日本の法律では、
社員の解雇はそう簡単には
認められません。
もし安易に社員を解雇すると、
後で裁判で争われて
「不当解雇」と認定され、
多額のバックペイの支払いを
余儀なくされる場合が
ありますので、
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 安易な解雇は危険??)
<毎日更新835日目>
またまた話題の
ビッグモーター。
同社の茨城県内の店舗に
勤務していた車両整備士の
30代の男性が、
上司の個人的な感情を理由に
解雇されたとして、
解雇無効の裁判を
起こしていました。
この裁判の判決があり、
水戸地方裁判所は、
不当解雇と認定し、
同社に対して450万円の
賠償を命じました。
この男性は、
2015年にビッグモーターに入社し、
修理工程の管理などを
担っていました。
後に着任した工場長が、
「他の従業員が、
この男性の意見に従うことが多く、
自分の意見を聞いてもらえない」
と感じたようで、
そのことをエリアマネージャーに
相談したそうです。
そして、
マネージャーと工場長が
この男性と面談。
この男性に、
「退職届」を提出するように
求めたものの、
この男性は拒否した
とのことです。
その後もこの男性は勤務を
続けましたが、
上司から帰るように言われて、
それ以降は出勤
しなかったそうです。
なお、
会社側は、
解雇ではなく、
男性が退職を申し出たと主張し、
しかも、
ハローワークに提出した
離職証明書に、
「労働者の個人的な事情による離職」
と記載していました。
判決では、
男性の勤務態度に問題があったとの証拠はなく、退職届の提出も一貫して拒絶していた
この男性が自ら退職するというのは不自然である
と認定し、
会社の主張を退け、
「不当解雇」であると
判断しました。
この男性は、
と話しているそうです。
きっと、
同社をめぐって、
こうした不当解雇の問題
なども全国でありそうな
感じがしますね。
会社が社員を解雇し、
それが後に裁判で争われ、
「不当解雇」であると
認定されると、
会社が行なった解雇は
無効ということになります。
そうなると、
その社員との雇用契約
は続いており、
その社員はいまだ会社の
社員としての地位を
有しています。
実は、
不当解雇で争われたときに、
小規模な会社にとって
最もリスキーなのが、
「バックペイ」と呼ばれる、
過去の賃金をさかのぼって
支払わなければならない
という問題です。
そもそも社員を「解雇」する
ことは、
日本の法律上はかなり
ハードルが高いのです。
すなわち、
社員を「解雇」
するためには、
という2つの要件を
満たす必要があります。
これらの要件を
満たしていない解雇は、
法的には「無効」である
とされるわけです。
そして、
①の解雇の客観的合理的理由とは、
労働者の能力不足、
義務違反、
あるいは経営上の必要性等、
解雇を正当化できるだけの
理由を意味します。
また、
単にこうした理由があればよい、
というものではありません。
「解雇の客観的合理的理由」
と言えるためには、
これらの理由が相当程度
重大なものである
必要があります。
解雇を行う「客観的合理的理由」
ですから、
上記のビッグモーター
の例のように、
単に上司が
と感じた程度では、
「客観的合理的理由」には
なり得ないことは
明らかです。
さらに、
②の「解雇の社会通念上の相当性」
という要件が必要になります。
これは、
個々の社員の事情に照らして、
「解雇」という処分が重すぎないか、
会社ができる限り解雇を避ける努力
をしたかどうか、
などの要素で相当性が
あるか否かが判断されます。
そして、
実際に裁判の場になると、
こうした解雇の有効性は
厳しく判断され、
なかなか解雇が有効とは
認められません。
すなわち、
日本の法律ではそう簡単に
社員を解雇することは
できないのです。
実際上、
裁判で不当解雇を
争われた場合には、
会社側が勝つことは
極めて希です。
ですから、
安易に社員を「解雇」してしまうと、
後で裁判で争われて、
「不当解雇」と判断される
危険が大きいわけです。
「不当解雇」すなわち、
解雇が無効であると判断されると、
その社員はそれまでずっと
その会社の社員としての
地位を有していた、
ということになります。
これが、
何を意味するか?
これが「バックペイ」と呼ばれる
問題につながります。
そもそも、
解雇無効を争う裁判
自体が1年2年という
非常に長い時間がかかります。
しかも、
もし解雇が無効であると
判断された場合には、
バックペイといって、
その間の賃金も遡って
支払わなければなりません。
会社としてみれば、
解雇は有効だと
思っていますので、
解雇した以降の賃金は
払わないという対応が
通常でしょう。
しかし、
後で裁判で「不当解雇」と
認定されると、
その裁判で争っていた
過去1年とか2年の
期間分の賃金を、
後でさかのぼって
支払わなければならなく
なるわけです。
このバックペイの支払いだけで
数百万円になることがあります。
一度にこれだけのお金を
支払わなければならない、
ということになれば、
小規模な会社にとっては、
それこそ会社の存亡に
関わる問題に
なりかねません。
安易な解雇は、
これだけリスクが
大きい問題なのです。
このように、
日本の労働法では、
解雇に関して労働者の権利が
厳しく守られているわけです。
とは言え、
人的リソースの豊富な
大企業ならばともかく、
小規模な企業では、
問題のある社員が
一人いるだけで、
通常の会社の運営が非常に
困難になることがあります。
こうした社員が一人いるだけで、
社内全体の雰囲気が悪化し、
会社の生産性が大きく
阻害されることがあります。
会社にとっても、
その社員にとっても、
辞めてもらった方がよほど
前向きな解決である、
ということもよくあります。
しかし、
だからと言って、
上記で見たように、
会社が安易にその社員を
解雇することはできません。
そのような場合、
どうしたら良いのでしょうか?
この点、
「退職勧奨」と言って、
その社員と話し合って、
会社を自分から退職して
もらうように働きかける、
という方法があります。
その際に、
もし解雇してしまって
争われれば、
上記のように1年分くらいの
バックペイの支払い義務が
生じる可能性が高いわけです。
そこで、
たとえば、
退職金を半年分くらい
上積みして退職を
提案してみる、
という方法があります。
社員の方も、
ただ辞めさせられるのではなく、
一定のまとまった退職金と
引き換えという条件であれば、
次の仕事をじっくり探す時間的、
経済的ゆとりもできてきます。
そのように、
会社側も一定の譲歩を行うことで、
穏便に解決できる可能性が
高まります。
ただし、
「退職勧奨」と言っても、
どんなやり方でも許される
というわけではありません。
会社を辞めるような
執拗な働きかけ、
威圧的な面談、
社員の人格を傷つけるような
言動があったりすると、
違法な退職勧奨として、
損害賠償責任が発生する
場合があります。
詳しくは、
下記の記事を参考に
してください。
https://ameblo.jp/bigsaga/entry-12739097768.html
それにしても、
次から次へと様々な問題が
出てくるビッグモーター。
しっかりと「ウミ」を
出し切ってもらいたい
ものですね。
それでは、
また。
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今回は、取引先との長年続いた契約を解消したい場合、と言うテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。