知人や親戚などに頼まれて、
「形だけだから」などと言われて、
名前だけ会社の監査役に就任する
ことがあります。
しかし、この「名前だけ監査役」
思わぬ法律上のリスクがあるので、
注意が必要ですよ!
というお話です(^ ^)
<毎日更新519日目>
先日、とある会社の若社長より
ご相談を受けました。
(守秘義務がありますので、
相談内容は大幅に変えています)
実は私の叔父も会社を経営していて、先日その社長である叔父から、叔父の会社の監査役に私に就任してほしいと頼まれたのです。
なるほど、監査役ですか。
でも社長はご自身の会社もあるのに、叔父さんの会社の監査役も引き受けて大丈夫なのですか?
それが、叔父が言うには、「ほんの形ばかり名前を貸してくれればいい。実際の業務はほとんどないから」と言うこことなのです。
なるほど、いわゆる名前だけの名目的な監査役、と言うやつですね。
私としては、まぁ叔父からの頼みでもありますし、形だけ名義を貸すだけで、実際の業務がないということであれば、引き受けても良いかなと思っているのですが・・・。
しかし、そうした名目的な監査役であっても、法的な責任を負わされる場合がありますよ。
え!それはどういうことですか?
いったん会社の監査役に就任した以上は、会社の会計などについての監査を行う義務があります。
その義務を怠って、たとえば会社の債権者などが損害を受けたときは、損害賠償責任が発生する場合があります。
名義を貸しただけとか、名目的だからという理由で責任を免れることができない場合がありますので、リスクはありますね。
監査役とは、会社の会計や
取締役の業務執行を監査する立場
の役職です。
監査役は、会社法上は任意の機関
となっていますので、必ずしも
監査役を設けなければならない
わけではありません。
しかし、取締役会設置会社と
会計監査人設置会社では、
監査役を設置しなければならない
ことになっています、
この点、会社法429条では、
と規定しています。
たとえば、会社の代表取締役が
会社の経営を独断専行し、
会社を私物化したために会社の経営状態
が悪化し、会社が倒産したという場合。
この場合に、
代表取締役が会社の債権者に対して
責任を負うようなケースがこれにあたります。
この場合、会社を私物化した代表取締役が
責任を負うことは理解できるでしょう。
しかし、会社の経営にまったく関与しなかった
名目的な取締役や監査役が、第三者である
会社債権者などに対して責任を負うことが
あるのでしょうか?
この点、判例などでは、
名目的な取締役や監査役であっても、
第三者に対する損害賠償責任が
発生する場合があるとしています。
たとえ、名目的な監査役であったとしても、
会社の会計監査や代表取締役の業務執行
などの監査を行わずに放置していれば、
監査役の任務を怠ったということで、
上記の「悪意又は重大な過失」があると
判断されてしまうのです。
ですから、「形だけだから」と言われて、
安易に名義を貸して「名前だけ監査役」
になることはリスクがあります。
知らない間に、会社の債権者
などから損害賠償請求をされたり、
訴えられる可能性があります。
私の弁護士としての使命は、
中小零細企業のトラブルを
「裁判しないで解決」すること。
「裁判沙汰」を避けるためにも、
安易に「名前だけ監査役」に
就任することはやめた方が
良いでしょう。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
なお、どうしても監査役に
就任せざるを得ない場合には、
その会社の会計資料にすぐに
アクセスできるかどうか?
社長など取締役の業務を
常にチェックして意見を言える
関係かどうか、その辺を
基準に判断すべきと思います。
監査役に就任したけど、
その会社のことには一切
関われないような関係の場合は、
やめておくべきでしょうね。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。