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渋谷の弁護士吉田悌一郎

会社の従業員と役員は、法律上どう違う?

会社法関係

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会社の従業員・社員と、

取締役などの役員は、

どう違うのでしょうか?

 

 

その法律上の地位の違いや

問題点などをまとめてみました。

 

 

 

 

(今日の「棒人間」 従業員と役員、どっち??)

 

<毎日更新937日目>

会社役員と従業員はどう違うのか?

私の顧問先のA社長から、先日こんなご質問をいただきました。

弊社のある従業員を、今度取締役に昇格させようと思うのですが、法律上何か気をつけるべきことはありますか?

従業員、

社員というのは、

会社から雇われて給料を

もらって働く人のことを

言うわけです。

 

 

他方で、

取締役は会社の役員という立場で、

いわば会社の経営に携わる

人のことを言います。

 

 

ただ、

これだけでは抽象的で、

法的にどんな違いがあるのか

よくわかりませんね。

 

 

今回は、

この従業員と役員の法的な

違いについてお話ししたいと

思います。

 

 

会社との間の「契約」の違いからくる立場の違い

従業員や社員は、

会社との間の契約関係は、

「雇用契約」ということに

なります。

 

 

「雇用契約」というのは、

会社に対して労務を提供し、

その対価として賃金

という給料をもらう、

という契約です。

 

 

従業員や社員は、

雇い主である会社に

従属した立場で、

会社から具体的な

業務上の指揮命令を

受けて働きます。

 

 

当然、

会社から勤怠管理も

受けることになりますので、

出勤時間や退勤時間、

勤務時間などで会社の

決めたルールに従う

必要があります。

 

 

他方で、

取締役などの

会社の役員は、

会社との間の契約関係は、

「委任契約」です。

 

 

「委任契約」というのは、

やはり会社から一定の

仕事を依頼されて行う点は

同じですが、

雇用契約のように

雇い主に従属している、

というわけではありません。

 

 

もっと自由な裁量があり、

会社から細かい勤怠管理を

受けることもありません。

 

 

なお、

取締役などの役員は、

株主総会によって

選任されます。

 

 

役員は残業代請求ができるか?

従業員・社員は、

会社と雇用契約を

結んでいますので、

労働基準法という労働者保護の

法律が適用されます。

 

 

1日の労働時間が決められており、

それを超える場合には、

法律が要求する割増賃金(残業代)

を支払う必要が出てきます。

 

 

他方で、

取締役などの役員の報酬は、

基本的に株主総会で

決められます。

 

 

役員は、

原則として労働基準法の

適用がありませんので、

そもそも「労働時間」

という概念がなく、

当然残業代も請求

できません。

 

 

クビにされやすいのはどっち?

従業員・社員は、

会社と雇用契約を

結んでいますので、

労働契約法の適用があります。

 

 

そして、

労働契約法では、

会社が社員を「解雇」する

ことを厳しく規制しており、

具体的には、

①解雇の客観的合理的理由
②解雇の社会的相当性

といった要件があります。

 

 

そのため、

事実上、

会社が社員を解雇することは

容易ではありません。

 

 

他方で、

取締役などの会社役員は、

株主総会でいつでも

解任することができる、

とされています。

 

 

解任するには、

特に上記のような理由は

不要とされています。

 

 

ただし、

受任者である役員の不利な

時期に契約を解除した

場合などは、

役員が被る損害を賠償

しなければならないと

されています。

 

 

この点、

取締役などの役員は

任期が定められていますが、

その任期の満了時期までの

役員報酬分を損害として

賠償することが多いようです。

 

 

会社に対する賠償責任は?

たとえば、

従業員・社員が、

業務上会社に損害を

与える行為をした場合、

たとえば会社の高価な備品を

破損したような場合、

会社に対する損害賠償

の義務を負います。

 

 

ただし、

その場合に、

会社は被った損害の

全額を賠償請求できる、

というものではなく、

通常は損害の2割から3割

程度に制限されます。

 

 

他方で、

取締役などの役員は、

善管注意義務や忠実義務といった、

経営者として会社に対する

義務を負っています。

 

 

役員がこうした義務に違反して、

会社に損害を与えた場合には、

会社に対する損害賠償の

義務を負います。

 

 

この場合には、

上記の従業員の場合のように、

賠償額が制限される

ということは基本的に

ありません。

 

 

 

 

「取締役」の肩書きだけはあるけれど・・・

このように、

法律上従業員・社員と、

取締役などの役員は

違いがあります。

 

 

簡単に言えば、

従業員・社員は、

会社に従属していて、

会社の指揮命令や勤怠管理を

受ける代わりに、

法律によってその地位が

強く保護されています。

 

 

他方で、

取締役などの役員は、

働き方はある程度

自由な裁量があり、

会社の勤怠管理などを

受けません。

 

 

その代わりに責任は重く、

地位も従業員ほど強く

守られているわけでは

ありません。

 

 

ところが、

世の中には、

「取締役」という

肩書きはありつつも、

その働き方の実態が

ほとんど従業員・社員と

変わらないという場合が

あります。

 

 

実際に、

従業員と取締役の両方の

地位を兼ね備えて、

「従業員兼務役員」と

いう立場の人がいます。

 

 

これは、

いわば上記で述べた

従業員としての地位と、

役員としての地位の両方を

持った立場の人のことを

言います。

 

 

この「従業員兼務役員」は、

従業員の法的地位と、

役員の法的地位を

併せ持っています。

 

 

ですから、

上記の善管注意義務や忠実義務、

会社に対する賠償責任などは、

役員としての義務や責任を

っています。

 

 

他方で、

株主総会で役員を

解任されたとしても、

従業員としての地位が

残っています。

 

 

問題なのは、

こうした「従業員兼務役員」

ではなく、

形式上「委任契約」のみの

役員とされていながら、

実態は従業員のような

働き方をしているケース。

 

 

すなわち、

たとえば、

「取締役」でありながら、

経営に関する決定権限は

ほとんどなく、

逆に出勤時間や勤務時間の

勤怠管理や業務命令を

受けているような場合です。

 

 

時々、

「雇用契約」の脱法手段として、

形ばかり「取締役」にする

という扱いがなされることが

あります。

 

 

「取締役」なので、

残業代は不要だし、

気に入らなければいつでも

「解任」できる、

というわけです。

 

 

しかし、

このような場合は、

「委任契約」だけではなく、

実態として「雇用契約」が

成立していると判断される

可能性があります。

 

 

契約というものは、

原則として、

形式的な「契約書」の

形で決められるものではなく、

あくまでその実態を

見て判断される部分も

あるわけです。

 

 

ですから、

こうした「雇用契約」の

厳しい規制を逃れる目的で、

名ばかり「取締役」を置く、

という方法は、

後々問題となる可能性が

あると思われます。

 

 

従業員・社員との

トラブルを予防するという

観点からは、

その人の地位が従業員なのか、

役員なのか、

はたまたその双方の

地位を持つ「従業員兼務役員」

なのか。

 

 

こうした点をはっきり

させておく必要が

ありますね。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

 

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今回は、名刺に「株式会社」と書いてあるからといって、安易に信用してはいけません!というテーマでお話ししています。

 

 

 

 

 

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昨日は、午前中は自宅で仕事、ブログなど。
お昼は、家族で地元のもんじゃ焼きの店に食べに行きました。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
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Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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