
事業承継で
後継者は長男に決まっているのに
会社の株式しかめぼしい相続財産がない。
このような場合
後継者以外の相続人との
争いを防止するために
無議決権株式使った
事業承継の方法があります。
(今日の「棒人間」 25%で大株主??)
<毎日更新1452日目>
先日
高齢で事業承継を考えている
A社長からご相談を受けました。
今日は、うちの会社のことで相談したいのです。
はい、どんなご相談でしょうか?
実は、私も歳なので、そろそろ事業承継を考えたいのです。
なるほど、事業承継ですね。
後継者の候補はおられるのですか?
はい、将来は、今も会社に入って仕事をしてくれている長男に会社を譲りたいと考えています。
それはいいですね。
はい。ただ、恥ずかしい話、私にはめぼしい資産がなくて、私が死んだ後の遺産といえば、会社の株式くらいしかないのです。
なるほど。
ところが、私が死んだ後の相続人は、長男の他、私の妻と次男がいます。
なるほど。
そうなると、せっかく長男に会社を譲りたくても、遺産である会社の株式を、妻や次男も相続することになってしまいます。
確かに、法定相続分でいうと、奥様が1/2、長男と次男がそれぞれ1/4ずつの権利を持ちますね。
そうなんです。そうすると、長男が会社を経営するにあたり、支障が出てしまうのではないかと、それを心配しているのです。
なるほど。それでしたら、今社長がお持ちの株式の一部を、普通株式から無議決権株式にしてしまうという方法があります。
「無議決権株式」とは何ですか?
簡単に言えば、会社の株主総会で議決権を持たない株式のことです。
なるほど。
まず、社長がお元気なうちに、普通株式の一部を無議決権株式に変更します。
はい。
その上で、長男には議決権のある普通株式を、奥様と次男には無議決権株式を相続させるという内容の遺言を作成しておくことです。
なるほど。
そうすれば、奥様や次男も株式を相続しますが、議決権がないので、長男が経営権を掌握することができるようになります。
長男を後継者として
事業承継の準備を進めていきたい。
ところが
相続財産(社長の遺産)として
会社の株式しかない。
あるいは
相続財産にしめる会社の
株式の割合が高くて
預貯金などの流動資産の割合が低い。
そうなると
後継者である長男だけではなく
妻や次男にも会社の株式を
相続させざるを得ない状況になります。
こんなとき
どうしたら良いのでしょうか?
仮に
上記のA社長が会社の
株式を100%持っており
持ち株数が100株
だったとしましょう。
社長が何も対策をせずに亡くなると
社長の持っている株式は
法定相続分に従ってそれぞれ妻と長男
次男が相続することになります。
そうなると
会社の後継者である長男の
持株数は25株(25%)となり
後継者ではない妻と次男の持株は
全体の75%となってしまいます。
もちろん
家族の関係が円満であれば
それでも良いかも知れません。
しかし
何かで意見の食い違いが生じた場合
後継者である長男は25%しか
株を持っていません。
そうなると
長男が会社を経営するについて
支障が生じてしまう可能性があります。
そこで
このような場合
社長が持っている株式の一部を
無議決権株式に変更する
という方法があります。
無議決権株式とは
会社の株主総会で議決権を持たない
または制限されている
種類の株式のことです。
会社の経営への関与には関心がないものの
配当やキャピタルゲインに投資する
株主のために発行されることが
多いとされています。
たとえば
社長の持っている100株のうち
75株を無議決権株式に変更します。
そして
残った普通株式25株を長男に
その他の無議決権株式を
それぞれ妻と次男に相続
させる旨の遺言を書いておきます。
そうすれば
長男の持株比率は25%で変わりませんが
株主総会の議決権を持つのは
長男のみなので
長男の会社経営に支障がなくなります。
なお
この方法による事業承継を行うには
社長が存命なうちに
普通株式の一部を無議決権株式に
変えておかなければなりません。
そして
そのためには
定款変更を行う必要があり
定款変更には株主総会の
特別決議が必要となります。
この点
A社長のように
会社の株式100%を持っていれば
問題はありません。
しかし
もしそうでない場合は
定款変更に反対する
株主が一定数以上いると
このスキームは実現できないことになります。
いずれにしても
もし将来相続人同士で揉めてしまうと
会社経営に支障が生じて
しまう可能性があります。
そうならないために
無議決権株式を利用した事業承継の
スキームがあることは
覚えておかれた方が
良いかと思います。
それでは
今日のダジャレを1つ。
「議決できない?」いえいえ、無議決でも無敵です!
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。