
時折
契約書に実際の作成日よりも過去の日付を
記載した「バックデイト」が行われる
ことがあります。
このような「バックデイト」の契約書は
法律上問題はないのでしょうか?
(今日の「棒人間」 時間を過去に戻したい??)
<毎日更新1541日目>
函館地方裁判所で
判決文の宣告日に1年前の日付を
記載していたという報道がありました。
函館地裁、判決文に1年前の日付を記載するミス…札幌高裁が気づいて修正
具体的には
同地裁の判決の言い渡しは
「令和7年3月10日」に行われた
にもかかわらず
判決文には「令和6年3月10日」と
記載されていたそうです。
明らかな誤記ということで
2審の札幌高等裁判所の判決の中で
地裁判決の日付を訂正したそうです。
裁判官が判決文の日付を書く際に
ミスをして過去の日付を
書いてしまったという例ですが
実は契約書も
実際の作成日よりも過去の日付が
書かれていることがあります。
しかも
誤りや誤記ではなく
場合によっては意図的に過去の
日付を書く場合があります。
実際に契約書が作られた日よりも
過去の日付を契約書に記載することを
「バックデイト」などと
言うことがあります。
どのような場面で
「バックデイト」が行われるのか
具体的な事例を見てみましょう。
A社は
B社にウェブサイト開発業務を依頼し
2025年4月1日から開発業務が
開始されました。
しかし
契約書の内容調整が難航し
なかなか正式な契約締結に
至りませんでした。
A社の経理担当者は
決算期が迫っており
4月1日からの業務委託費を当期の費用
として計上したいと考えていました。
また
A社の社内規定上
業務開始前に契約書が締結されて
いることが原則とされていました。
そこで
A社はB社に対し
「契約書の日付は4月1日にしてください」
と頼み込みました。
そして
実際には5月15日に作成した契約書に
「契約締結日:2025年4月1日」と記載して
双方押印して契約を成立させました。
こうした「バックデイト」は
法的に問題はないのでしょうか?
この点
契約書の「バックデイト」自体は
契約当事者双方の合意があれば
特に法律上禁止されて
いるわけではありません。
ただし
契約書にこうした実際の作成日とは
異なる日付を記載した場合には
とかく当事者間で後々トラブルや
「裁判沙汰」の原因になる
ことが少なくありません。
たとえば上記の例で
契約書の日付は「2025年5月15日」
となっているので
実際に業務がなされていた4月1日から
5月14日までの業務報酬はどうなるのか
という問題が出てきます。
後々で両者の担当者が変わるなどして
うまく引き継ぎがなされなかった場合。
このような場合には
A社は
契約書はあくまで「5月15日」
となっているので
それよりも前の分の報酬は払えない
などと主張してくる可能性もあり得ます。
そのような場合
あくまで契約書の日付は
「2025年5月15日」と
されているのみなので
と推定されてしまいます。
そうなると
実際に4月1日から業務を
開始していたB社としては
証拠上弱くなり
不利な立場に立たされてしまいます。
このように
契約書の日付を過去にさかのぼらせる
バックデートは
とかくトラブルの原因になりがちです。
それでは
こうした「バックデイト」をめぐる
トラブルを予防するためには
どうしたら良いのでしょうか?
ここで整理しておくべきことは
①契約書を作成した日(契約をした日)と、
②その契約が法的な効力が発生する日(始期)
は一応別物だ
ということです。
バックデイトは
上記①の契約書作成日と
②の契約の効力発生日がズレる
ということです。
そうであれば
その「ズレ」をきちんと契約書の中に
表現しておくことが重要になります。
具体的には
契約書の作成年月日の欄には
「2025年5月15日」と記載しつつも
次のような条項を入れておくことです。
このような条項を入れておけば
契約書に記載された日付がいつであれ
契約の効力発生時期が明確になるので
後々のトラブルを予防することが
可能になります。
いずれにしても
日付の「ズレ」をそのまま
放置しておくことは
後々トラブルや「裁判沙汰」の
原因になりがち。
事情により契約書の
「バックデイト」を行うのであれば
上記のようにきちんとその旨を
契約書に定めておくことが大切です。
それでは
今日のダジャレを1つ。
契約書の日付がズレると、人間関係もズレてトラブルに??
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。