないでしょうね。
この離婚に伴う財産分与というのは
離婚する場合に
夫婦の一方が他方に対して
財産の分与を請求する
ことができるという制度です。
多くは
妻側から夫側に請求がなされます。
どのくらいの割合で
財産を分与するかと
言うと
通常は
婚姻期間中に形成された財産の
半分を分与することが一般的です。
ここで
経営者が離婚する場合には
一般の方とはちょっと違った
特殊な問題があります。
それは
上記の例で言えば
夫(息子)が持っている会社の株式も
場合によっては離婚に伴う
財産分与の対象になり得る
ということです。
もし
会社の株式が離婚に伴う
財産分与の対象になるとすると
極端な話
自社株の半分が離婚した妻側に
渡ってしまうことになります。
そうなってしまうと
会社の意思決定に支障を来たすようになり
中小企業などは
会社の経営に重大な悪影響が
生じてしまいます。
ただし
この離婚に伴う財産分与の対象とされるのは
あくまで
夫婦の婚姻期間中の共同生活に
よって形成された財産について
ということになります。
ですから
たとえば婚姻前から持っていた財産とか
婚姻期間中に親から贈与
ないし相続を受けた財産は
「特有財産」といって
財産分与の対象から外されます。
ただ、たとえば
上記の例で
贈与ではなく
夫(息子)が婚姻期間中に父親(会長)から
株を買い取ったような場合は
財産分与の対象となる可能性が出てきます。
というのは
株を買い取った資金そのものが
夫婦共同生活の中で形成
された財産だとすれば
そのお金で買い取った株式も
また同じことになるからです。
いずれにしても
後継者である社長が離婚することによって
自社株が財産分与の対象になり
会社の株がバラバラになってしまうことは
なんとしても避けた方がよいでしょう。
そこで
まず1つの解決方法は
仮に自社株が離婚に伴う
財産分与の対象となる場合でも
自社株を相手に渡すのではなく
自社株に相当するお金を相手に渡す
というのが効果的な解決方法です。
未公開会社の株式をどのように
お金に評価するかというのは
難しい問題ではありますが
決算書などを見れば
ある程度の数字を出すことは
可能です。
さらに、これは
最近の若い経営者などの間でよく
見聞きする方法なのですが
後継者が結婚する際に
あらかじめ「婚前契約書」というものを
結んでおくというやり方があります。
婚前契約書は
主に離婚の際に財産分与でもめない
ために利用される契約書です。
欧米では
富裕層や著名人を中心に
利用されています。
この婚前契約書で
たとえば経営する会社の株式や会社の資産は
離婚に伴う財産分与の対象にはしない
という合意をしておくことができます。
このような契約を
結婚前に結んでおけば
経営者の離婚によって会社の経営に重大な
影響を受けることを回避することができます。
結婚する前にこんな「婚前契約書」を結ぶなんて
なんとも世知辛い世の中だと感じる方も
おられるかも知れません。
しかし
経営者というものは
いつ何時も会社を守るという術を
持っておかなければなりません。
なにしろ
3組に1組が離婚する時代
離婚によって会社の株が分散しない
ためのリスクヘッジとして
「婚前契約書」も一定の合理性が
あるのではないかと考えます。
経営者の離婚によって
会社がバラバラになってしまう
これだけは避けたいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。