社員が行方不明なので、
「無断欠勤」を理由に
解雇することはできる
でしょうか?
さらに、
行方不明の社員に対して、
どのようにして「解雇通知」
を送ったら良いのでしょうか?
(裁判所に掲示される「公示送達」)
<毎日更新720日目>
先日、
ある会社の社長さんから
ご相談を受けました。
うちの社員で、もう1ヶ月も出社していない者がおりまして。
1ヶ月も??
いったいどうされたんです?
それが、どうもよくわからないのです。
電話をかけてもいつも出ないし、連絡がつかないんです。
その社員さんが住んでいるご自宅には行ってみましたか?
はい、その社員が住んでいるはずのアパートに行ってみたのですが、どこかに勝手に引っ越してしまったようで、アパートはもぬけの空でした。
なるほど。
社長として、何か思い当たるフシはありますか?
そうですね〜。
普段から割と、仕事がキツイから辞めたい、と言っていたようですが・・・。
なるほど。
しかし、本人から特に退職届などはないのですよね?
そうなんです。
それは出ていないのです。
このような場合、この社員を無断欠勤ということで、解雇はできるのでしょうか?
そうですね。
ただ、解雇の通知はきちんと相手に届かなければいけません。
しかし、相手は行方不明ですし、解雇の通知をどこに送って良いのかわかりません。
こういう場合、まずはその社員さんの住民票を調査します。
もし引っ越していれば、住民票が変わっている可能性がありますので、そちらに送ることになります。
なるほど。
ただ、住民票を移していなくて、新しい住所がわからないときは、どうすれば良いのでしょうか?
この場合は、裁判所の「公示送達」という方法を使って、解雇の通知を行います。
「公示送達」というのは、どんな制度ですか?
相手が行方不明で通知ができないときに、裁判所に申請をして、裁判所の掲示板に解雇の通知の文書をはり出してもらうことで、相手方に通知が届いたことにする、という制度なんです。
行方不明になって連絡が
取れない社員を、
「無断欠勤」を理由に
解雇できるでしょうか?
この場合、
まずは、
「無断欠勤」の期間が
問題となります。
裁判例では、
「無断欠勤」が2週間以上
続いているケースで、
解雇を有効と認めたものが
あります。
逆に言えば、
それには満たない、
たとえば3〜4日程度の
「無断欠勤」では、
解雇は難しいということに
なります。
また、
「無断欠勤」が2週間以上
続いていたとしても、
この社員の無断欠勤の原因が、
会社の職場環境にあるような場合は、
解雇ができない場合があります。
たとえば、
職場内でパワハラや
セクハラがあって、
それが原因で社員が
無断欠勤をしているようなケース。
このような場合に、
会社が「無断欠勤」を理由に
解雇すると、
後々「不当解雇」と判断される
可能性が高いでしょう。
また、
そうでなくても、
社員の「無断欠勤」の原因が、
うつ病などの精神疾患である
場合です。
この場合も、
まずは社員に休職をさせて、
治療させることが重要であり、
「無断欠勤」を理由に解雇
してしまうと、
やはり「不当解雇」と
判断されるでしょう。
こうしたケースに当たらず、
もっぱら社員の原因で
「無断欠勤」が2週間以上
続いている、
という場合は、
解雇を視野に入れて
行動することになります。
この場合、
社員に対して「解雇通知」
を送ることになります。
「解雇」というのは、
労働契約を一方的に終了させる
という内容の意思表示であり、
この意思表示は相手方(社員)に
到達する必要があります。
つまり、
「解雇通知」という文書等を
確実に社員に届ける必要がある、
というわけです。
それでは、
住んでいる場所もわからない、
行方がわからない相手に、
どうやって「解雇通知」を
届ければ良いのでしょうか?
まず、
弁護士が受任した場合は、
この社員の人の住民票を
調査します。
そして、
住民票が新たな住所に
移転されていれば、
そちらに「解雇通知」を
送ることになります。
もし、
住民票が移転されていない場合は、
「解雇通知」の送り先が
わからない、
ということになります。
その場合は、
裁判所の「公示送達」という方法を
用いることができます。
「公示送達」というのは、
相手が行方不明で通知ができないときに、裁判所に申請をして、裁判所の掲示板に解雇の通知の文書をはり出してもらうことで、相手方に通知が届いたことにする
という制度。
まぁ、
裁判所の掲示板なんて、
誰も見ていませんし、
その社員がそれを見る可能性は
限りなくゼロに近いでしょう。
しかし、
それでも、
「公示送達」、つまり、
裁判所の掲示板に解雇通知の文書を
はり出すことで、
法律上も通知が相手方に
届いたことにしてしまう、
という制度なのです。
もちろんこの制度は、
相手方の行方がわからず
通知ができない、
という例外的な場合に限って
使うことができる制度です。
社員が行方不明で連絡がつかない、
という場合も、
この「公示送達」という方法を
用いることで、
「解雇通知」を行うことが
できるというわけです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
こんな、
裁判所の手続きを使うのは
面倒なので、
書類上で解雇したことに
してしまう、
ということはできないでしょうか?
しかし、万が一、
後で社員が出社してきたときには、
有効な解雇の手続きが
なされていないので、
やはり裁判などで「不当解雇」だ
と争われる危険があります。
私の弁護士としての使命は、
中小零細企業のトラブルを
「裁判沙汰」を避けるためにも、
面倒でもきちんとした「解雇」の
手続きをしておくことは重要です。
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今回は、中小企業の社長が「熟年結婚」?思わぬ落とし穴に注意、というテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。