社員の有給休暇を会社が買い上げることは、原則として違法とされています。
しかし、社員の退職時に未消化の有給休暇が残っている場合などには、例外的に有給を買い上げることができるとされています。
今日は、この辺のことを掘り下げてみたいと思います(^ ^)
(ランドセルをお買い上げ@恵比寿)
<毎日更新601日目>
今回は、知り合いの不動産会社の社長さんから、このたび年内に退職される社員さんの有給休暇に関するご相談です。
(守秘義務がありますので、ご相談内容は大幅に変えています)
今度、うちの会社の社員が1人、年内をもって退職することになったのです。
なるほど、退職ですね。
ところが、この社員の年次有給休暇が10日ほど未消化で残っているのです。
普通は、退職される前に、有給休暇を消化して辞めることが多いですよね。
そうなんですが、年末はちょうどうちの会社が繁忙期でして、で、この社員も事情があって急遽退職したいということだったのですが、気をつかって有給を消化しなかったようなのです。
なるほど、それで年次有給休暇が未消化のまま残ってしまった、というわけですね。
そうなんです。それで、この退職する社員から、退職時に未消化の有給休暇を会社で買い取ってほしい、と言われているのです。
なるほど、有給休暇の買い上げですね。
そこで、今日のご相談なのですが、そもそも有給休暇を会社が買い取ることは法的に可能なのでしょうか?
少し前に、有給を会社が買い取るのは違法だと聞いたことがありまして・・・。
そうですね。
おっしゃるとおり、会社が社員の有給休暇を買い上げることは、原則として違法です。
しかし、例外がありまして、社員の退職時に、会社が残ってしまった年次有給休暇を買い取ることは適法とされています。
ああ、そうなんですね。
ですから、今回ご相談の御社のケースも、社員が退職される際に残った有給休暇を会社が買い上げることは可能ですよ。
有給休暇というのは、
のことです。
これは、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
有給休暇は、
に、10日与えられます。
そして、その後も1年ごとに要件を満たすことにより、順次取得できる有給休暇の日数が増えていきます。
そして、この有給休暇を会社が社員から買い上げることは、原則として違法とされています。
これは、有給休暇というのは、そもそも社員を労働から解放する日を設けて、リフレッシュさせるというところに目的があるからです。
会社がお金さえ払えば、社員に有給休暇を取得させなくても良い、ということになると、この有給休暇制度の目的を果たすことができなくなります。
しかし、仮に社員の有給休暇を買い上げても、こうした有給休暇制度の目的と矛盾しない、という場合には、例外的に買い上げが許されることがあります。
具体的には、会社で上記の法律で定められた日数よりも多い日数の有給休暇を与えている場合。
この場合には、上記の法律で定める日数を上回る日数部分については、会社が買い取ることは許されるとされています。
なぜなら、この場合は法律で定めた日数の有給休暇はきちんと確保されている、という前提だからです。
そしてもう1つが、社員が退職する際に、未消化の有給休暇が残っているという場合です。
社員の退職時に残っている有給休暇を会社が買い上げることも、適法とされています。
もし社員が退職してしまえば、未消化の年次有給休暇はすべて消滅してしまいます。
そうであれば、未消化の有給休暇を会社が買い取った方が、社員にとってメリットになるからです。
ところで、有給休暇制度は社員の権利なので、有給を取るかどうかは、基本的には社員の自由に属する問題です。
しかし、実際問題として、日本人の有給休暇の取得率は50%程度で、世界的にみても有給の取得率の低さが問題になっていました。
そこで近年、「働き方改革」の一環として、この有給休暇制度について改正がなされました。
すなわち、会社は、有給休暇の付与日数が10日以上である社員に対し、その有給休暇のうちの5日については、その時季を指定して取得させる義務を負っています。
要するに、社員からの有休取得の求めがなかったとしても、有給のうちの5日間については、会社側からその時季を指定して取得させる、ということが義務になったわけです。
そして、違反企業には
も定められています。
ですから、社員の有給休暇制度については、この辺のところもきちんと押さえておかなければなりません。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
年内いっぱいで社員さんが退職される、という会社もあるでしょう。
この点、未消化の有給休暇の買い上げは、あくまで「できる」ということであって、会社の義務ではありません。
ですから、もし社員から買い上げを希望されても、会社はそれに応じる義務はないわけです。
ただ、冒頭の事例のように、社員が気をつかって有休消化ができなかった、という場合もあり得ます。
たとえば、長年勤めてくれた社員さんに対する労い、という意味でも、もし未消化の有給休暇があれば、退職時に買い取ってあげるというのも1つだと思います。
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今回は、労働審判という手続について、会社側の対応方法と予防のポイントというテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。