(今日の「棒人間」 被災地陸前高田の奇跡の一本松)
<毎日更新1337日目>
その揺れは
突然にやってきた。
その日は金曜日で
私は事務所で仕事をしていた。
仕事がそれほど忙しくない時期で
このまま夕方まで仕事をして
金曜日だしブラっと
飲みにでも行こうかと
呑気なことを考えていた。
午後3時前
突然激しく
そして異様に長い
揺れに見舞われた。
東京でも震度5強
私の事務所のビルが
倒壊するのではないかと
大変な恐怖感を味わった。
2011年3月11日
東日本大震災であった。
揺れが収まって
事務所のテレビをつけると
程なくしてあの大津波の
映像が映し出された。
大津波が目の前を走っている車を
容赦無く飲み込んでいく映像
今目の前で人が津波に流されて
亡くなっていく映像である。
震災と
それに続く原発事故もあり
東北地方は壊滅状態となった。
大きな衝撃を受けた私は
それからしばらく仕事が
手につかなかった。
当時はまだ30代で若かった私は
居ても立ってもいられない気持ちで
すぐにでも東北の震災の現場に
駆けつけたい衝動にかられた。
震災から数日が経ち
福島県から原発事故の避難者が
関東に避難し始めているという
情報を聞きつけた。
「さいたまスーパーアリーナ」が
避難所として解放されていた。
そして
仲間の弁護士や司法書士から
関東にいる避難者の
支援活動をしたいので
手伝って欲しいとの要請を受けた。
行くしかない。
何か自分ができることをしなければ
という気持ちであった。
私はすぐに
さいたまスーパーアリーナに駆けつけた。
コンサートホールだった
「さいたまアリーナ」
その施設内の円形のらせん階段には
床に段ボールを敷いて休んでいる
避難者で溢れかえっていました。
本当にここは日本なのか?
極めて異様な光景だった。
目の前で
家族が津波で流された
という人もいた。
仲間と協力しながら
こうした避難者1人1人に声をかけて
お困りごと相談に乗っていく
そんな活動がスタートした。
誤解を恐れずに言えば
「ボランティア活動」というものは
ある種の「麻薬」のような魅力がある。
歴史的な大震災
あれだけの被災者を目の前にして
何かをしなければという
衝動に突き動かされる。
東京の弁護士会も
会をあげて東北を支援する
態勢をとっていた。
多くの弁護士が被災地に向い
私もその一人だった。
いつの間にか私は
震災の被災者や原発事故の被害者を支援する
活動にのめり込んで行くことになる。
東北の現地にも数えきれないほど足を運び
被災者の無料法律相談活動を行ったり
原発事故被害者の損害賠償請求の
裁判も手がけた。
これらの活動は大変に
やり甲斐のあるものであり
とても充実したものだった。
ある意味
弁護士になってから
これほど充実した活動を
したことはなかった。
私は
この「充実感」に酔っていった。
いや
「手弁当で被災者のために東北に駆けつけている」
自分に酔っていたのかも知れない。
思えば
弁護士になってこの方
経済的には困らなかったものの
自分が本当にやりたい
仕事のために命を燃やす。
そんな仕事には出会えていなかった。
私は
被災者のための活動が
まさに自分の「使命」である
と錯覚していった。
震災や原発事故の被災者のために
手弁当で活動する姿は
確かに美しいかも知れない。
しかし
現実的なことを言えば
これらの活動は膨大な経費を食う。
なにしろ
東北に通う交通費だけでも
バカにならない。
そしてさらに
膨大な時間を使う。
何日も事務所を
あけることが多くなった。
そのうち
一般の案件の依頼者から
「いつも連絡が取れない」と
クレームが入るようになった。
震災が起きてから
私が「ボランティア活動」に
のめり込んでいる数年間
私の売上も下降線の
一途をたどった。
だが
私はそんな自分を
改めようとはしなかった。
私の留守中に
事務所を守ってくれている
スタッフのことも
まったく意に介さなかった。
「オレは被災者のために活動している。
何が悪いんだ?」
「社会的に有意義な仕事をしているんだから
売上が下がっても仕方ないだろう」
私が生来持っていた傲慢さが
非常に醜悪な形で露呈した
瞬間であった。
私はなにも
「ボランティア」や手弁当での活動を
否定するつもりはない。
弁護士の仕事というものは
時にそういうことも必要だと思う。
しかし
それには欠かすことのできない
大前提がある。
弁護士1人1人が
経済的にきちんと自立し
自分の力で食べて行ける存在であることだ。
そうでなければ
そもそも弁護士として
活動できなくなるし
それこそ「ボランティア活動」
どころではなくなるのだ。
この頃の私は
今思えば
「社会活動」を隠れ蓑にして
経営者としての責任
役割から完全に逃げていた。
しかし
こんな状態が長くは
続くはずがなかった。
気づけば事務所の経営は破綻寸前。
そして
事務所の組織
人間関係はボロボロの状態だった。
(つづく)
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。