 
  
 経営が苦しいからといって
社員を簡単に解雇できる
わけではありません。
経営悪化に伴って社員を
解雇するためには
「整理解雇」の要件を
満たす必要があります。

(今日の「棒人間」 苦しくてもダメ??)
<毎日更新1640日目>
目次
アメリカ金融大手の「ゴールドマン・サックス」の
日本国内のグループ会社に
勤めていたフランス国籍の男性が
同社から不当に解雇されたとして
裁判を起こしました。
少し前になりますが
この裁判の判決があり
東京地裁が解雇が無効と判断した
との報道がありました。
報道によれば
ゴールドマン・サックスのグループ企業で
エンジニアとして勤務してたフランス国籍の男性。
2022年に会社の経営環境の
悪化を理由に退職勧奨を受け
これを拒否したことから
翌年に解雇されたとのことです。
そこで
この男性は
正当な理由のない解雇
つまり「不当解雇」であるとして
解雇無効の裁判を起こしていました。
このブログでもよくお伝えしているとおり
日本の法律では社員の解雇は非常に要件が厳しく
そう簡単には認められません。
すなわち
社員を解雇するためには
という2つの要件が必要です。
この要件を満たしていない解雇は、
会社が解雇権を濫用したものとして
法的には「無効」であるとされるわけです
そして
今回の例では
ゴールドマン・サックスは
「会社の経営環境の悪化」を理由に
社員を解雇しています。
これは
いわゆる「整理解雇」と言われる問題です。
「整理解雇」とは
簡単に言えば
会社の経営悪化のために
人員整理を行うための解雇
のことを意味します。
いくら会社の経営が悪化しているからといって
「整理解雇」も解雇の一種である以上
上記で述べた厳格な要件を
満たさなければなりません。
そして
「整理解雇」において
上記の解雇の2つの要件を満たすための
具体的な判断基準としては
次の4つの要素が重視されています。
すなわち
これはまず
社員を「整理解雇」するにあたり
客観的な人員削減の必要性がその会社に
あることが必要となるということです。
すなわち
たとえば会社の経営悪化のために
人員削減措置が会社の経営上の十分な
必要性に基づいていること。
ないしは
止むを得ない措置と
認められることです。
そして
具体的な人員削減の必要性の判断では
下記のような点がポイントとなります。
会社の収支や借入金の状況などから見て
そもそも客観的に会社の経営状況が
悪化していると言えるかどうか。
言えなければ、
もそも人員削減の必要性が
あるとは言えないでしょう。
たとえば
会社経営が悪化していると言いながら
従来通りの受注や生産量がある場合には
人員削減の必要性があるとは
言えないでしょう。
受注や生産量などが相当程度
悪化していることが必要となります。
たとえ
会社の経営状況が悪化していたとしても
会社が不動産などの遊休資産を
持っているような場合は
まずそれを売却するなりしてからでなければ
人員削減の必要性は認められないと考えます。
社員を解雇するよりも前に
まず社員に対して労働条件の変更
すなわち給料の減額交渉をすべき
ということです。
また
役員報酬を下げる努力をしているか
どうかも大事な要素になってきますね。
株主に配当が行われているかどうかも
1つの判断要素になります。
会社の経営が厳しいと言いながら
他方で株主に多額の利益配当
などが行われていては
やはり人員削減の必要性があるとは
認められないでしょう。
これらの要素を総合的に判断し
この会社に「人員削減」の客観的な必要性が
あったかどうかが厳しく判断されることになります。
「整理解雇」の2番目の要件として
「解雇回避の努力」が問題となります。
すなわち
仮に上記の「人員削減の必要性」が
認められたとしても
会社が解雇を避けるための努力を尽くしたかどうか
これが重要な判断要素となってきます。
具体的には
などの他の雇用調整手段などで
会社が解雇を回避する努力を
したかどうかが問われます。
たとえば
希望退職者募集をせずに
いきなり特定の社員を解雇したような場合には
この解雇回避の義務が尽くされていない
と判断されることが多いでしょう。
また
裁判例の中には
配転や出向がなされず
その検討もされていないことを理由に
やはり解雇回避の努力義務が尽くされて
いないと判断されたものがあります。
さらに
役員が高額の役員報酬を受けており
それをまったく減額することなく
人員削減を行ったような事案でも
解雇回避の努力義務が尽くされていない
と判断されています。
なお
冒頭のゴールドマン・サックスの事例でも
裁判所は、会社に人員削減の必要性が認められず
別の業務を割り振るなど解雇を回避する
努力も非常に不十分だったと指摘しています。
やはり
解雇というものは
社員の生活に直結する
非常に大きな問題です。
いくら会社の経営が厳しいからと言って
簡単に「整理解雇」できるわけではありません。
会社の側で客観的な人員削減の必要性があり
また会社の側でそれなりに解雇を
避けるべき努力をしたかどうか
この辺が厳密に判断されるということです。
さて
「整理解雇」のあと2つの要件
すなわち③(解雇する社員の)人選の合理性と
④会社が社員に対して説明・協議を
尽くしたことについては
長くなりましたでの
また明日お話しします。
それでは
また。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。