
なんとしても相手に謝ってもらいたい。
法律や裁判の力でなんとかならないか
というご相談を時々受けます。
残念ながら
基本的に謝罪を強制する
ことはできないのです。
(今日の「棒人間」 謝罪する人?)
<毎日更新1457日目>
東京都内で内装工事業の会社を営んでいる
A社長からご相談を受けました。
この会社では
長年付き合いのある
B社(不動産管理会社)との
取引を続けていました。
ある日
B社の担当者だった人が異動となり
新たにB社のC部長が
対応することになりました。
ある日
A社長はそのC部長と
B社のオフィスで1対1で
面談が行われました。
その打ち合わせは
次回の案件の見積りに関する内容でしたが
B社側の希望金額と
A社長の会社の提示金額には
大きな開きがあり
交渉は難航しました。
その最中
C部長は
A社長に対して声を荒げて
あなたの会社の代わりなんて、いくらでもいるんですよ!うちとしてはそんな金額では請られません。あなた正気なんですか?それでも経営者ですか?
といった暴言を吐きました。
さらに
C部長は
A社長に対して
オタクの職人はレベルが低いって、他でも評判ですよ!
などとも言いました。
後日
怒りが収まらないA社長が
ご相談に来られました。
曰く
C部長のあの暴言は許せない。正式に謝罪を求めたい。何か、法的に謝罪を強制する方法はないのですか?
というものでした。
世の中
会社の力関係を背景に
取引先に対してこうした高圧的で
失礼な態度を取る人がいます。
こんな暴言を吐かれて許せないという
A社長の気持ちはよくわかります。
法律や裁判でもって
相手を強制的に謝らせる
ことはできないか
これは割とよく聞かれる
質問ではあります。
とにかく
相手に自分の非を認めて
謝ってもらいたい。
それだけで
かなり溜飲が下がる
という方もおられます。
しかし
誠に残念ではありますが
「あやまりたくない」
と思っている人に
強制的にあやまらせる
という方法は原則としてありません。
たとえ「裁判」を起こしたとしても
基本的には「被害者にあやまりなさい」
という判決が出ることはありません。
これは
憲法で思想・良心の自由が
保障されていることと
関係があります。
すなわち
「あやまりたくない」
と思っている人に
国家が強制的にあやまらせることは、
この思想・良心の自由を侵害する、
と考えられているからです。
それでは
暴言を吐かれた被害者が受けた被害を
回復する方法はないのでしょうか?
この場合
加害者に対して慰謝料の支払いを
請求するという方法が考えられます。
慰謝料というのは
暴言などによって被害者が受けた
精神的苦痛をお金で計算し
加害者に支払わせるというものです。
そこで
今回のような
暴言などであれば
加害者に慰謝料を支払わせるというのが
被害者に対する被害回復の
基本になっているわけです。
そのようなわけで、
たとえ「裁判」を起こしても、
謝罪を強制することはできないのです。
このように
法律の力によって謝罪を強制する
ことはできないのですが
例外があります。
それは
名誉毀損の場合
裁判所は加害者に対して
名誉を回復するのに適当な
処分を命じることができる
とされています。
この
「名誉を回復するのに適当な処分」
の1つとして
加害者に「謝罪広告」の掲載を
命じられることがあるのです。
それでは
冒頭のA社長の事例では
C部長の暴言はこの
「名誉毀損」に当たらないのか?
実は
名誉毀損には
要件として「公然性」
というものが要求されます。
この「公然性」とは
不特定多数の人に伝達または
認識される状態を指します。
ところが
上記のC部長の発言は
A社長との間の1対1の
面談の際になされています。
ですから
基本的にはこの「公然性」の
要件を満たさず
名誉毀損は成立しない
ことになるのです。
以上より
名誉毀損の場合の例外以外は
相手方に対して法律の力で
謝罪を強制することはできない
ということになります。
被害を受けた方としては
誠に腹立たしでしょうが
このあたりが法律の限界
という面もありますね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。