「またクレームが来た…」
そんな社員がいると
経営者としては頭が痛いところです。
ですが、「クレームが多い」という理由だけで
「懲戒解雇」してしまうのは
実はかなり危険です。

(今日の「棒人間」 クレームが多い人??)
<毎日更新1731日目>
目次
とかく
お客さんからのクレームが
多い社員がいたとします。
会社としては
大変困ってしまいますね。
この社員のおかげで
顧客離れが進み
会社の業績にも影響が出かねません。
いっそのこと
このような社員には辞めてもらいたい
という気持ちもわかります。
実際に
こうした事件がありました。
山梨県上野原市の市立病院で
理学療法士として働いていた男性が
患者から「治療中に席を外すことが多い」
などといったクレームの多さなどを理由に
「懲戒解雇」となりました。
この男性は
解雇になったのは不当だとして
この病院を運営する「地域医療振興協会」に
処分の取り消しなどを求める裁判を
起こしました。
この件で
裁判所は
として
解雇は無効であると判断しました。
判決では
男性がクレームの詳細について
上司から説明を受けておらず
クレームの数が突出して多かったか
どうかも判然としないと指摘。
結論的に
と判断したようです。
ここで
会社が社員を「解雇」するための
法律上の要件について整理
しておきたいと思います。
まず大前提として
会社が社員を「懲戒解雇」するためには
あらかじめ「就業規則」に
規定しておく必要があります。
すなわち
就業規則等において
懲戒の種類や
どのような行為がどの種類の
懲戒処分にあたるのかなどが
定められている必要があります。
その上で
社員を解雇するには
という2つの要件を
満たす必要があります。
これらの要件を満たさない解雇は
解雇権の濫用として無効となります。
お客さんからのクレームが多いといった
社員の問題行動などを理由
とする解雇の場合も
基本的にこの2つの要件を
満たしているのかどうかが
問われます。
ところが
実際に裁判などで
この2つの要件を満たした解雇
であると判断されるためには
会社側のハードルが極めて
高いのが現実です。
そして
社員の問題行動を理由とする解雇が
法的に有効とされるためには
その問題行動の程度が著しい場合に
限られるとされています
(上記①の要件)。
さらに
社員の問題行動の程度が
仮に「著しい」としても
それだけでいきなり「解雇」
とすると
やはり無効とされます。
すなわち
「解雇」というのは
労働者である社員の生活の糧を
奪う行為でもあるので
会社としてもなるべく「解雇」を
避ける努力をすることが
求められます(上記②の要件)。
それでは
冒頭の事例において
雇い主としてはどのような対応を
すべきだったのでしょうか?
以下でまとめてみたいと思います。
まず
クレームが発生した都度
「いつ、誰が、どのような内容で」
クレームを入れたのかを記録します。
そして
本人にそれを突き合わせて
「あなたのこの行動が問題である」と
具体的に指摘すべきだったと言えます。
また
単に「クレームが多い」という
抽象的な表現ではなく
たとえば「同僚の平均は月1件だが
あなたは10件である」などと
数値的な比較も客観性を示すために
必要だと考えられます。
また
社員の問題行動があっても
いきなり解雇するのではなく
まずは教育・指導をして改善の
チャンスを与えることが必要です。
具体的には
顧客からのクレームがあった場合に
たとえば上司が面談を行い
「このような態度を改めてほしい」
などと口頭及び書面(指導書など)で
改善を促すべきだったと言えます。
それでも改善がみられない
場合においても
やはりいきなり解雇ではなく
就業規則に基づき
軽い懲戒処分から順に
検討すべきだったでしょう。
たとえば
まず①口頭での注意→
②書面による厳重注意→
③譴責処分(始末書の提出)→
④減給処分→⑤出勤停止など。
これらの段階を経て
なお改善の余地がない場合に
はじめて「解雇」の検討が俎上に
上がることになります。
また
実際に「解雇」を決める前に
その社員の言い分を聞く機会を
設ける必要があります。
たとえば
「患者からこのようなクレームがあるが
あなたの言い分はどうか?」
と聞き取りを行い
その内容を検討するプロセスが必要です。
「懲戒解雇」というのは
社員の懲戒処分の中で最も重いものであり
社員の生活にも重大な影響を与えます。
それだけに
裁判所は「懲戒解雇」には大変厳しい
判断をすることが多いです。
「懲戒解雇」というのは
いわば会社として取り得る
手段を尽くした上で
本当に「最後の手段」という
位置づけだと考えられます。
注意すべきは
安易な解雇を行ってしまうと
冒頭の事例のように
社員からの不当解雇を争う
「裁判沙汰」になってしまう
危険があります。
社員との「裁判沙汰」を避けるためにも
「解雇」に関する正確な知識を身につけ
慎重に判断することが大切ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。