(今日の「棒人間」 経済破綻はすぐそこに??)
<毎日更新1338日目>
弁護士というのは
おもしろいもので
その職業的使命が法律で
決められているのである。
「弁護士法」という法律があって
その第1条には次のように
定められている。
弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。
他人様の人権を守り
社会正義を実現するという
いわば「崇高な使命」が謳われている。
どこにも
「弁護士が儲けることが使命だ」
などとは書かれていない。
それは当たり前だろう。
しかし
そんな「崇高な使命」を持つ弁護士も
所詮はカネがなければ食べていけない。
その「崇高な使命」を実現するための
活動もできないのである。
だから
どんな仕事もそうだが
弁護士も
弁護士としての技量を
高めるだけではダメで
「稼ぐ力」というものを
身につけなければならない。
まさに
二宮尊徳の言葉どおり
なのである。
しかし
私はこの「稼ぐ力」を身につける
努力を怠り続けてきた。
震災の被災者や原発事故の
被害者を救うという
「崇高な使命」のみに明け暮れていた。
いや
誤解を恐れずに言えば
当時の私は「崇高な使命」を理由に
現実から逃避していたのだ。
気づけば売上は下がり続け
事務所の経営はボロボロの
状態だった。
具体的にどんな状態だったのか
恥を忍んで書いてみたい。
これを書いているのは
2025年の元旦。
そんなオメデタイ日に
こんなカネの話を振り返るのも
申し訳ないが
もう少し私のこの駄文に
お付き合い願いたい。
私が所属する事務所は
当時弁護士が10名
事務局スタッフが6名の
零細組織だ。
法律事務所の収支構造はいたって単純で
売上は各弁護士が案件を
受任した着手金や報酬金
顧問料などが主な収入だ。
変動費というものは特にないので
基本的には「売上=粗利」となる。
そこから
事務所の共通経費として
主に事務所家賃とスタッフの人件費
という固定経費が支払われる。
さらに
各弁護士の活動経費や
生活費などの支出がある。
単純な話で
収入が支出を上回っているうちは
特に矛盾はない。
ところが
売上が下がると
売上で支出を賄えない
という事態が生じてくる。
事務所の弁護士全体の
売上も下がっていたが
私の売上は特にひどかった。
過払いバブルで稼いでいた頃の
半分程度の売上にまで落ち込んでいた。
売上が下がっても
事務所家賃とスタッフの人件費だけは
何としても支払わなければならない。
そうすると
皺寄せは弁護士の活動経費と
生活費を直撃することになる。
私はこの当時
結婚して子どもも生まれていた。
中古だが
都内にマンションも購入した。
ところが
家に生活費を持って
帰れないのである。
わずかばかりの貯金も底をつき
毎月の住宅ローンの支払いも
かなり苦しくなった。
私は
生まれて初めて
「お金がなくなる」ということの
恐怖を味わうことになった。
極端だが
その日のお昼の
弁当を買うカネもない。
あと
今でも脳裏に焼き付いているのが
息子の「オムツ代」だ。
息子は小さいので
当然紙オムツを消費する。
オムツが無くなりそうになると
私がドラッグストアで
買ってきて補充していた。
しかし
この「オムツ代」が高くて
こたえるのである。
しかも
オムツというものは
すぐになくなる。
今思えばさしたる金額ではないのだが
この当時は
オムツ代を払うのもストレスに
なるほどカネがなかった。
マコトに情けない話だが
情けないついでにもう少し暴露すると
私はこの時期
サラ金から「ツマむ」
ということも経験した。
とにかく
生活のカネがないので
どうしようもない。
クレジットカードのキャッシングや
消費者金融会社のカードも作り
「借入」もした。
私はかつて
新人時代に多重債務者の仕事をし
過払金回収では随分と
サラ金相手に裁判もした。
そんな私が
ついにそのサラ金に頭を下げ
高い金利を払ってお金を
貸していただくことになった。
本当に惨めで情けなかったが
そうするより他は
どうしようもなかったのである。
妻からも
生活費がない
住宅ローンが払えないと言われる。
挙げ句妻とは
買ったばかりのマンションを
売ろうかどうしようか
という話もした。
東京を去って
まだ弁護士の競争がそれほど
厳しくない妻の故郷に帰って
そこで開業しようか
なんて話も出た。
本当に情けない話だが
私はお金がなくなるとはどういうことなのか
40歳を過ぎて初めて経験することになった。
だが
そうなっても
どうして良いのかわからない。
なにしろ
売上の増やし方
新規顧客の開拓の仕方など
習ったこともなければ
勉強したこともない。
私が若い頃は
「目の前の仕事だけしていれば良い」
「営業のことなんて考えるな」
と言われて育ってきた。
弁護士になりさえすれば
経済的には困らないと信じて
あれほど辛い試験を乗り越えてきた。
まさか
カネに困ってサラ金で
「ツマむ」なんてことは
想像したこともなかった。
「ああ
オレはなんて運が悪いのだろう」
私は世を恨み
儚んだ。
すべては自分の身から出たサビなのであるが
当時の私は
どこまでも「他責思考」であった。
そんなわけで
私の売上は
事務所が倒産し
自分の生活も破綻するデッドラインを
行ったり来たりするという数年間であった。
低迷の中で
私はもうしばらくの間
もがき苦しまなければ
ならなかったのである。
(つづく)
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。