社員が長期間会社を
無断欠勤して行方不明に。
この社員を解雇できたとしても、
この社員が住んでいた社宅に
荷物を残していた場合、
会社はこの荷物を勝手に
処分してしまって
良いのでしょうか?
(今日の「棒人間」 勝手に部屋に入る行為は犯罪??)
<毎日更新905日目>
先日、
建設会社を営むA社長より、
ご相談がありました。
実は、3年前から雇っていたうちの社員が、もう2ヶ月も会社に来ておらず、連絡もつかず、行方不明なんです。
なんと、それは心配ですね。
私としても、この社員の実家に連絡したりとか、いろいろと連絡を取るための手は尽くしたのですが、どうしても連絡がとれないのです。
なるほど、それは困りましたね〜。
困ったことに、この社員には、うちの会社が借り上げたアパートを社宅にして住まわせていて、その社宅の彼の部屋に、彼の個人的な荷物が残されたままなんです。
それは、さらに困りますね。
うちとしては、もうこの社員が戻ってこないのであれば、退職してもらったことにして、新しい社員を雇いたいところです。
確かに、それはそうでしょうね。
また、彼が残していった社宅の荷物も邪魔なので片付けたいのですが、こういう場合は、こっちで勝手に処分してしまって構わないのでしょうか?
実は、そこが法律的には非常に面倒なところでして。
まず、今のままではその社員はまだ御社に在籍しているという形になっています。
ですから、まずこの社員を解雇するという手続きが必要になってきます。
しかし、その社員と連絡も取れないのに、「解雇」なんてできるのでしょうか?
この場合、ちょっと例外的ですが、裁判所の「公示による意思表示」という手段を使って、解雇の通知を行うことができます。
なるほど。
しかし、そうなると、社宅に残された彼の個人的な荷物はどうなるのでしょうか?
こちらが非常に面倒なのですが、勝手に部屋に入って処分してしまうと、あとで住居侵入とか、器物損壊とか、民事上の不法行為などに当たる可能性があります。
それじゃあ、いったいどうしたら良いのでしょうか?
ここは面倒でも、正攻法で行くしかありません。
まず、その社員に対して、建物明渡の裁判を起こし、判決をとって、強制執行の手続きをとって中の荷物を競売にかける、という手続きを踏まなければならないのです。
そ、それはかなり面倒ですね。
確かに、面倒ではありますが、相手が行方不明なので、普通の裁判手続きに比べれば時間もかかりませんし、通常は費用もそれほどかからないと思われます。
後でその社員からクレームをつけられて問題になる可能性もありますので、やはりここは面倒でも正攻法で行くべきです。
雇っていた社員が
無断欠勤が続いた挙げ句、
行方不明になってしまう
というケースがあります。
この場合、
四方八方手を尽くして探したものの、
どうしてもその社員と連絡が
取れなかった場合、
会社が勝手に退職扱いとして
しまいたいところでしょう。
しかし、
形式的には、
会社とその社員との間には
「雇用契約」が残っていて、
その社員はまだその会社の
社員としての地位を
有しています。
そのような状況で、
会社が勝手に「退職扱い」
とすることはできません。
満々が一、
後日この社員が出勤してきた場合、
この「退職扱い」をめぐって
争いになる危険があります。
そこで、
社員が行方不明で長期間に及ぶ
無断欠勤状態となっている場合でも、
会社はその社員に対する
「解雇」の意思表示を行う
必要があります。
ただ、
相手が行方不明であるのに、
どうやって「解雇」の意思表示を
行うのか?
このような場合には、
裁判所の「公示による意思表示」
という方法があります。
これについては、
以前にこのブログで書いた
下記の記事をご参照ください。
さて、
社員に対する「解雇」の
手続きは終了したとして、
その社員が住んでいた
社員寮の中に残された荷物を
どうするか?
会社としては、
残された荷物は、
その社員が引き取って
くれないのであれば、
さっさと処分して、
新たに入る社員の寮として
使いたいと考えるのが
普通でしょう。
そこで、
会社としては、
その社員の寮の部屋に
合鍵を使って入り、
その社員の荷物を処分
してしまっても
良いのでしょうか?
実は、
これは「自力救済」と言って、
法律のルールではできない
ことになっています。
こうした「自力救済」
を強行すると、
刑法上の住居侵入罪や
器物損壊罪に問われる
恐れがあります。
また、
民事上も不法行為に
当たりますので、
万が一その社員本人が
戻ってきた場合には、
会社が法的責任を
追及される恐れがあります。
誠に面倒ではありますが、
このようなケースでは、
やはり正攻法で行かざるを
得ません。
「正攻法」というのは、
法律の定めるルール・
手続きに則ってことを
進めていく必要がある、
ということです。
そこでまず、
会社はこの社員を被告として、
寮として貸している部屋の
明渡しを請求する
裁判を起こします。
ここでまた、
行方不明の相手に対して
裁判を起こせるのか?
という問題が生じます。
この点は、
上記の「解雇の通知」と同様に、
裁判所の「公示送達」という
方法を用いることができます。
「公示送達」というのは、
一定の要件をクリアーした場合には、
裁判が起こされたこと等を
裁判所の掲示板に掲示することで、
その裁判の訴状等が被告に
送られたものと扱うという
制度のことです。
これによって、
行方不明の社員に対して
有効に裁判を起こし、
建物明渡しを命じる
判決をもらいます。
その上で、
この判決をもとに強制執行の
申し立てを行います。
そして、
中の荷物を競売によって
換価してもらい、
部屋の明渡しを受けることが
できるわけです。
このように、
「正攻法」は非常に面倒な
手続きを取らなければなりません。
ただ、
相手が行方不明の場合は、
「裁判」と言ってもそれほど
時間はかかりません
さらに、
この社員との「雇用契約」の中で、
身元保証人を取っていた場合は、
裁判や強制執行にかかった
費用をこの保証人に請求する
ことも可能になってきます。
やはり「自力救済」を行うと
上記のようなリスクがありますので、
面倒でもここは「正攻法」で
行かざるを得ないのが
現実なのです。
こんなときは、
やはり勝手な判断で動かずに、
必ず弁護士などの専門家に
相談するようにしてください。
それでは、
また。
裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
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今回は、社員を守るために、会社が講じるべき「カスハラ対策」5選、というテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。