社員が突然ライバル会社へ転職し
思わぬトラブルに発展する
ケースが増えています。
しかし
会社が裁判で争うのはハードルが高い。
そこで
日頃からの「予防策」が
何より重要になってきます。

(今日の「棒人間」 備えあれば憂いなし??)
<毎日更新1660日目>
一昨日と昨日のブログで
今増えている社員の引き抜き
トラブルの話を書きました。
「引き抜き」は違法?ライバル会社に社員が移ったときに会社ができること
引き抜きトラブルで損害賠償請求は可能?その計算方法と立証のハードル
軽くおさらいしますと
まず単なる「引き抜き」は
基本的に違法ではありません。
違法な引き抜きとなるのは
という
あくまで限定的な場面です。
そして
仮に違法な引き抜きであっても
もし裁判になれば
それによって被ったこちらの「損害」を
自分で主張・立証する必要があります。
この「損害」の算定や立証が
またそう簡単ではありません。
ですから
実際問題として
引き抜きトラブルがあっても
相手に対して損害賠償請求を行うのは
結構ハードルが高いのです。
そこで
やはり何よりも
こうした引き抜きトラブルを「予防」
することが何より重要になってきます。
引き抜きトラブルを
予防するための対策の1つは
あらかじめ社員に対して
自社を退職した後の競業避止義務を
定めておくことです。
「競業避止義務」というのは
自社の業務とライバル関係にある
会社に転職したり
そういう企業を新たに
設立したりしてはならない
義務のことです。
この定めをしておけば
退職後にライバル会社に引き抜かれる
といったトラブルをある程度
予防することが可能になります。
そこで
具体的な対策としては
「就業規則」であらかじめ
社員の競業避止義務
を定めておく。
さらに
社員が会社に在職している間に
早いうちに社員に退職後の
「競業避止義務」の「誓約書」を
書いてもらうという方法があります。
しかも
この「誓約書」は
できれば
社員の入社時
昇進時
異動時などに
その都度書いてもらう方が
望ましいでしょう。
また
そうしておいた方が
社員の側でも退職後の「競業避止義務」
についての理解も進み
納得も得られやすい
方法だと考えます。
ただし
合意があればどんな内容の競業避止義務を
定めてもよいのかというと
そうでもありません。
あまりに厳しすぎる競業避止義務は
社員の「職業選択の自由」を
侵害するものであり
公序良俗違反で無効と
されてしまいます。
そうならないために
具体的には
競業避止義務の期間や場所
業種などをある程度限定
しておくことが必要です。
競業避止義務を課す場所としては
同一の市区町村やその近隣程度
期間としてはしては1〜2年程度
としておくのが無難だと考えます。
引き抜きトラブルを
予防するもう1つの対策は
もし競業避止義務に違反
した場合の賠償額について
あらかじめ定めておくという方法です。
具体的には
上記で社員に競業避止義務の
誓約書を書いてもらう際などに
「違反した場合は定額の
損害賠償(違約金)を支払う」
という条項を定めておくことです。
昨日のブログでは
引き抜きによって被った「損害」の
算定や立証が難しいという話をしました。
この点
あらかじめこうした
賠償額の合意をしておけば
もし違反行為があった時点で
その合意した金額の賠償を請求
できることになります。
すなわち
「損害」の算定や立証が不要になる
というメリットがあります。
ただし
この方法も注意が必要な
ポイントがあります。
というのは
労働基準法第16条に
という規定があることです。
この規定は
社員の退職の自由や
社員が会社に一切逆らえなくなる
ことを防止するために
設けられたものです。
ですから
社員の退職後の競業避止義務
についての賠償額の予定については
必ずしもこの規定に違反している
わけではないとされています。
ただ
定められた賠償額が
不当に高額である場合は
社員の「職業選択の自由」を
過度に萎縮させるものとして
無効になる可能性があります。
具体的には
定められた賠償額が
その社員の年収を大きく
上回るような場合は
「不当に高額」と認定
されやすいでしょう。
したがって
具体的に妥当な賠償額は
ケースバイケースですが
一般的には社員の給料の数ヵ月分から
1年分くらいの額に収めておくのが
無難であると思われます。
というわけで
今回まで3回にわたり
社員の引き抜きトラブルを
扱ってきました。
この問題でも
やはり中小企業が社員との「裁判沙汰」
になってしまうのは好ましくありません。
上記で述べたトラブル予防の観点が
何より重要だと思います。
それでは
また。
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今回は、「社員の同意なしに給料を減らせる?ジェットスター訴訟で会社側が敗訴した理由」というテーマでお話ししています。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。