
若者が減って人手不足の世の中
逆に働く意欲や能力の高い
高齢者も増えています。
この高齢者を活用する1つの方法として
「業務委託契約」を用いる方法があります。
ただ
働き方の実態によっては「雇用契約」と
判断されるリスクがありますので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 歳をとっても元気な人??)
<毎日更新1613日目>
A社では
社員の定年は65歳とされています。
入社の社員であるBさんは
このたび65歳を迎え定年となりました。
しかし
Bさんは65歳とは言え
まだまだ元気で働く意欲も旺盛です。
実は
A社の社長としても
昨今の人手不足もあり
経験豊富でまた元気なBさんには
もう少しこの会社で働いて
ほしいと考えています。
この点
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
(高年齢者雇用安定法)と言う法律があります。
この法律では
社員が65歳で定年となった場合に
70歳まで継続的に業務委託契約などを
締結する制度の導入を
努力義務の1つとして定めています。
そこで
A社の社長としては
この制度を使い
Bさんに対して70歳まで業務委託契約を
結び働いてもらうことを考えています。
業務委託契約であれば
雇用契約とは異なり
会社として社会保険の加入義務も
なくなりますので
会社の負担は軽くてすみます。
ただし
ここでA社して1つ注意しなければ
ならないポイントがあります。
それは
Bさんの働き方の実態によっては
業務委託契約ではなく
雇用契約と判断されてしまう
リスクがあるという点です。
そもそもここで
雇用契約と業務委託契約について
法律上の整理をしておきたいと思います。
雇用契約とは
労働者が使用者(会社)との間で
労働に従事することを約束し
使用者がそれに対して賃金を
支払うことを約束する契約です。
他方で
業務委託契約とは
企業や組織が行っている業務の一部を
外部の企業や個人に委託する際に
結ぶ契約の総称のことです。
「雇用契約」と「業務委託契約」の
法律上の違いはどこにあるのでしょうか?
その一番の違いは
にあると言われています。
簡単に言えば
「雇用契約」の場合は
労働者が事業主に対して
従属的な立場にあることが多い。
これに対して
「業務委託契約」の場合は
仕事の依頼を受けた人が
発注者に対して従属的な立場に
あるのではなく
ある程度対等で自由な立場
にあるということが前提です。
そして
この雇用契約と業務委託契約
の違いを表にすると
次のようになります。
比較項目 | 業務委託契約 | 雇用契約 |
---|---|---|
基本的な立場関係 | 発注者に対して対等で自由な立場 | 事業主に対して従属的な立場 |
使用従属性 | 使用従属性が弱い | 使用従属性が強い |
仕事の依頼・指示に対する拒否権 | 断る自由がある | 断る自由がない(拒否しにくい) |
業務内容・仕事の仕方 | 自由度が高い | 依頼者が指揮命令権を持つ |
働く場所 | 自由に選択できる | 決まった場所で拘束される |
働く時間 | 自由に決められる | 決まった時間で拘束される |
報酬の基準 | 仕事の結果を基準 (成果報酬:1件いくら等) |
働いた時間を基準 (時給、月給等) |
上記の中で
雇用か業務委託かをわける
最も重要なポイントは
働く人に
があるかないかという点です。
これがなければ
「使用従属性」があるとして
「雇用契約」になりやすい。
また、同じく
業務内容や
仕事の仕方に対して
依頼する方が指揮命令権を
持っている場合も
「雇用契約」になりやすいでしょう。
さらに、働く場所や
働く時間が決まっていて
仕事を受ける方がそれに拘束される場合
これも「雇用契約」になりやすい
要素です。
また
仕事をしてくれた人に対して支払う報酬が
仕事の結果を基準に支払われるのか
(たとえば、1件いくらというように
決まっている場合)
それとも
働いた時間を基準に支払われるのか
(時給いくら、という感じ)。
働いた時間を基準に報酬が支払われる
ということであれば
やはり「雇用契約」になりやすい
と言えるでしょう。
要するに
雇用契約か業務委託契約かは
形式的な契約書の名称ではなく、
実際の業務内容の実態を見て
判断されるということです。
以上のとおりですので
Bさんと業務委託契約を締結する際には
A社としては
実態として雇用契約と判断され
ないように注意する必要があります。
たとえば
それまで通りBさんに会社で午前9時から
午後5時まで働いてもらうというのでは
雇用と判断されやすいでしょう。
勤務時間は厳しく拘束せず
勤務場所もリモートワークを認めるなど
柔軟に行う必要があるでしょう。
仕事の内容についても
業務の目的や要件のみを伝え
具体的な仕事のやり方はある程度
Bさんの裁量に任せ
会社が細かい指揮監督は行わないことです。
また
会社からの業務の依頼をBさんが
断ることができるようにする
ということも大切でしょう。
若い人が減っていて人手不足の今の世の中。
他方で
肉体的・精神的に元気で働く意欲
能力の高い高齢の方は増えています。
企業が
高齢の方がまだまだ働けるチャンスを作る
これはとても良いことだと思います。
ただ
やり方次第では
会社の思惑が外れ
会社側に思わぬリスクと負担が
生じることもありますので
注意が必要ですね。
それでは
また。
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今回は、「ネイルや髪の色の注意はパワハラ?業務上の指導との線引きとは」というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。