社員によって、
社内の不祥事が外部の
マスコミにリークされて
大問題に。
今話題のビッグモーターで、
社員に口封じの「誓約書」を
書くような通達が
出されているようです。
こういうことは、
果たして許される
のでしょうか?
(今日の「棒人間」 不祥事の「告げ口」は違反??)
<毎日更新852日目>
社内の情報は一切外部に口外いたしません。
もし違反した場合は、法的な責任を負担し、懲戒処分を受けることに異議がなく、貴社が被った損害を賠償します。
この会社、
本当にまったく反省が
ないのでしょうか?
またまた話題のビッグモーターで、
社員に社内の情報を出すなと
誓約書を書かせ、
その誓約書には、
違反したら損害を賠償します
とも書かせていた、
という報道がありました。
これは、
同社が、
社内のシステムを通じて
全社員に通達を出し、
「秘密保持に関する誓約書」に、
日付と氏名の記述、
押印を求めたとのことです。
ビッグモーター側は、
一般企業でも社内情報を持ち出さないのが常識だろ!
内部で隠したい情報があり、それを出さないよう求めているのではない。
と述べているそうです。
ただ、
そうは言ってもこの会社、
今までも社内のパワハラや
顧客の不利益となる
販売の実態など、
数々の不祥事が社員の
報道機関への情報提供で
相次いで明らかになって
いるのも事実。
「不祥事隠しではない!」
と今さら言っても、
なかなか世間の納得は
得られそうにありませんね。
もし仮に、
の話ですが、
この誓約書を書いた
ビッグモーターの社員が、
新たな社内の不祥事を発見して、
それをマスコミにリークした場合、
その社員はこの誓約書を根拠に
懲戒処分を受けるのでしょうか?
もしビッグモーターがその社員
に対して懲戒処分を行った場合、
その処分は有効なのでしょうか?
会社の原則論からいくと、
社員は会社と雇用契約を結んでおり、
この雇用契約上の義務の1つとして、
会社の秘密を守るという
誠実義務を負っています。
すなわち、
多くの会社の就業規則では、
社員に対して秘密保持義務
が課されていたり、
会社の名誉・信用を害する行為が
禁止されています。
そして、
一般論としては、
社員がこうした就業規則などの
規定に違反した場合には、
懲戒処分や解雇の理由
となり得ることになります。
ただ、
これを徹底すると、
もし仮に社内で不祥事が
行われていたような場合に、
それが一切外部に明るみに
出ることがなくなります。
特に、
ビッグモーターのような
大企業が組織的に不祥事を
行っていた場合、
それが外部に隠される
ことによる内外の影響、
社会に与える悪影響は
計り知れないものがあります。
そこで、
やはりこうした不祥事などを
社員が告発しやすくする、
という制度も必要になってきます。
ここで、
「公益通報者保護法」
という法律があります。
この「公益通報者保護」の制度は
会社に法令違反の事実が
あった場合などに問題になります。
その際、
社員がその社内情報を
会社の内外に通報した場合に、
その社員に不利益処分を
課してはならないとして、
その通報をした社員を
保護する制度です。
社員は通常,
会社の業務をする中で,
会社内の不祥事などを
把握することができる
立場にあります。
しかし,
会社と社員は対等ではなく,
通常会社の方が優位にあります。
そして、
上記で見たとおり、
社員は会社から業務上の
指揮命令等の統制を受けて,
会社に対する誠実義務
を負っています。
そのため,
社員が会社の法令違反行為を
発見しても,
それを通報することによる「公益」と,
「会社の利益」は利害が
相反する関係になります。
そこで,
公益通報者保護法
という法律があり,
社員が公益通報を
行なったことを
理由とする解雇や
その他の不利益取り扱いも禁止
することを定め,
公益通報をした社員を保護
しているのです。
ただし、
この公益通報者保護法は、
保護を受ける通報対象
になる事実が、
犯罪行為等に限定
されています。
また、
社員が特にマスコミ等の
外部に通報した場合に、
保護されるための要件が
とても厳しく、
かえってこの制度では
社員の告発行為が抑制される
危険性が指摘されています
そこで、
この公益通報者保護法の
要件は満たさなくても、
社内の不祥事を告発をした社員を
