
労働時間というのは
仕事の開始時間から終了時間までで
出勤時間は原則
労働時間ではありません。
ところが
少し難しい問題として
現場までの移動時間があります。
移動時間は出勤時間か
労働時間か
どちらでしょうか?
(今日の「棒人間」 どこでもドアで現場まで瞬間移動)
<毎日更新1389日目>
好意で毎朝車で現場まで連れて行ってやっていたのに、アイツ、絶対に許せないです!!
まぁまぁ、落ち着いてください。
朝の現場までの移動時間が「労働時間」だなんて、そんなバカな!!
建設業の会社を営むA社長の
怒りは収まりません。
この会社で昨年採用したある社員
この人を仮にCさんとしましょう。
A社長の会社では
主に現場での建設作業が社員の
メインの仕事になります。
ただ
この新入社員であるCさんの自宅が
現場からやや遠く
通勤に不便。
そこで
Cさんを不憫に思ったA社長。
毎朝現場まで
自分の車にCさんを乗せて
連れて行くことにしました。
具体的には
Cさんには一旦A社長の会社まで来てもらい
そこからA社長が車で一緒に
現場まで向かうというスタイル。
Cさんは
1年ほどA社長の会社で働いていましたが
突然退職。
それだけではなく
なんと後日
A社長の会社に対して多額の
未払い残業代の請求をしてきたのです。
A社長はビックリ。
なぜなら
A社長の会社では
毎日現場での仕事を定時で終了しており
残業など一切なかったからです。
社員のCさんの言い分は
というものでした。
実際
A社長の会社では
現場での仕事時間しか
「労働時間」としてカウント
していませんでした。
果たして
Cの言うように
このケースでA社長の会社から
現場までの移動時間が
「労働時間」に当たるのでしょうか?
もし当たるとすれば
その時間分の割増賃金
すなわち残業代の支払いが
必要となってくるので
問題となるのです。
ここでは
まず法律上
「労働時間」とは何かを
明らかにする必要があります。
この点
「労働時間」とは
をいうとされています。
社員が現場で仕事をしている時間が
「指揮命令下に置かれている時間」
に当たることは争いないでしょう。
問題は
上記の会社から現場までの移動時間などが
この「指揮命令下に置かれている時間」に
当たるかどうか
ということです。
こういうケースでよく問題となるのは
社員が現場に行く前に
会社にいったん集合することを
義務づけられているような場合。
例えば
会社に社員が集合して
トラックにその日の作業に必要な
道具の積み込み作業などをやり
その後現場に向けて出発。
帰りも同様で
現場での仕事が終わり
その後いったん会社まで戻り
後片付け作業をしてから
社員が帰宅するような場合です。
この場合
社員は会社の業務としていったん
会社に集合することを義務づけられて
いると言えます。
ですから
こうした準備や後片付け
さらに会社から現場までの
往復の移動時間はまさに
「会社の指揮命令下に置かれている時間」
つまり
「労働時間」にあたり
その時間分の賃金の支払いも
必要になるということです。
それでは
上記のA社長のケースのように
社長が好意で車で現場まで
乗せて行ってあげていた。
そのための便宜で
いったん社員に会社に寄ってもらう
ことにしていた場合はどうでしょうか?
大前提として
A社長の会社では
現場での集合時間は決められていましたが
現場までどうやって出勤するかは
社員の自由でした。
通常
「通勤時間」は
「労働時間」には当たりません。
この点
あくまで会社に朝いったん寄ることは
そこから車で現場まで連れて行く
というA社長の好意に過ぎません。
そして
Cとしても
その方が現場までの通勤が楽になることから
A社長の提案に従っていたわけです。
このようなケースでは
現場までの移動時間は
「会社の指揮命令下に置かれた時間」
とは評価できないでしょう。
Cとしては
A社長の好意に甘えず
自分で現場まで向かうという
選択肢もあったわけです。
ただし
この辺は判断が微妙な部分もあり
A社長が
Cに対して朝必ず会社に
寄るように命じていた場合。
このように
「義務づけ」や「強制性」が出てくると
「会社の指揮命令下に置かれていた」
と評価される場合も出てくるので
注意が必要です。
しかしまぁ
今回のケースは
私もA社長の怒りには十分同情できますね。
A社長が恩を仇で返された
と感じて憤るのも無理はない
ケースでしょう。
今の世の中
このような要求をしてくる
社員もいますので
注意が必要です。
おかしな要求をされても
毅然と対応できるよう
一定の労働法の知識は
身につけておきたいところですね。
それでは
今日のダジャレを1つ。
建設現場までの移動時間、建設的に考えて円満解決?
それでは、また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。