
未経験なのに「5年の業務経験」
などと履歴書に書くことは
いわゆる「職歴詐称」に当たります。
社員が入社時に「職歴詐称」を
していたことが発覚した場合
会社はこの社員を懲戒解雇に
できるでしょうか?
(今日の「棒人間」 嘘をつく人??)
<毎日更新1528日目>
あの〜、私エンジニアは未経験なんですけど・・・
いーのいーの。エンジニア業界では経歴を盛るのは普通なんだ。
・・・・・・。
就職活動中の男性が
派遣先企業に提出する経歴書である
「スキルシート」を書かされました。
書くべきスキルがないこの男性に対し
派遣元会社の代表らが
などと説明。
先輩社員のシートを真似して
書くように指示されました。
完成した「スキルシート」は
未経験なはずの男性に
5年ほど開発従事経験があり
複数のプログラム言語を
使いこなせることになっていました。
なんと
航空会社の運行管理や映画の
オンラインチケット発行システムの
開発に携わったことにされていました。
この男性は
IT技術者を探していた大手の
会社に派遣されました。
しかし
派遣先でまったく仕事ができず
短期間で退職。
この男性は
派遣元会社の代表らに騙されて
キャリアに多大なる悪影響を被ったと主張し
この代表らに対して損害賠償請求の
裁判を起こしました。
これに対し
派遣元会社の代表は
などと裁判で主張したそうです。
*この事例は、日本経済新聞電子版「揺れた天秤」より引用しました。
IT素人、盛らされた職歴 派遣元企業損賠訴訟 「エンジニア業界、詐称は普通」 業務こなせず、すぐ退職
それにしても
未経験にも関わらず
5年も経験があると経歴書に
記載することが
「盛る」で済む話なのでしょうか?
これは立派な経歴詐称
具体的にはいわゆる
「職歴詐称」に当たります。
もちろん
「盛る」で許される話ではありません。
もし仮に
社員が会社に入社する際に
こうした「職歴詐称」を行った場合
会社はその社員を懲戒解雇に
することができるでしょうか?
まず
会社が社員を「懲戒解雇」するためには
あらかじめ就業規則に
規定しておく必要があります。
すなわち
就業規則等において
懲戒の種類や
どのような行為がどの種類の
懲戒処分にあたるのかなどが
定められている必要があります。
その上で
社員を解雇するには
という2つの要件を
満たす必要があります。
これらの要件を満たさない解雇は
解雇権の濫用として無効となります。
ですから
ここで大切なことは
「職歴詐称」があれば
会社は当然に懲戒解雇
できるというわけではない
ということです。
「職歴詐称」を理由にした懲戒解雇処分が
有効となるためには
当初からその「職歴詐称」
がわかっていれば
その社員を雇わなかったという場合。
もしくは
少なくとも同じ条件では
雇わなかったと考えられる場合です。
要するに
その職歴が採用の重要な動機であり
その職務と強い関連性が
あるような場合です。
逆に言えば
その職歴が採用の重要な
動機になっていないとか
その職務と強い関連性がない場合。
この場合には
仮に就業規則に懲戒処分に
関する規定があっても
懲戒解雇はできない
という結論になります。
具体的には
などです。
さて
冒頭のような事例ですが
派遣先の会社はもともと
IT技術者を募集していました。
それに対し
「スキルシート」に
「5年ほどの開発従事経験があり
複数のプログラム言語を使いこなせる」
との虚偽の職歴が書かれていた。
このケースでは
この「スキルシート」に書かれた
男性の職歴が採用の動機になっており
職歴と実際の職務との関連性は
強いと考えられます。
ですから
こうしたケースでは解雇が有効
とされる可能性は高いと考えます。
ところで
冒頭の裁判では
「職歴詐称」するように指導した
派遣元会社に対し
と痛烈に批判しました。
派遣された男性は
自身の意思に反して「詐欺行為」に
加担されられたとして
会社の賠償責任を認め
会社に損害賠償の支払いを
命じたそうです。
当たり前ですが
「経歴を盛るのは普通」などというのは
常識的に通用しないですよね。
採用をめぐるトラブルを防止するためにも
こうしたおかしな考え方は厳しく
非難されてしかるべきだと思います。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。