消費税も含めて、
取引先に対して代金の
請求書を送ったのに、
消費税分だけ差し引いて
支払ってきた。
こうした一方的な
値引き要求をされる
ことがあります。
このような場合の
法的な対処法について
まとめてみました。
(今日の「棒人間」 力関係を背景とした一方的な要求をする人)
<毎日更新990日目>
たとえば、
代金300万円の
仕事を受注して、
仕事をしたとします。
その後、
10%の消費税を乗っけて、
330万円の代金請求を
取引先に行いました。
そのとき、
取引先から、
消費税分の30万円はおまけしといてや。
300万円だけ払うわ。
と言われてしまった。
あるいは、
そんなことも言わずに、
しれっと300万円だけ
振り込んでくる場合も
あります。
こちらは、
あくまで消費税こみで
330万円の請求書を
送っているにもかかわらず、
です。
当初、
消費税こみで330万円
という代金で合意していた、
そのような契約が
成立していたと言えれば、
勝手に消費税分30万円を
差し引く取引先の行為は、
法的に見れば契約違反であり、
債務不履行です。
契約で決まった金額を
勝手に値引きする
などというのは、
本当に腹立たしい話で、
思わず
訴えたやる!!
と言いたいところ。
しかし、
不足分の30万円の
支払いを求めて、
裁判を起こすというのは、
現実的ではありません。
弁護士に依頼すれば、
経済的にペイ
しないどころか、
足が出てしまうでしょう。
しかし、
世の中には、
力関係や優越関係を利用して、
力の強い企業が、
自分より力の弱い
企業に対して、
こうした嫌がらせを行う
ことがあります。
こうした嫌がらせに対して、
何か有効な対抗策は
ないものでしょうか?
まず、
下請法という
法律があります。
この下請法で、
取引相手が「親事業者」、
自社が「下請事業者」に
該当すれば、
この下請法の規制が
かかります。
典型的には、
元請け、下請けの
関係にあるような
場合です。
具体的には、
下請法では
下請事業者に
特に落ち度がない
にもかかわらず,
親事業者が
下請代金の金額を
減額する行為が
禁止されています。
さらに、
独占禁止法という
法律があります。
この法律でも、
優越的な地位に
あることを利用して、
取引先に対して、
「正常な商慣習に
照らして不当に」
代金を減額したり
することを、
「不公正な取引方法」
として禁止しています。
これを、
独占禁止法上の
「優越的地位の濫用」
と言います。
下請法や独禁法で、
こうした行為を
禁止しているのは、
理由があります。
元請けと下請けの関係
などが典型例ですが、
事実上力の優劣関係が
ある企業があります。
その場合、
力の弱い立場にある企業は、
力の強い立場にある企業
から不当なことを要求されても、
それを断れずに
従わざるを得なくなる、
ということが世の中には
往々にしてあります。
そこで、
下請法や独禁法では、
上記のように、
力の強い企業が、
力の弱い企業に対して、
取引上の不利益を強要する
などの行為を禁止している
わけです。
上記の代金の
一方的な値上げなどは、
こうした取引上の不利益を
強要する行為の典型例であり、
禁止されています。
そして、
もし違反があった場合には、
公正取引委員会が
是正勧告を出したり、
企業名を公表したり、
罰金や課徴金といった
経済的ペナルティーを
課したりすることができる、
とされています。
ですから、
冒頭の事例でも、
わずか30万円の不足代金の
支払いを求めて裁判を
起こすよりは、
こうした公正取引委員会を
動かす方が現実的な対策に
なり得ると思われます。
消費税分の値引き
ということに関しては、
昨年始まった
「インボイス制度」との関連で、
公正取引委員会が見解を
公表しています。
それによると、
消費税の免税事業者である
取引先に対して、
消費税相当額を取引価格から
引き下げるなどと一方的に
通告することは、
独禁法や下請法上問題となるおそれがある
と述べています。
ただ、
ここで実務上、
一点注意しておかなければ
ならない問題があります。
それは、例えば、
冒頭の例で、
代金額を消費税込みで330万円
とする契約が成立していたこと。
もっと言えば、
契約が成立していたことを
証明する手段を持っている
ことです。
そもそも、
親事業者には、
下請法で代金額などを
記載した書面を交付する
ことが義務づけられて
いますが、
現実には守られて
いないことも少なく
ありません。
口頭で契約が
成立していたとしても、
それを証明する手段がないと、
支払いを請求する側
にとっては大変不利に
なります。
代金額の合意を
証明する手段がないと、
取引先が契約に違反して、
不当に値引きを
強要したこと自体を
証明するのが
難しくなるからです。
そこで、
やはり確実なのは、
契約に当たっては
きちんと契約書を作ること、
これに勝る対策は
ありません。
ただ、現実には、
取引先との力関係などもあり、
契約書を作ることが
難しい場合もあるでしょう。
その場合には、
代金額も含めて、
合意した契約内容を
できる限りテキストの
データで残すこと。
たとえば、
相手方とのメールや
メッセージのやり取り
などを保存して
残しておくことです。
取引先の不当な値引き
に対抗するためには、
こちらもそれなりの
知識を持ち、
準備をしておくことが
必要です。
ビジネスをするにあたっては、
契約書を作る習慣、
合意内容を証拠に残す
工夫が必要だと思います。
それでは、
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
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【私のミッション】
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。