
株主総会を開催しようとしたら
法律で出席が必要とされている
株主の出席が得られず
総会が不成立に。
株主総会には
最低限出席しなければならない株主の
「定足数」というものがあります。
「定足数」を満たさなければ
有効な総会決議と認められませんので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 誰もいない総会??)
<毎日更新1591日目>
人工知能(AI)の開発を手がける
「オルツ」という会社で
株主総会が法律で定められた定足数を満たせず
「不成立」となったとの報道がありました。
不正会計のオルツ、臨時株主総会が流会に 新たな取締役選任できず
オルツでは
9月3日
都内で同社の新たな取締役3人の
選任を目的とする臨時株主総会を招集。
ところが
取締役選任決議に必要な株主の
議決権数を満たすことができず
「不成立」となったようです。
ちなみに
この会社は
売上の過大計上の疑惑が浮上し
実際に売上高の90%
約119億円を水増ししていたことが発覚。
今年の8月31日に上場廃止
となっているようです。
一難去って
また一難という感じでしょうか。
そもそも
この株主総会の「定足数」とは
何なのでしょうか?
「定足数」とは
定足数とは
株主総会の議事を有効に進め
決議を行うために必要な
会議に出席すべき人数のことを意味します。
たとえば
会社法では
株主総会の普通決議は
行使できる議決権の過半数の株主が
出席する必要があるとされています。
そして
実際に出席した株主の議決権の過半数の
賛成があって決議が成立するとされています。
ですから
株主総会の招集を行なったとしても
そもそも行使できる議決権の過半数の
株主が出席しなかった場合には
この定足数を満たさず
株主総会は「不成立」となってしまいます。
このように
株主総会に「定足数」が設けられている趣旨は
ごく一部の少数の株主によって
会社の重要事項が勝手に決められて
しまうことを防ぐことにあります。
もし定足数がなければどうなるでしょうか?
例えば
ごく少数の株主(例えば1人や2人)
しか総会に出席しなかった場合でも
そのわずかな出席者だけで
たとえば役員の選任や定款変更
合併などといった会社の根幹にかかわる
重要な決議が成立してしまう可能性があります。
これは
他の多くの株主の権利や利益を
不当に害することにつながります。
そこで
会社法では
一定数の出席がなければ株主総会が
成立しないという「定足数」を設けて
歯止めをかけているというわけです。
ただし
この「定足数」は
会社の定款の定めである程度
緩和することが認められています。
たとえば
取締役の選任決議では
「3分の1」まで減少することが
認められています。
ですから
多くの会社では
取締役の選任決議についての定足数は
行使できる議決権の3分の1以上の株主
と定款で定めています。
ここからは推測ですが
おそらく上記のオルツでは
この3分の1という定足数の株主を
集めることができなかったものと思われます。
このように
法律で要求する一定数の株主の出席がない場合
株主総会は不成立となってしまいます。
そうなると
会社の運営上重要な事項が決められず
会社経営が頓挫してしまうおそれがあります。
そのような事態を防止するには
どうしたら良いのでしょうか?
やはり
株主総会を開催するにあたり
多くの株主の出席を促す必要があります。
ただ
実際には
遠方に住んでいるとか
忙しいといった理由で
株主総会に出席しない株主が
一定数生じる可能性があります。
実は
多くの会社では
委任状による議決権の代理行使
という方法がとられています。
会社法では
株主の議決権の行使を
他の株主に委任するという
議決権の代理行使が認められています。
そこで
議決権行使を他の株主(多くは議長)に
委任する旨の委任状を提出すれば
それは有効は株主総会の出席及び
議決権の行使と扱われるわけです。
したがって
たとえば
遠方に住んでいるなどで
株主総会への出席が難しい株主には
この委任状を事前に提出してもらうように
対策をとることができます。
あと
中小企業の場合で言うと
会社の株式があまり多くの人に分散
しすぎている状態はリスクが
高いと言えるでしょう。
なるべく現執行部(社長など)に
株式を集めておく対策は
こうしたリスクを避けるためにも重要です。
いずれにしても
もし定足数を満たさないのに株主総会の
決議を行なってしまった場合
決議方法の法令違反として
株主総会決議取消の訴えを
起こされるおそれもあります。
株主総会を招集するには
この「定足数」を考慮に入れて早めに
対策をしておくことが重要ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。