
取引先から提供された秘密情報を
自社の調査や研究目的で
AIに読み込ませる行為は
何が問題となるのでしょうか?
実は
取引先との間で秘密保持義務を
結んでいる場合には
目的外利用や
第三者への開示禁止違反として
問題となる可能性があります。
(今日の「棒人間」 AIに秘密情報を入力??)
<毎日更新1466目>
最近のAIの発達は
とても目を見張るものがありますね。
私なども
チャットGPTなど
AIに触れない日はない
と言っても良いでしょう。
会社の取引でも
AIを使って調査をしたり
業務の効率化のために利用することは
多くなっていると思います。
先日
建設会社を営むA社長より
まさにこのAI利用について
ご質問を受けました。
先日、取引先(元請け)から建物建築工事の依頼を受けて、設計図面を提供されました。
なるほど、設計図面ですね。
それで、この設計図面をAIに読み込ませて、今後の工事をどれだけ短縮できるのかなど、施工のシミュレーションをやりたいと考えているのです。
なるほど、そういうAIの使い方があるのですね。
これって、何か法律上の問題はないのでしょうか?
その取引先(元請け)との間では、秘密保持義務(NDL)は結んでいますか?
はい、結んでいます。
その先方から提供された設計図面も、秘密保持義務の対象になっていませんか?
確かなっていましたね。
そうすると、ちょっとマズいかもですね。
AIに読み込ませて調査・研究するだけでもマズいんですか?
そうですね、秘密保持契約(NDL)は、通常、秘密情報の利用目的が定められています。
確かにそうですね。取引先との間で結んだ建築工事請負契約遂行のため、という目的が定められています。
そうすると、設計図面をAIに読み込ませて調査・研究の対象にしたりするのは、この秘密保持義務で定められた利用目的に反している、いわば目的外利用と判断されるおそれがあります。
そうなんですね〜。
取引先とのトラブルを予防するためには、あらかじめ取引先から、AIを利用することについての承諾を得ておいた方が良いでしょうね。
「秘密保持契約」とは
当事者の一方から他方に
対して提供される情報を
契約をもって秘密として
取り扱うことを
内容とする契約です。
いわば
秘密情報を正当な理由なく外部に
漏らしたりしないことを約束する契約
と言えます。
そして
秘密保持契約では
まず
秘密情報の範囲を定められます。
その上で
秘密情報の目的外利用の禁止と
秘密情報の第三者への開示の
禁止が定められています。
そして
これらの義務に違反した場合には
相手方に対する契約違反としての
責任を負うことになります。
この
秘密保持義務の利用目的というものも
秘密保持契約の中で具体的に
定められるのが一般的です。
通常は
「契約内容を遂行するため」とか
「取引開始を検討する目的」などと
定められています。
ですから
取引相手から提供された秘密情報を
たとえば自社の業務効率改善などの
調査・研究のためにAIに読み込ませる行為は
秘密保持契約の「目的外利用」となる
可能性が高いのです。
さらに
秘密保持契約とAI絡みでは
もう1つ重要な問題があります。
どういうことかと言うと
AIの利用が
秘密情報の第三者への開示という
もう1つの禁止行為に当たる
可能性があるのです。
具体的には
取引先から提供された秘密情報を
AIに読み込ませる行為は
AIの開発者等という「第三者」に
秘密情報を「開示」する
ことになるからです。
もっとも
秘密保持義務の内容によっては
こちらが負っている秘密保持義務
と同等の秘密保持義務を
情報を開示する第三者にも
義務づけることを条件に
例外的に第三者への開示が
認められている場合もあります。
この場合
AIサービスの提供者が
契約上の守秘義務を負っている場合には
上記の例外にあたると考える余地があります。
ちなみに
チャットGPTの場合は
利用規約で
AIサービス提供者であOpenAI社が
入出力情報について守秘義務を負う
とされているようです。
とは言え
やはりこの場合も
取引先との間のトラブルを
予防するためには
やはりAIへの秘密情報の入力等について
あらかじめ取引先の了解を
得ておいた方が無難でしょうね。
AIは気軽に利用できるようになっているため
ついつい秘密情報などについても
利用してしまいがちです。
しかし
契約上秘密保持義務を
負っている秘密情報について
安易にAIに読み込ませたりすると
目的外利用や第三者への開示禁止違反で
秘密保持義務違反となるリスクがあります。
この点は
十分に注意したいものです。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。