
社員が窃盗事件を起こした場合
直接被害者に対して民事上の
賠償責任を負うのは
その行為者である社員です。
しかし
一定の場合には
会社が「使用者責任」に基づいて
賠償責任を負わされる
場合があります。
(今日の「棒人間」 それも会社の責任に??)
<毎日更新1483日目>
オタクの会社の社員が私のバイクを盗んだんだ!
・・・・・・
会社に賠償請求してやる・・・
先日のブログで
社員の横領事件について
取り上げました。
【経理担当社員が3.9億円横領】社員の横領事件の対処法・どうやって回収するか?
今日は
社員の不祥事の中で
社員が窃盗事件を起こした場合
について取り上げてみたいと思います。
言うまでもなく
窃盗は
他人の財物を盗むことで
刑法上の犯罪です。
刑法の窃盗罪は
という刑罰も定められています。
ただ
刑事の場面だけではなく
窃盗を犯せば
民事上も加害者は被害者に対して
損害賠償責任を負うことになります。
ですから
会社の社員が窃盗事件を起こした場合
その社員が被害者に対して
賠償責任を負うことは当然です。
ただ
それだけではなく
場合によっては会社も
社員の起こした窃盗事件によって
被害者に対して賠償責任を
負うことがあります。
これが民法で定められた
「使用者責任」という制度です。
「使用者責任」とは
社員が
会社の業務に関連して
第三者に損害を加えた場合
会社も社員と連帯して被害者に対して
賠償責任を負う制度のことを意味します。
直接加害者である社員が
法的責任を負うのは当然ですが
なぜ加害者ではない会社も責任を
負わなければならないのでしょうか?
これは
およそ会社は
社員を雇用することによって
利益を上げているので
社員の不祥事によって被った
損失についてもまた負担すべき
という考え方が背景にあります。
この考え方のことを
「報償責任(ほうしょうせきにん)の原理」
などと言ったりします。
ただし
社員が第三者に対して行った加害行為のうち
すべて会社が「使用者責任」を
負うということではありません。
民法の規定では
社員が「その事業の執行について」
第三者に加えた損害について
会社が賠償責任を負うと規定されています。
この「事業の執行について」の要件ですが
これは具体的には
その社員の行動の外形から観察して
会社の職務の範囲内と見られる
行為であることが必要である
ということです。
これは
外形から観察して会社の職務の範囲内と
見られるような行為であれば
被害者保護の観点から会社に
賠償義務を課すべきである。
また
会社は社員に対する
指揮監督権を有していますので
そのような行為であれば
会社に賠償責任を課しても
それほど酷ではない
という価値判断があります。
具体的に見てみましょう。
たとえば
社員が営業先として訪問した
会社において窃盗をした場合。
あるいは
スポーツジムのスタッフが顧客の
ロッカーから財布を窃盗した場合。
このような場合は
外形から観察して会社の職務の
範囲内と言えることは明らかです。
だから
こうした場合には
会社は使用者責任を
負うことになります。
ところが
社員が勤務時間外の時間帯に
自宅近くのスーパーで万引きをした
というケースはどうでしょうか?
このような場合は
会社の職務となんの関係もありませんし
外形から見ても
会社の職務の範囲内とは言えません。
ですから
このようなケースでは
会社が使用者責任を負うことはない
という結論になります。
いずれにしても
社員の不祥事によって
会社が「使用者責任」を
負わされる場合がありますので
注意が必要ですね。
それでは
また。
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