仕入れ先に対して、
代金支払いの義務を負っていても、
その代金を支払ってはいけない、
と裁判所から命じられることがあります。
そんな場合は、
どんなに仕入れ先から
頼まれても、
支払ってはいけません。
支払ってしまうと、
後々大きなリスクになります。
(ちょっとその支払いはいったん「ストップ」)
<毎日更新647日目>
先日、
久しぶりに顧問先のA社長から
ご相談が。
実は、うちの会社の建築資材の仕入れ先に対して、200万円ほど買掛金があるのですが、これに関して先日裁判所から通知が届いたのです。
それは、どんな通知ですか?
なんか、「仮差押決定」と書かれていました。
なるほど、それは、仕入れ先の債権者が、仕入れ先の御社に対する債権(売掛金)に対して、仮差押えの手続きを行なったんですね。
そもそも、仮差押えってなんですか?
たとえば、ある会社が別の会社に対して債権を持っていたとします。
ちょうど、御社の仕入れ先が御社に対して建設資材の代金債権(売掛金)を持っている場合がそうですね。
しかし、仕入れ先がどこかから借金をしていたとします。
しかし、不幸なことに、この仕入れ先の会社が経営破綻してしまい、別の会社から借りたお金を返せなくなってしまいました。
そうすると、その別の会社は、お金を貸した先である仕入れ先に対して裁判を起こして回収することを考えます。
ただ、裁判は一定の時間がかかるので、裁判で判決が出るのを待っていると、この仕入れ先の会社の資産状態がますます悪化して、回収できなくなってしまいます。
それはそうでしょうね。
そこで、裁判を起こす前に、この仕入れ先の会社が持っている資産などを、仮に差し押さえて、一時的に処分ができなくさせる制度があり、これが仮差押えと言われる制度です。
なるほど。
しかし、なぜ仕入れ先の、うちに対する建設資材の代金が差し押さえられたのでしょうか?
御社に対する代金支払い請求権という債権も、りっぱな財産になりますから、これも差押えの対象になるのです。
そうなんですね。
それでは、うちとしては、この仕入れ先に対する代金はどうすれば良いのでしょうか?
すでに裁判所の仮差押命令が出ていますので、仕入れ先に代金を支払ってはいけません。
もし支払ってしまうと、後々仮差押を行なった仕入れ先の債権者から、損害賠償請求を受ける可能性があります。
しかし、仕入れ先に支払わないと、契約違反ということで、債務不履行の責任が発生するのではないですか?
まさに、こういうときのために、供託という手続きがあります。
法務局で、この仕入れ先に対する代金の債務を供託しておけば、仕入れ先に支払わなくても債務不履行にはならないのです。
仮差押えというのは、
債権者が自分の債権を回収する
ための手段として、
債務者が持っている財産を
仮に差し押さえることで、
その財産の保全をはかる制度です。
裁判所の仮差押の決定が出れば、
債務者は自分の財産であっても、
勝手に処分することができなく
なります。
ですから、
債権者としては、
自分の債権を回収するための
引き当てとなる債務者の財産が
保全されるというわけです。
そして、
上記のA社長の会社の立場からすると、
仮差押えをされた建設資材代金の買掛金
については、予定通り仕入れ先に
支払うことが禁止されます。
そうしないと、
仮差押えの制度を設けた意味が
なくなってしまいますよね。
ですから、
A社長としては、まず、
経理担当者などに支払いの状況を
確認し、今後の支払いを止める
ように指示をしなければなりません。
こんなときによくあるのが、
資金繰りが苦しい仕入れ先の
会社が連絡をしてきて、
などと強く言ってくることが
あります。
こうなると、
A社長の立場としては、
訳がわからないですよね。
しかし、上記で見たように、
裁判所で支払いを禁止されている
ものを支払ってしまうと、
後々で仮差押えを行なった
債権者から、損害賠償請求を
される危険性があります。
ですから、こういう場合は、
絶対に仕入れ先には支払っては
いけません。
ただ、そうは言っても、
仕入れ先との関係では、
契約があるので、
支払いを拒否すれば契約違反
となって、債務不履行責任を
問われるのではないか?
それももっともなご心配です。
しかし、ご安心ください。
こんなときのために、
「供託」という制度があります。
供託というのは、
上記の例で言えば、
仕入れ先が代金の受領を拒絶
している場合や、
仕入れ先が代金を受領できない
場合などに、法務局にある供託所に
お金を預けて、法的に代金を
支払ったことにする制度です。
ですから、こんな場面では、
供託の手続きを行うことで、
仕入れ先に対する支払いを拒絶
しても、債務不履行責任は
問われないことになるのです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
とは言え、
多くの中小零細企業の経営者
の方にとって、裁判所から
いきなり通知が来ても、
何をどうしてよいかわからない、
というのが実情でしょう。
そんなときは、
ご自身で勝手な判断をすると
危険なので、すぐに弁護士に
相談してほしいところです。
ただ、
そうなってから一から
弁護士を探すのも大変です。
弁護士を探して、
法律相談の予約をして、
1週間後に法律相談に行って、
とか言ってられない場合も
あるでしょう。
なにせ、上記の例で、
裁判所から支払ってはダメ、
という通知が来る。
さりとて、
仕入れ先の会社は血眼になって
とわめく。
どうするか、
すぐに判断が必要な場合も
あるでしょう。
そんなときのために、
やっぱり顧問弁護士はいた方が
安心ですね。
顧問弁護士であれば、
すぐに連絡をしてスピーディーに
アドバイスを受けることができます。
(というか、
そもそもスピーディーに連絡がつかない
顧問弁護士はダメです)
場合によっては、
うるさく「支払え」と言ってくる
仕入れ先との交渉を
頼むこともできます。
そうすれば、
社長自身が
と悩んだり、
仕入れ先から催促されてその対応に
追われるとか、そういう煩わしい
ことからも解放されます。
面倒なことは顧問弁護士に任せて、
やはり社長には会社の経営に専念して
いただく方が良いかも知れませんね。
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今回は、中小零細企業が「裁判沙汰」に巻き込まれてはいけない3つの理由、というテーマでお話しています。
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これが結構量が多くて、大変でした。
「中盛り」にしておけばよかった!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。