一度裁判で負けたにもかかわらず
同じ理由で再び退職金を減額した宇和島市。
なぜ裁判所は
市を二度目も敗訴させたのでしょうか。
その背景には
「確定判決の拘束力」という
裁判制度のルールがありました。

(今日の「棒人間」 一度負けても諦めない??)
<毎日更新日1900目>
懲戒免職とされた元愛媛県宇和島市の
職員の退職金をめぐる裁判で
市が退職金の半額を不支給とする処分を
取り消しを命じる判決が出たとの
報道がありました。
退職金「全額不支給」納得できず提訴した懲戒免職の市職員、「半額不支給」にされ再度提訴…市を相手取った訴訟の判決は?
実は
この宇和島市
同じ職員の退職金をめぐる裁判で
敗訴したのはこれが2回目。
どういうことかと言うと
この元職員は2014年〜2019年頃
自宅マンションの自治会費の
管理が不適切だったため
約18万円の使途不明金が判明し
これを私的に使ったと認めました。
これはあくまで元職員の
プライベートな問題であって
公務でもなく
刑事事件にもなっていませんでした。
ところが
宇和島市は
この職員が「横領を繰り返した」と判断し
この元職員を懲戒免職にした上で
退職金約1640万円の全額を
不支給とする処分を行いました。
これを不服として
元職員が宇和島市を相手に提訴。
地方裁判所の判決は
退職金全額を不支給とした
この宇和島市の処分を取り消し
二審である高等裁判所も
同じ判断をしました。
判決では
とし
退職金には賃金の後払いや
生活保障の性格が含まれることから
と判断しました。
これにてまず宇和島市の敗訴が確定。
ところが
ここから先がちょっと驚き。
宇和島市はこれで終わらず
元職員に対する処分を再度検討。
その結果
再びこの元職員が「横領を繰り返した」
という投書と同じ理由で
今度は退職金の半額を不支給
とする処分を行いました。
それに対して
元職員は再び提訴。
それに対し
冒頭のような判決が下され
宇和島市は同じ事案で裁判で二度も
負ける結果となったわけです。
いったいなぜ
このようなことが起こったのでしょうか?
この問題は
いくつか論点があるのですが
まず社員の不祥事と退職金の
関係についてお話ししたいと思います。
民間企業でもよく
社員になんらかの不祥事があった場合に
退職金を不支給にしたり
減額したりする処分がなされる
ことがあります。
しかしながら
実は法的に考えると
不祥事を起こした社員が
懲戒処分などを受けることと
その上さらに退職金の
不支給が有効かどうかは
また別問題なのです。
というのは
退職金というものには
次の2つの性質があると
言われています。
1つ目は
です。
これは
社員の長年の功労に対して
退職金というお金で報いる
といった性質です。
そして
もう1つは
といわれるものです。
これは
賃金の一部を後払いとすることで
社員の定着を促す役割があると
言われています。
たしかに
不祥事を起こして懲戒解雇
になった社員については
1つ目の功労褒賞としての側面で考えれば
退職金の不支給や減額は
認められやすいでしょう。
しかし
もう1つの
賃金の後払い的性質を考えれば
いくら懲戒解雇になった社員だからといって
そう簡単に不支給や減額はできない
という結論になります。
そこで
懲戒解雇になった社員に対して
退職金を不支給ないし減額が有効
となるためには
社員のそれまでの勤続の功労を抹消ないしは減殺してしまう程度の、著しく信義に反する行為があった場合に限られる
とされています。
この点
冒頭の宇和島市職員の事例では
裁判所はやはり上記の退職金の
「賃金の後払い的性質」に着目しています。
その上で
上記のように
として
退職金全額の不支給処分を
取り消しているわけです。
さて
それでは
なぜ宇和島市は同じ事案で裁判で二度も
負ける結果となってしまったのでしょうか?
この件の2度目の裁判では
判決で
ということを理由に
宇和島市を敗訴させています。
これはどういうことかと言うと
1回目の裁判で裁判所が宇和島市を
敗訴させた理由の1つに
この元職員に
というものがあり
それゆえこの元職員には
と判断しているわけです。
ところが
2回目の裁判で宇和島市は
またこの元職員が
「横領行為を繰り返している」と主張し
それを理由に退職金の一部の
不支給処分を行いました。
ここで重要なのが
「確定判決の拘束力」というものです。
というのは
裁判というのは
いつまでも何度でもやり直せる
ものではありません。
もし一度負けた方が
もう一度同じ裁判を起こしてやろう
ということができるとすると
紛争が蒸し返され
いつまで経っても裁判は終わらない
ことになってしまします。
そこで法律では
一度確定した判決については
その結論を後から覆すような主張や処分は
認めないというルールになっているのです。
ですから
冒頭の事例でも
1度目の裁判の判決で
「強い横領の意思は認められない」とされ
退職金全額の不支給は許されないと判断された。
それにもかかわらず
宇和島市側が2度目の裁判で
「横領行為を繰り返した」ことを理由に
退職金の一部を不支給とすることは
まさしくこの1度目の裁判の
確定判決の拘束力に反している
というわけです。

裁判には
「紛争を終わらせる」という
大切な役割があります。
だからこそ
一度確定した判決を尊重することこそが
終わりの見えない紛争を防ぎ
社会を安定させることにも
つながっているのです。
負けたら潔く諦める
こういった割り切りも必要ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。