株主総会で
有力な株主に議事進行に協力して
もらう趣旨でこっそり謝礼を支払い。
実は
これは「株主に対する利益供与」
と言って
法律で厳しく規制
されている「禁じ手」です。
(今日の「棒人間」 株主総会で「おねだり」は御法度??)
<毎日更新1114日目>
世の中
株主総会シーズンが
近づいて来ております。
この時期は
必然的に会社の株主総会に
関するご相談が多くなります。
先日
建設業の会社を営むA社長から
ご相談を受けました。
実は、弊社の株式は、長年お世話になっている取引先の会社が30%ほど持っているのです。
なるほど、取引先が30%持っているわけですね。
弊社では、私の父である会長が、この度取締役を退任することになったので、ある程度まとまった退職金を出したいと考えているのです。
なるほど、会長に退職金ですね。
ただ、弊社は、定款に取締役の退職金に関する定めがありませんので、株主総会を開いて退職金の支払いを決めなければなりません。
なるほど、そうですね。
そこで、父の退職金に関する株主総会の議事運営には、この30%の株を持っている取引先にも協力してもらいたいのです。
それは、そうでしょうね。
そこで、この取引先に対して、株主総会の議事運営に協力してもらう見返りに、いくらか謝礼をお支払いしたいと考えているのですが、問題はないでしょうか?
ちょっと待ってください。
それは法的にはちょっとマズいんです。
え、それはどうしてですか?
会社法という法律で、株主の権利の行使に関して、会社が株主に利益を与えることを固く禁止しているのです。
そうなんですか?
はい。お父様の退職金支給についての決議に協力してもらう見返りに、株主であるその取引先に謝礼を払うというのは、まさにこの会社法が禁止している株主に対する利益供与にあたります。
会社法の120条1項で
株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与してはならない
と定められています。
そして
この規定に違反すると
という罰則(刑罰)が
定められています。
これは
株主に対する「利益供与」と言って
法律はかなり厳しい態度で
これを禁止しています。
それはなぜかと言うと
かつて昭和の時代に暗躍した
企業に対する「総会屋」対策です。
かつて
反社会的勢力が
株式会社の株式を取得し
株主であることを盾にとって
株主総会の議事進行を妨害する
などということをやっていました。
そして
こうした「総会屋」が
株主総会の議事を妨害したり
しないことの見返りを要求し
会社が長らくそれに応じていた
時代があったのです。
結構名の知れた大企業なども
総会屋に利益供与をしていて
そうして流れたお金がいわゆる
暴力団の資金源になっている
ということで
社会問題になりました。
そこで
法律が改正され
株主の権利行使に関する利益供与は
全面的に禁止され
利益の供与を受けた者だけでなく
供与した企業側も罰せられる
ことになったのです。
いやいや、総会屋なんてそんな人聞きの悪い。
私はただ、お世話になっている取引先に対する感謝の気持ちから、わずかばかりの謝礼をお支払いしたいだけですよ。
気持ちはわかりますが
「総会屋」とか反社でなかったとしても
企業が特定の株主に対して
一定の優遇をすることは
この利益供与の禁止に
違反するリスクがあります。
この点、裁判例では
という要件を満たす場合に
例外も許される
としています。
この点、会社が
株主総会における有効な
権利行使を条件として
株主1人に対してクォーカード(懐かしいね)
1枚500円分を交付した
というケースがあります。
このケースで
裁判所は
有効な議決権行使を条件として株主1名につきクォーカード1枚(500円分)を交付したことは、議決権という株主の権利の行使に関し、会社の計算において財産上の利益を供与するものとして、株主の権利の行使に関する利益供与の禁止の規定に該当する
として
結論的にNGを出しています。
そもそも、「総会屋」とか
反社でなかったとしても
株主の権利行使に関して
協力してもらう意図で利益を
供与するということは
一種の賄賂(わいろ)にも似たものであり
株主総会の民主的な運営をゆがめる
と考えられるのです。
そんなわけで
法律は
株主総会で特定の株主に謝礼
などの利益を与えることについて
かなり厳しい態度をとっていますので
この点は
注意が必要です。
「謝礼」を払うというような方法ではなく
株主総会できちんと説明・協議を
尽くして理解してもらう
という努力が必要でしょうね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。