
他人にお金を貸しても
一定期間が経過すると時効となり
返してもらえなくなることがあります。
ところが
時効期間が経過した後でも
相手方が時効の利益を放棄した場合には
返してもらうことができます。
具体的に
それはどのような場面なのでしょうか?
(今日の「棒人間」 時効の利益を放棄する??)
<毎日更新1556日目>
先日
都内で会社を経営するA社長から
ご相談を受けました。
実は、8年前に知人に頼まれて100万円を貸したんです。
なるほど、100万円ですね。
ところが、その知人が、結局私に返済することなく、連絡が取れなくなってしまったのです。
それは困りましたね。
そうなんですが、最近なんとその知人と8年ぶりに再会したのです。
そうだったんですか。それで、どうなりましたか?
私はもちろん、8年前に貸した100万円を返してくれと頼みましたよ。
それは、そうでしょうね。
そうしたら、その知人は、一括では返せないけど、月10万円ずつ分割で返済するということで、返済計画書ももらったのです。
そうだったんですね。
しかし、しばらくしてその知人から連絡が入りまして。この100万円はすでに時効になっているから返す必要はない、だから返さないなんて言うんです!
それはまた、ひどい話ですね。
そうなんですよ。こういう場合、法的になんとかならないものですか?
そうですね、通常の貸金の場合は、基本的に5年で時効にかかります。
そうらしいですね。やっぱりダメですか?
ただ、時効にかかっているのですが、その知人が払うと約束して、返済計画書も作成しているわけですよね。
そうなんですよ。
そうであれば、時効の利益を放棄していることになりますから、100万円を計画通りに支払うように請求することができますよ。
そうなんですね!やはり相談してよかったです。
「時効」と言えば
なんか犯罪を犯しても
一定の期間が経つと時効で
おとがめなしになる
一般的にはそんなイメージでしょうか?
民事の世界でも「時効」
というのはあって
簡単に言えば
一定の時間が経過することによって
権利が消滅してしまうことを言います。
お金を貸した場合には
貸金返還請求権
つまり貸した相手に
「返して」という権利がある。
この権利が
一定期間の経過によって消滅してしまう
これが「時効」制度です。
そして
一般の債権は
次の場合で
いずれか早い時期に時効で
消滅するとされています。
① 債権者(権利者)が権利を行使できることを知った時から5年間その権利を行使しないとき
② 債権者(権利者)が権利を行使することができる時から10年間その権利を行使しないとき
通常
お金を貸して
返済期限がくれば
貸した方は「返してくれ」と
請求(権利行使)ができるわけです。
したがって
通常はこの時から数えて5年間
権利行使をしなければ
時効で消滅するという
ことになるわけです(上記①)。
ですから
この時効期間が過ぎてしまうと
貸した相手から、
もう時効だから払わんよ!
と言われてしまうと
もはや請求できなくなってしまうのです。
ただし
時効期間が過ぎた後でも
借りている方が「返します」
と約束をした場合
時効の利益を放棄した
ことになります。
時効の利益を放棄した場合には
それ以降は「時効だから払わない」
とは言えなくなります。
冒頭のA社長の事例でも
お金を貸した相手である知人は
100万円を毎月10万円ずつ
分割で支払うことを約束し
返済計画書を作成しています。
したがって
このケースでは
知人は時効の利益を放棄
していることになります。
ですから
後で「やっぱり時効だから払わない」
とは言えない
という結論になります。
時効期間経過後に貸した相手が
「返す」という約束をした場合
もちろん口約束であっても
時効の利益の放棄に当たります。
しかし
口約束の場合は
相手が後で言ったことを
覆す可能性があります。
なにしろ
元々時効にかかっているお金ですから
「やっぱり払いたくない」と
相手が思った場合には
「払うなんて約束はしていない」
と言い出す可能性があるでしょう。
そうなると
「返す」約束をしたという
証拠がありませんので
言った、言わないの水掛け論で
終わってしまいます。
そこで
相手が「返す」という約束を
した場合には
必ず返済合意書を
作成しておくことが大切です。
書面を作るのが難しければ
メールやメッセージの記載
なども証拠になります。
いくら時効期間が過ぎたといっても
お金を借りた恩義を忘れず
返済を約束してくれる
ケースはあり得ます。
とはいえ
人の心は変化するもの。
約束をしたらそれをきちんと
証拠として残しておくという
視点が重要ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。