「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【ひげで低評価?】不利益処分は裁量逸脱として慰謝料が認められたケース

LINEで送る
このエントリーを Google ブックマーク に追加
Pocket

社員には、

ひげを生やす自由はあるのか?

 

 

ひげを理由に、

会社がその社員に不利益な

処分を課したらどうなるのか?

 

 

今日は、

その辺のことについて

掘り下げてみたいと

思います。

 

 

 

 

(今日の「棒人間」 ひげで低評価はあり?)

 

<毎日更新819日目>

ひげを理由に、人事考課で「低評価」?

ひげがバッチリ似合う人って、

かっこいいですねぇ〜。

 

 

憧れます。

 

 

実は、

私も、

数年前ひげを生やしていた

時期があるんです。

 

 

しかし、

私はあまり毛が濃くないので、

どうしても薄いひげになりがち。

 

 

あるとき、

プロフィール写真をお願いした

フォトグラファーの女性から、

ひげは生やすなら生やす、剃るなら剃る、はっきりして!

と言われたので、

剃ることにしました(泣)。

 

 

弁護士は自由業なので、

ひげを生やしている人も

時々見かけます。

 

 

ただ、

職業によっては、

「ひげ」を制限されるケースも

あるでしょうね。

 

 

地下鉄の運転士が、

ひげを生やしていることを

理由として、

雇用主である市から低評価の

査定を受けたとして、

慰謝料の支払いを求めた、

という事件がありました。

 

 

この人は、

口元とあご下などに

ひげを生やして、

地下鉄運転業務に従事

していたそうです。

 

 

地下鉄を運営している市では、

「職員の身だしなみ基準」

というものを定めていました。

 

 

そこでは、

 ひげを伸ばさずにきれいに剃ること(整えられたひげも不可)

と書かれていました。

 

 

市としては、

この基準は、

お客さま第一主義に基づき、

職員の任意の協力を

求めるものである、

としていました。

 

 

そして、

この運転士の人は、

上司などから再三、

ひげを剃るように職務命令や

指導を受けたものの、

従わなかったとのこと。

 

 

その結果、

この人は、

ひげを理由に人事考課で

「低評価」の査定を受けた

とのことです。

 

 

「低評価」はひげを生やす自由の侵害?

そこで、

この運転士の人は、

こうした職務命令や査定は、

人格権としてのひげを生やす自由を

侵害するものであって

違法であると主張し、

慰謝料等の損害賠償を求めて

裁判を起こしました。

 

 

判決では、

まず、

職務に対する信頼を

損なわないようにするために、

職員の服務規律の必要があり、

身だしなみに関する規程を

儲けることも、

合理性があるとの趣旨を

示します。

 

 

他方で、

ひげは、

服装や髪型等と同じく、

個人が自己の外観をいかに

表現するかという

個人的自由に属すると

いう面もある。

 

 

そこで、

ひげに関する服務規律は、事業遂行上の必要性が認められ、かつ、その具体的な制限の内容が、労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力があると認めるのが相当である

としました。

 

 

その前提で、

地下鉄運転士に対して、職務上の命令として、その形状を問わず一切のひげを禁止するとか、単にひげを生やしていることをもって、人事上の不利益処分の対象とすることは、服務規律として合理的な限度を超えるものであると言わざるを得ない

としています。

 

 

要するに、

地下鉄の運転士の業務を考慮して、

ひげを一切禁止するような

規程を定めるのはいかん、

と言っています。

 

 

ただし、

本件の上記

「職員の身だしなみ基準」は、

あくまで強制ではなく、

職員の任意の協力を求める

形のものであるから、

こうした基準を定めることは

OKとしています。

 

 

その上で、

職員がひげを生やしている

ことを理由に、

人事考課上の不利益処分(低評価)

を行ったことは、

合理的な限度を超えると判断し、

市側の裁量権の逸脱であるとして、

慰謝料の支払いを命じました。

 

 

ちょっとわかりにくいですが、

「職員の身だしなみ基準」

を定めて、

その中でひげはダメ、

と定めることまでは

ギリギリOK。

 

 

ただし、

この基準は強制ではなく、

任意の協力を求めるもの

であるから、

ひげを理由にした不利益処分を

課すことはダメだ、

と言っているのです。

 

 

なぜならば、

ひげを理由に不利益処分を

課されることになれば、

実質的には強制している

ことと同じになって

しまうからです。

 

 

 

 

社員の「身だしなみ」をどう考えるか?

さて、

ちょっとおもしろい

事例だったので、

今回紹介してみました。

 

 

私の考えとしては、

ひげくらい個人の自由じゃないか

と思いますが、

職業によってはそうもいかない

ものもあるようです。

 

 

たとえば、

銀行員などは、

信用第一ですから、

スーツにネクタイ、

髪は男性の場合は短髪で、

ひげなどもっての外

といった感じでしょうね。

 

 

しかし、

たとえばシステムエンジニア

などの世界では、

男性の長髪も茶髪もひげもOK

というところもあるようです。

 

 

地下鉄の運転士、

となると少し微妙かも

知れませんね。

 

 

たしかに、

人に見られてはいますが、

ひげを生やしているからといって、

信用を損なうとか、

業務上支障があるといった

ようなことはなさそうです。

 

 

今の時代は、

多様性の時代であり、

個人の自由が重んじられるように、

社会の価値観も変わって

きています。

 

 

学校の校則でも

同じような問題が

ありましたね。

 

 

大した合理性もなく、

個人の自由を侵害するような

規則を定めることは、

許されない時代に

なっていると思います。

 

 

個人的には、

銀行員だってひげを生やした

個性的な人がいても

おもしろいのに、

と思いますけどね。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、家賃を滞納する借主に対して、すぐに出ていってくれといえるかどうかか、こうした借主に出ていってもらう手順などについてお話しています。

 

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、午前中は自宅で仕事、午後は事務所に出勤、オンラインの裁判期日と、お客様との打ち合わせなどでした。
夜は、四谷の同業者の事務所で打ち合わせ、その後食事でした。

ご提供中のメニュー

 

 

LINEで送る
このエントリーを Google ブックマーク に追加
Pocket

お問い合わせ

住所 150-0031
東京都渋谷区桜丘町4番23号渋谷桜丘ビル8階
マップを見る
受付時間 【平日】9:30〜18:00
【土曜日】9:30〜12:00
渋谷共同法律事務所のHP

           

裁判しないで解決する
ノーリスクプロモーター

                               
名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

カテゴリー