
給料の額というのは
会社と社員の雇用契約上の
重要な労働条件です。
ですから
社員の同意がないのに
会社が一方的に給料を減額することは
よほどの事情がない限り難しい
というのが現状です。
(今日の「棒人間」 1200万円払え??)
<毎日更新1592日目>
賃金減額は無効!
1200万円払いなさい。
なんと・・・。
格安航空会社(LCC)の
ジェットスター・ジャパンの
客室乗務員(CA)らが
同社に対し
一方的に労働条件を変更して
賃金を減額したのは違法だとして
未払い賃金の支払いを求めて
裁判を起こしました。
この裁判の判決があり
東京地裁は
同社が行った賃金減額は無効であると判断し
未払い賃金約1200万円の支払いを
命じたとのことです。
ジェットスターのCA賃金減額は無効、1200万円支払い命令 東京地裁
報道によれば
同社は2020年に客室乗務員の役職手当を
定額から勤務日数に応じて支払うように変更。
翌2021年4月に基本給を時給制から
固定給制に変更する新たな賃金規定を
施行しました。
これにより
これまで支払われていた手当などは
固定給に含まれるとして不支給とする
内容となったようです。
客室乗務員らがこれに
同意しなかったところ
その後一方的に変更され
減給になったそうです。
裁判で
ジェットスター側は
新たな賃金体系について
職責と業務内容に応じた処遇や公平性を
考慮したなどと主張していたそうです。
しかし
裁判所は
として
賃金減額は無効と判断しました。
この
社員の側の同意がないにもかかわらず
賃金を減額できるかどうか
これは結構質問されることの
多いポイントです。
上記の事例を題材に
法律がどうなっているのか
見て行きましょう。
この点
社員の労働条件は
会社と社員との合意
すなわち労働契約に基づいて
決定されるのが原則です。
そこで
労働条件を変更するという場合も
会社と社員との合意に基づいて
行われるのが原則となります。
社員の給料の金額も
これは労働条件という
ことになりますので
会社が一方的に社員の給料を減額する
ということはできません。
それは一種の
ということになってしまいます。
ただし
労働契約法という法律で
例外的に社員の同意がなくても会社が
労働条件を変更できる場合が
定められています。
すなわち、
もし給料などの労働条件が会社の就業規則
で定められている場合で
の2つの要件を満たす場合には
就業規則を変更して労働条件を
変えることができます。
そして
②の「就業規則の変更が合理的であること」
の要件は
具体的には
合理的かどうかが判断されます。
さて
今回のジェットスターのケースはどうか
この②の「合理性」の要件に関する基準に
当てはめて考えてみましょう。
上記の判決では
新しい賃金体系では
最大約10%
平均約6%の減額となり
客室乗務員らが相応の不利益を
受けていると認定しました。
つまり
上記の基準で言えば
社員の受ける「不利益の程度」は小さくない
と判断したわけですね。
さらに
この件では
労働組合から反対意見が
出ていたにもかかわらず
減額の根拠を示さず実質的に
交渉をしなかったとし
労働者の意見集約を怠ったまま
新賃金体系を導入したと会社側を非難。
つまり
上記の基準で言えば
「労働組合との交渉の状況」などから
会社の対応は不誠実と判断したわけです。
その上で
ジェットスター側の上記の
新たな賃金体系について
職責と業務内容に応じた
処遇や公平性を考慮したとの主張。
これについても
判決は
役職が高いほど減額率が大きい傾向にあり
公平な評価と全く関係がない
などと指摘しました。
つまり
上記の基準で言えば
「変更後の就業規則の内容の相当性」
がないと判断したと言えます。
以上から
判決では
賃金減額をすべき高度な
必要性や合理性は認められない
つまり
上記②の「就業規則の変更が合理的であること 」
の要件を満たさない。
したがって
この場合には
社員の同意なしに行われた労働条件の変更
すなわち賃金減額は法的に無効である
と結論づけたわけです。
このように
給料の減額は
労働条件の変更の中でも社員の生活に
直接大きな影響を与えるものですので
実際にはかなりハードルが高いのが現状です。
なお
ジェットスターでは
今年の8月にも同じく客室乗務員ら22人が
新たに東京地裁に同種の訴訟を
起こしているそうです。
今回の判決は後続の訴訟にも
影響を与えそうですね。
この会社
裁判だらけでなかなか大変そうですね。
こういった社員との「裁判沙汰」
を避けるためにも
労働条件を変更する際の法的なルールは
きちんと押さえておきたいものです。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。