「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

社長が覚醒剤で逮捕、オフィスの賃貸借契約を解除できるか?

不動産賃貸

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賃貸オフィスのテナントで

入っている会社の社長が、

覚醒剤で逮捕。

 

 

貸主としては、

イメージダウンなので、

もうこの会社には出て

いってもらいたい。

 

 

果たして、

法的に出ていってくれ、

と言えるのでしょうか?

 

 

 

 

 

(今日の「棒人間」 明渡請求は認められる??)

 

<毎日更新903日目>

テナント会社の社長が覚醒剤で逮捕、賃貸借を解除したい?

 覚醒剤やめますか? それとも人間やめますか?

昔、

私が子どもの頃には、

テレビでこんなCMが

バンバン流れていました。

 

 

 

日本民間放送連盟(民放連)が、

麻薬撲滅運動の啓蒙広告として、

1980年代に製作した

CMのようです。

 

 

こんなCMがお茶の間に

流れていたかと思うと、

ちょっと不思議な感じが

しますね。

 

 

先日、

不動産賃貸業を営むA社長から

ご相談がありました。

今日は、うちが貸している賃貸オフィスの件でご相談がありまして。

会話

どんなご相談でしょうか?

実は、そのテナントには、とある映像制作の会社が借主として入っていて、会社のオフィスとして使っているのですが、そこの社長が最近、なんと覚醒剤で捕まってしまったのです。

会話

覚醒剤ですか、なるほど。

うちが貸している物件のテナントで、そんな犯罪を犯して捕まった人がいるというのはイメージダウンですし、もうこのテナントには出ていってもらいたいと思っているのです。

会話

なるほど。
しかし、社長が覚醒剤で捕まった、というだけでは、ちょっと法的に出ていってもらえるかどうか、微妙ですね。

しかしですね、うちとテナントとの間の賃貸借契約書には、契約の解除事項として、「借主に本件建物の他の居住者等に危険又は迷惑を及ぼす行為があったとき」という定めがあります。
今回、これを理由に契約を解除できませんか?

会話

それが、建物の賃貸借契約というのは、特殊な契約でして、形式的に契約書の条項に違反している、というだけで解除ができるとは限りません。

と言いますと??

会話

建物の賃貸借は、法律で借主が手厚く保護されていて、当事者間の信頼関係の破壊が破壊されたと言える事情があって初めて解除ができるのです。

とは言え、代表者が覚醒剤で捕まっているような借主ですので、私としてはこの借主に対して信頼ゼロです。それでも解除はできないのでしょうか?

会話

この点、信頼関係の破壊は、そういった内心や主観の問題ではなく、当事者間の状況によって客観的に判断されます。
本件の場合、たとえばこの代表者に反社会的勢力との関係があったとか、本件で貸しているオフィスが覚醒剤取引の現場になっていたような事情があれば、客観的に信頼関係の破壊があったとされる可能性が高いでしょう。

 

簡単に解約できない賃貸借契約の特殊性

会社のオフィスの

賃貸借契約などでは、

借主に建物の使用状況

について問題があった場合、

貸主が契約を解除する

ことができる、

という条項を入れている

場合があります。

 

 

たとえば、

・本件建物の他の居住者に危険又は迷惑を及ぼす行為があったとき
・借主に共同生活を乱す行為があったとき

といった条項です。

 

 

そして、

現実に、

借主の側でこれに該当する

行為があった場合に、

貸主が賃貸借契約を

解除できるかというと、

そうは行かないのです。

 

 

建物の賃貸借契約というのは、

借地借家法という借主を

保護するための法律が

適用されます。

 

 

そして、

貸主が契約の解除を行うためには、

客観的にみて当事者間の

信頼関係が破壊されている

という事情が必要です。

 

 

これは、

一般的には、

物件を貸す貸主の方が、

借りる借主よりも強い立場に

立っているため、

弱い立場にある借主を

保護するというのが、

この借地借家法の趣旨なわけです。

 

 

したがって、

貸主から契約を解除するには、

それなりのハードルが

あるわけです。

 

 

いくら、

上記のような迷惑行為を契約の

解除事由として契約書に

定めていたとしても、

借主の側で軽微な違反が

あっただけでは、

信頼関係の破壊が

あるとは言えず、

解除はできないわけです。

 

 

そこで、

上記の例のように、

借主の会社の代表者が、

覚醒剤で捕まったという事情は、

信頼関係の破壊には

当たらないのでしょうか?

 

 

この辺はかなり

微妙だと思います。

 

 

単に借主の会社の社長が

覚醒剤で捕まった、

というだけでは、

いまだ信頼関係の破壊には

当たらないとされる可能性も

高いと思われます。

 

 

それは、

結局、

覚醒剤で逮捕された

という事実だけでは、

具体的に他の居住者や

賃貸人に何か具体的な実害が

発生するわけではない、

という価値観が

背景にあります。

 

 

 

 

 

例外的に解除ができる場合とは??

ただし、

社長が覚醒剤で逮捕された

事情に加えて、

以下のような事情が加われば、

客観的に信頼関係が

破壊されている、

と判断される可能性が

高いでしょう。

 

 

たとえば

・このオフィスビルが、クリーンなイメージを売り物にしていて、それを表示している場合
・逮捕された社長が、反社会的勢力との繋がりがあった場合
・ このオフィスが覚醒剤取引の現場になっていたような場合

などです。

 

 

いずれにしても、

不動産賃貸業を営む際には、

借りる人がどんな人なのか、

というリスクは常に

付きまといます。

 

 

こうしたトラブルを

予防するためには、

やはり借主との間の

賃貸借契約書をきちんと

完備しておくことです。

 

 

そして、

禁止行為や解除事由として、

たとえば

建物内での薬物使用など反社会的な行為を行うこと

などを規定しておくことです。

 

 

さらに、

賃借人が暴力団関係者や

反社会的勢力と繋がりが

あった場合に、

契約を解除できるとする、

いわゆる反社会的勢力排除条項も

きちんと備えておくことです。

 

 

こうした条項を入れておいた方が、

ない場合よりは、

契約の解除がしやすくなる

ことになります。

 

 

そんなわけで、

リスクに備えてやはり

契約書はきちんと整備

しておきたいものですね。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

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最新動画 

今回は、社員を守るために、会社が講じるべき「カスハラ対策」5選、というテーマでお話しています。

 

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、午前中は自宅で仕事、お昼は二子玉川に買い物に行って、その足で事務所へ。
午後は、新規のお客様とオンラインで法律相談などでした。
夜は息子と2人だったので、夕飯を担当。
寒くなってきたので、豚汁が食べたくなって作ったのですが、なんと息子の給食とかぶっていたことが発覚。
献立を考えるときには、息子の給食のメニューもチェックすべきでしたね(反省)

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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