定期借家の契約が終了しても、
借主がそのまま家賃を払って住み続け、
大家もそれを黙認している、
なんてことがあります。
その場合、
大家としては、
「もう契約は終了しているのだから、
さっさと出て行って」と求めることは
できるのでしょうか?
(この道はどこまで「続く」?@新潟県五泉市)
<毎日更新679日目>
昨日から、
マスクの着用が緩和され、
基本的に「個人の判断」
とされることになりました。
しかし、
街を歩いていると、
相変わらずみんなマスクを
つけていますね。
なんかみんな様子を見ているというか、
なんとなく今までずっと3年間マスク生活
だったので、そのまま惰性で続けている
感じがしますね。
契約も、
期間は終了したのに、
なんとなく続いてしまう、
なんてことがあります。
先日、
ある会社の社長さんから、
会社のオフィスの賃貸借契約
に関するご相談を受けました。
実は、うちの会社のオフィスは、大家さんとの間で、期間10年間とする定期借家契約だったのです。
なるほど、期間の満了によって終了する「定期借家契約」ですね。
そうなんですけど、期間が満了する頃になっても、大家さんからなにも言われなかったので、そのまま家賃を払い続けてずっとオフィスを使い続けていたのです。
定期借家の契約期間が終了してから、どのくらい使い続けているのですか?
契約期間が終了してから、もう3年くらい使っています。
その間も、大家さんは何も言わなかったのですか?
はい、まったく何も言わずに、毎月の家賃も受け取っていました。
ところが先日、突然、「もう契約は終了しているので、来月で出て行ってほしい」と言われたのです。
いきなり、ですか?
そうなんです。今までなにも言わなかったのに、突然来月出て行ってくれと言われても、うちも会社をやってますので、大変困ってしまいます。
こんなとき、どうしたら良いのでしょう?
定期借家契約が終了しても、その後も長期間にわたって使い続けていて、大家さんもそれに異議を述べずに賃料を受け取っていたような場合は、新たに「普通賃貸借契約」が結ばれた、と考えることができます。
普通の賃貸借契約、ですか?
そうです。「定期借家」のように期間が決まっていない、普通の賃貸借契約となります。
なるほど、その場合はどうなるんでしょうか?
普通の賃貸借契約であれば、大家さんから契約の解約申し入れをする場合には、「正当事由」の存在が求められます。実際には、そう簡単に「出て行け」をは言えなくなります。
そうなんですね。
また、もし大家さんの要求に応じて明け渡す場合には、それなりの「立退料」を要求してもよい事案だと思います。
定期借家契約というのは、
契約期間が満了すれば、
確定的に契約は終了し、
借主は出ていかなければ
ならない契約のことです。
この定期借家契約では、
基本的に契約の更新がありません。
ですから、
大家さんとしては、
契約期間が満了するときには、
借主に対して「出て行って」と
求めることができるわけです。
ところが、
世の中には、
契約期間が満了しても、
大家が契約の終了を通知せず、
借主もなんとなくそのまま家賃を
払って使い続ける、
なんてことがあります。
まぁ、
大家さんとしても、
すぐに建物を返してもらう必要がなければ、
家賃を払ってそのまま続けて住んで
もらっていた方が、都合が良い、
という場合もあります。
ただ、
定期借家の契約はすでに終わって
いますので、その後借主が引き続き
家賃を払って住み続けている状態というのは、
法律的にはどんな状態なのでしょうか?
この点について扱った裁判例がありまして、
そこでは
期間満了後、賃貸人から何らの通知も異議もないまま、賃借人が建物を長期にわたって使用継続しているような場合には、黙示的に新たな賃貸借契約が締結されたもの
と考えるべきだとされています。
黙示的に契約が締結された、
というのはちょっとわかりにくいですね。
要するに、
大家さんと借主との間で、
明確に合意したとか、
新しい契約書を作ったとかいう
事情はありません。
しかし、
期間満了後も借主が家賃を払って
引き続き建物に住み続けることについて、
大家さんとしても異議を述べずに
黙認していたわけです。
こうした状態をもって、
「黙示的に契約が締結された」
と認定しているわけです。
そして、
新たな賃貸借契約というのは、
定期借家ではなく、
普通の賃貸借契約を意味します。
普通の建物の賃貸借契約というのは、
借地借家法という法律で、
かなり強く借主側が保護されています。
すなわち、
貸主(大家)の側から、
賃貸借契約を解約したい、
という場合もかなりハードルが
高くなります。
具体的には、
貸主からの賃貸借契約の解約申し入れには、
「正当事由」がなければならない、
とされています。
「正当事由」というのは、
今住んでいる借主を追い出して、
貸主がその建物を使用することを
正当化できるような事情が
どの程度あるか、ということを
厳密に問われます。
そして、
実際に裁判などになっても、
貸主側の「正当事由」はなかなか
認められにくいのが現実です。
ですから、
結論としては、
定期借家の契約が終了しても、
その後借主が賃料を払って住み続け、
それを貸主が長期間黙認していた
ような場合は、普通の賃貸借契約が
締結された、と判断されてしまいます。
そうなると、
貸主としては、
「正当事由」なく、
借主に対して「出て行ってくれ」
とは言えなくなる、
ということになります。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
そんなわけで、
冒頭のご相談事例でも、
大家の要求にしたがって出ていく
必要はない、
という結論になります。
しかし、
定期借家の期間満了後も、
借主の継続使用を黙認していながら、
突然「来月で出て行ってくれ」というのは、
まぁ、ずいぶんと身勝手な大家さんですよね。
こういうトラブルを避けるためにも、
やはり定期借家の契約が終了する段階で、
その後はどうするのか、
きちんと話し合って新たな契約書を
作っておくべきですね。
それにしても、早くマスクから自由になりたい。
ちなみに、私もまだマスクはつけてます。
なしにろ、今年は花粉症がひどいものですから・・・。
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今回は、新規の取引先と取引を行う際に、代金の不払いリスクを避けるための7つの方法、ということでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。