保護するための法解釈が
必要となってきます。
この点、
裁判例で、
社員による内部告発行為の
正当性についての基準を
示したものがあります。
すなわち、
① 内部告発の根幹的部分が真実ないし、告発者から見て真実と信ずるについて相当の理
由があること
② 告発の目的が公益性を有すること
③ 告発の内容が組織側にとって重要であること④ 告発の手段・方法が相当であること
という基準が示されています。
ちなみに、
「②告発の目的が公益性を有すること」
というのは、
たとえば、
この社内の不祥事をきちんと
世に知らしめることで、
不祥事を起こした会社の
体質を改善し、
広く社会を良くしていきたい
などといった目的です。
ですから、
単に会社に復讐をしてやりたい、
会社を困らせてやりたいといった
公共性のない目的では
正当性はないとされます。
さらに、
「④告発の手段・方法が相当であること」
というのは、
たとえば、
社内できちんとした公益通報窓口があり、
それが有効に機能している場合には、
まずそちらを利用すべきだ
ということです。
そのような場合に
、窓口を利用せずに、
いきなり外部のマスコミに
リークしたりすれば、
それは④の要件を欠き、
内部告発の正当性がない
という方向に働きます。
そして、
内部告発者にこうした正当性が
認められる場合には、
たとえ社員の内部告発によって
会社の名誉や信用が
害されたとしても、
これを理由に懲戒解雇等を
することはできない、
とされているのです。
これらのことを考えると、
ビッグモーターがいかに
「誓約書」を書かせたとしても、
社員が上記の正当性を満たした
告発を行った場合には、
やはり懲戒処分はできない
ということになるわけです。
このように、
いかに社員に社内の秘密保持の
「誓約書」を書かせたとしても、
社員の側に内部告発の
正当性があれば、
その社員を懲戒処分に
できなくなってしまいます。
それでは、
このような「誓約書」を
社員に書かせることには、
意味がないのでしょうか?
私は、
そんなことはない、
と考えます。
まさに「不祥事のデパート」
のようなビッグモーターの例を
取り上げたので、
少し混乱するかも知れませんが、
まっとうな普通の会社において、
社員に秘密保持の「誓約書」を
書いてもらうことはなんら
問題はありません。
むしろ近年は、
社員が正当な理由なく
社内の秘密を持ち出して、
それをライバル企業に提供する。
会社の名誉を毀損するような内容の
インターネットの書き込みをするなど、
社員の問題行為も増えています。
そうした社員の不祥事によって、
会社が思わぬ損害を受けることを
防ぐ1つの方法として、
社員に「誓約書」を書いて
もらうというのは、
大いに意味のあることです。
会社の就業規則や、
「誓約書」に社員の秘密保持の
義務をきちんと定めておくことで、
社員にとってもやって良いことと、
悪いことの基準が明確になります。
これが、
社員の不祥事防止にも
つながるわけです。
こうした対策を日頃から
打っておかないと、
思わぬ社員の不祥事によって
トラブルになり、
最悪は「裁判沙汰」にまで
発展する危険があります。
この点、
私のミッションは、
というもの。
まっとうな企業が、
社員の不祥事によって
思わぬトラブルや
「裁判沙汰」に発展することを
予防するための1つの方法として、
社員に「誓約書」を
書いてもらうことは、
大いに意味があります。
私は、
ビッグモーターのような
「ブラック企業」は応援しませんが、
日々真っ当に生きておられる
小規模企業の経営者の方を
応援しています。
もし何かありましたら、
いつでもご相談いただければ
と思います。
それにしても、
この後に及んで、
まだ社員の口封じを
企てるビッグモーター。
本当に、
そろそろいい加減に
してもらいたいものですね。
裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
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今回は、休日に上司から仕事のLINE、これは労働時間?というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。