
資格があるのに
ないと偽って入社する「逆資格詐称」。
もし社員の「逆資格詐称」が発覚した場合
会社はこの社員を懲戒処分にしたり
解雇することはできるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 資格を隠す人??)
<毎日更新1540日目>
おいおい、君は実は宅建の資格を持っているそうじゃないか!
す、すみません。
だって君、入社時には自分は「無資格」だと言っていたじゃないか!
すみません、重要事項説明とかしなきゃいけないのが面倒で、つい・・・。
都内で不動産会社を営むA社長。
半年前に新入社員のB君が入社しました。
入社時のB君の履歴書には
特に宅建などの資格は持っていない
と記載されていました。
A社長としては
本当は宅建の資格者を採用したかったのですが
折りからの人手不足で
そうも言っていられません。
そこで
とにかく無資格でも良いので誰か
入社してほしいということで
B君を採用しました。
ところが
B君が入社して半年ほど経った頃
実はB君は宅建の資格を
持っていることが発覚しました。
A社長がB君に問いただしたところ
宅建の資格を持っていると
お客さんの重要事項説明などをしないと
いけない立場になるというのが嫌だ
という理由で
資格は持っていないと嘘を
ついていたとのことです。
会社としては
資格について嘘をついて入社した
B君に対して何らかの処分を
することができるのでしょうか。
本当は業務に必要な資格を
持っているにもかかわらず
無資格であると偽って入社する
いわば「逆資格詐称」と
言っても良いかもしれません。
会社は
採用活動において
応募者の学歴、職歴、資格
などの情報をもとに
その人物が自社の求める人材であるか
適切な部署に配置できるか
給与体系に合うかなどを判断します。
これらの情報が虚偽である場合
会社は不利益を被る可能性があります。
そもそも
社員との雇用契約は
会社と社員との間の信頼関係を
前提としています。
応募時に虚偽の情報を提供することは
この信頼関係を根本から揺るがす
行為と評価されるでしょう。
さらに
会社は
応募者の申告に基づき
採用の可否や配属先
待遇を決定します。
虚偽の情報によって
採用判断を誤った場合
会社は適切な人材を確保できなかったり
不必要なコスト(研修費など)を
かけたりするなどの損害を
被る可能性があります。
そこで
このような「逆資格詐称」を行った
社員に対しては
会社が懲戒処分を
行うことが考えられます。
ただし
会社が社員に対して懲戒処分を行う場合には
あらかじめ就業規則に規定
しておく必要があります。
具体的には
就業規則等において
懲戒の種類や
どのような行為がどの種類の
懲戒処分にあたるのかなどが
定められている必要があります。
それでは
たとえば会社の就業規則において
懲戒規定が定められている場合に
「逆資格詐称」を行った社員を懲戒解雇に
することはできるでしょうか。
この点
社員を解雇するには
という2つの要件を
満たす必要があります。
これらの要件を満たさない解雇は
解雇権の濫用として無効となります。
「逆資格詐称」を理由にした懲戒解雇処分が
有効となるためには
当初からその「逆資格詐称」
がわかっていれば
その社員を雇わなかったという場合。
もしくは
少なくとも同じ条件では
雇わなかったと考えられる場合です。
要するに
その資格の有無が採用の重要な動機であり
その職務と強い関連性が
あるような場合です。
この点
宅建業法では
事業所ごとに一定数以上の宅建の
有資格者を置くことが求められています。
そこで
宅建の資格の有無は
不動産業を営む会社にとって
法的な責任や体制に関わる
重要な情報であると言えます。
そう言った意味では
「逆資格詐称」を理由とする懲戒解雇も
有効とされる余地はあるかと考えます。
ただ
「逆資格詐称」の社員が入社しても
会社に特に実害が生じていない
というような場合は
解雇は難しいと考えられます。
いずれにしても
逆資格詐称などというケースは
現実にはあまりないと
思われるかも知れません。
ところが
今の時代
良くも悪くも多様性が重視されており
どんな社員が入社してくるか
わからない面があります。
普通は
資格と言えば
自分のキャリアをアップさせるもので
積極的にアピールしたくなるものでしょう。
しかし
そうとは限らない
資格についてもいろいろな考えの人がいる
ということでもあります。
ただでさえ
社員の採用は難しい問題ですが
いろいろなことを考慮
しなければなりませんね。
それでは
今日のダジャレを1つ。
持っている資格を隠して入社するなんて、自覚が足りない??
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。