引越しのサカイで行われていた
「出来高払い制賃金」が、
裁判所で否定されました。
同社の「出来高払い制賃金」は、
成果に応じた賃金になっていない
ことがその理由のようです。
今日は、
この辺のことを深堀り
してみたいと思います。
(今日の「棒人間」 残業代を請求するパンダ)
<毎日更新847日目>
引越し屋さんで有名な、
「サカイ引越センター」に対して、
東京地裁立川支部は、
社員3名の未払い賃金等で
合計約1570万円の支払いを
命じました。
引越のサカイに1570万円の支払い命令! 偽の「出来高給」を裁判所が全否定
これは、
同社の元引越作業員兼
ドライバー3名が、
サカイ引越センターを
相手に提訴。
時間が労働にかかる
割増賃金(残業代)などが
未払いであると主張し、
その支払いを求めたそうです。
この裁判で、
主に争点となったのは、
同社が採用していた
「出来高払い制賃金」
という社員の
給与システムです。
この会社では、
給与の大部分に
「出来高払い制」が
適用されていました。
それが、
法的な意味での
「出来高払い制」に該当
するのかどうか、
が裁判で争われました。
結果的に、
裁判所は、
同社が出来高払いとして
扱っていた部分のすべて
について、
「出来高払い制賃金」には
当たらないと判断しました。
そして、
「出来高払い制」が無効
であることを前提として、
適正な形で賃金を
計算し直しました。
その結果、
同社が支払っていた額では、
本来支払うべき金額に
足りないことから、
裁判所は、
社員3名にあわせて
950万円の支払いを
同社に命じました。
さらに、
後で詳しく述べますが、
これに加えて、
今回は約620万円の「付加金」
の支払いも命じられ、
合計1570万円の支払いを
命じる判決が出たとのことです。
ここで、
法的な意味での
「出来高払い制」とは、
労働基準法施行規則
第19条1項6号の
「出来高払性その他請負性
によって定められた賃金」
のことです。
具体的には、
「出来高払い制賃金」とは、
労働者が販売した金額や製造した
物の量等の成果に応じて
賃金の額を決定する
制度を言います。
たとえば、
タクシーのドライバーとか、
生命保険の外交員、
トラックのドライバーなどの
仕事で採用されている
ケースが多く、
いわゆる「歩合給」と
呼ばれることもあります。
この「出来高払い制度」は、
経営者にとっては無駄がなく、
効率的な制度という
側面があります。
ただ、
社員にとっては、
成果によって賃金が大きく
変動するシステムです。
ですから、
社員にとっても、
がんばれば報われるという
モチベーションになる側面も
ありますが、
給料の額が不安定な制度
という面もあります。
そこで、
法律上この「出来高払い制賃金」が
認められるためには、
一定の要件があります。
今回の判決で、
裁判所は、
この「出来高払い制賃金」について、
労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みを指すものと解するのが相当であり、出来高払制賃金とは、そのような仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当である
としました。
つまり、
法律上有効な
「出来高払い制賃金」と
認められるためには、
ということを意味します。
しかし、
「サカイ引越センター」の
今回問題となった給与システムは、
仕事の成果に応じた
賃金なっておらず、
法律上有効な
「出来高払い制賃金」では
ないと判断されました。
その具体的な要素としては、
次のようなものがあります。
売上額に応じて支給される賃金であるが、売上額は営業職が顧客との間で交渉し、営業責任者が決裁して決定されるものであり、直ちに引越作業員等の仕事の成果とはいえない。
ドライバーが配車係から案件の割当てを受けて得られる賃金であり、配車係がドライバーの労働時間のバランスを考慮して案件を割り当てていたことなどを踏まえると、ドライバーの自助努力が反映される賃金であるとは言い難い。
引越作業員等としては、売上額の多寡にかかわらず、専ら配車係が裁量によって指示する案件の割当てに従って決められた作業をするほかなかった。
さて、
「出来高払い賃金」が
認められないとすると、
その制度が適用されない前提で、
残業代の計算をし直さなければ
なりません。
そうすると、
今回の「サカイ引越センター」
の事例では、
社員3名分で合計950万円が
未払いだとされました。
さらに、
上記のように、
これに加えて、
3名分の「付加金」
約620万円の支払いが
命じられました。
この「付加金」とは
いったい何なのでしょうか?
付加金とは、
使用者が労働者に一定の金銭を
支払っていない場合に、
裁判所がその金額と同一額の
支払を命ずることができる
制度のことを言います。
簡単に言えば、
社員から未払い残業代の
裁判を起こされて、
残業代の未払いが認定されると、
裁判所の裁量で、
その未払い額と同額の支払いを
命じられることがあり、
これを「付加金」と言うわけです。
未払い部分の残業時間にもよりますが、
これをやられると、
巨額の支払いを余儀なくされる
ことになります。
「サカイ引越センター」のような
大企業ならいざ知らず、
普通の中小零細企業が
これをやられると、
下手をすれば倒産の危険に
さらされます。
やはり私がこのブログで
常々言っているように、
中小零細企業は「裁判沙汰」に
巻き込まれてはダメなのです。
私のミッションは、
ということ。
未払い残業代の「裁判沙汰」が
起こるのを避けるためにも、
残業代未払いのリスクを
なくしておく、
これが非常に重要になります。
この点、
「出来高払い制」は上記のとおり、
法的に有効とされるためには、
一定の要件があります。
この要件をきちんと
満たしていないと、
後で法的に無効だと判断される
リスクがあります。
「出来高払い制」が
無効となってしまうと、
適正に計算した残業代との
差額の支払いを
余儀なくされます。
なぜなら、
「出来高払い制賃金」の場合、
残業代の計算方法が
通常と異なるため、
通常の計算をした場合との
差額が生じてしまう
からなのです。
こうした
「出来高払い制賃金」の要件や、
残業代の計算の仕方を
しっかりと押さえておく
必要があります。
この辺は、
長くなりましたので、
また明日お話ししたいと
思います。
それでは、
また。
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今日は、辞めたいのに辞められない「雇われ社長」をどう辞めるか、というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。