会社の全株式を持っている社長が、重度の
認知症になってしまうと、会社の事業に支障を
来してしまいます。
そうなってからでは、事業承継も大変に面倒な
手続きが必要です。
そうならないための備えとして、「民事信託」という
制度について、今日はお話しします(^^)
(いざというときの「備え」としてのヘルメット)
<毎日更新533日目>
少し前ですが、中小零細企業において、会社の全株式を
持っている社長が、重度の認知症になってしまった場合の
リスクについて書きました。
社長が重度の認知症になってしまうと、もはや会社の業務を
行うことができなくなります。
そこで、この社長には代表取締役を退任してもらって、
新たな代表取締役を選任する必要があります。
ところが、取締役の選任手続きを行うためには、
株主総会の決議が必要となります。
認知症になった社長が会社の株式を全部所有していたとしたら、
この株主総会を開催することもできなくなります。
そこで、まずは社長の持っている株式を後継者に譲渡する手続きが
必要となるわけですが、株の所有者である社長が重度の認知症では、
この株式譲渡の手続きもできません。
そこで、このようなケースでは、社長について家庭裁判所に
成年後見開始審判の申立てを行い、社長の後見人を選任
してもらう必要が出てきます。
そして、家庭裁判所から選任された後見人が、認知症になった社長に
代わって、株式を後継者に譲渡する手続きを行います。
後継者が株式を取得すれば、あとは株主総会を開催して、
後継者が新たな代表取締役に就任することが可能になります。
このように、何も対策を講じていないと、全株式を持っている
社長が重度の認知症になってしまった場合は、非常に面倒な
手続きを強いられることになってしまいます。
こういう話を先日のブログに書いたところ、
それならば、このような会社では、日常的に具体的にどんな対策を
講じれば良いのか?
というご質問をいただきました。
この社長に、たとえばお子さんなどの後継者が
おられる場合には、早めに事業承継の準備を
進めておく必要があります。
ただし、社長が持っている株式をお子さんに贈与
すると、株式の価値によっては莫大な贈与税が
課税されてしまいます。
それを防ぐための1つの方法として、民事信託
という方法があります。
信託というのは、委託者が信託契約によって、
信頼できる人(受託者)に対して、不動産や株式
などの財産を移転します。
そして、受託者は、委託者が設定した信託目的にしたがって、
受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などを
する制度です。
この場合、具体的には、まだ社長が元気なうちに、後継者と
信託契約を結び、会社の株式などの財産を後継者に移転します。
この場合には、社長が委託者かつ受益者、後継者が受託者
ということになります。
こうしておけば、仮に社長が重度の認知症になって
判断能力がなくなっても、受託者である後継者が、
株式の議決権を行使することができます。
この場合は、後継者が株主総会で議決権を行使し、
認知症になった社長を退任させて、後継者である
自分を新たな代表取締役に選任することが可能に
なります。
つまり、なにも対策を講じなかった場合に比べて、
事業承継がかなりスムーズに進みます。
また、将来社長が亡くなるときの対策としては、
これも社長が元気なうちに行う必要がありますが、
会社の株式を後継者(子ども)に相続させる旨の
遺言書を作成しておくという方法があります。
遺言書を使った事業承継については、コチラの記事を
参考にしてください。
⏬⏬⏬
いずれにしても、一番大切なポイントは、社長がまだ
元気なうちにしかるべき対策を講じておくことです。
いざというときの備えとしての民事信託、
手遅れになる前にぜひ一度ご検討ください。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
中小零細企業の場合、社長の
という感覚もあり、株式の譲渡や事業承継が
スムーズに進んでいないケースが見られます。
しかし、「手遅れ」になってしまうと、最悪の場合
会社の事業に支障を来してしまいます。
備えあれば憂いなし、早めの対策が大切ということは、
ぜひ頭に入れておいてください!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。