特に仕事もないのに
朝始業時間より早くきたり
終業時間より遅く帰る社員がいます。
しかし
会社がこうしたことを放置していると
後で多額の残業代を
請求されるリスクがあります。
(今日の「棒人間」 働いていないのに残業代??)
<毎日更新1086日目>
働いていない時間の残業代を請求されるなんて、そんなバカな!?
実際にあった話ですが
A社のある社員で
始業時間よりも早く出社して
終業時間を超えて
帰っている人がいました。
この社員は
そんなに働いていたのか?というと
どうもそうではありません。
実はこの人
あまり家庭がうまく
いっていなかったらしく
家に居場所が
なかったようです。
朝早く家を出て
会社に来て何をして
いるのかといえば
新聞を読んだり
パソコンを開いて
ネットサーフィンをしたり。
夜もなかなか帰らず
ダラダラと他の社員と
おしゃべりなどをして
時間をつぶして
いたようです。
A社では
この社員のこうした
行動に対して
特に注意することもなく
黙認していました。
当然ですが
この社員が始業時間前に来たり
終業時間後に帰っても
残業代は一切支給
していませんでした。
ちなみに
A社ではタイムカードはなく
労働時間も各自で管理し
申告するというスタイルでした。
その後
ちょっとしたトラブルで
この社員はA社を退職することに。
ところが
その2ヶ月後
この社員からA社に対し
未払残業代の支払いを求める
裁判所からの書類が
届いたのです。
どういうことかと言うと
どうもこの社員は
特に仕事をしていたわけでもない
この始業時刻前の時間や
終業時刻後の時間を計算し
残業代を請求してきたようです。
A社としては
まさに「寝耳に水」という状態ですが
この社員は
社内のパソコンのログイン
ログアウト時刻などを元に
自分の残業代を計算し
裁判で請求してきたわけです。
A社も
裁判において
この社員は始業時刻前や終業時刻後は
仕事なんかしていない
と必死に裁判で訴えました。
ところが
裁判の証拠として出されたものは
この社員が出したパソコンのログイン
ログアウト時間の記録のみ。
次第に裁判でA社の旗色は悪くなり
結局A社は不本意ながら
相当額の和解金をこの社員に
支払うことを余儀なくされました。
このように
特に仕事をしているわけではないのに
始業時刻前や終業時刻後も
社員が会社にいる
というケースがあります。
こうした時間は
そもそも「労働時間」と
言えるのでしょうか?
この点
法的な「労働時間」というのは、
をいうとされています。
さすがに
いくら会社のデスクに座っていても
業務に関係なく新聞を読んでいたり
同僚とおしゃべりをしている時間は
「会社の指揮命令下に置かれた時間」
とは言えないのが普通でしょう。
ただ、そうだとしても
「裁判」というものは
「証拠」がものを言います。
よく
正しいことを裁判官に言えば
わかってくれるはず
という人がいますが
完全に誤解です。
裁判官は
あなたの言うことよりも
客観的な「証拠」を信用します。
いくら会社が
あの社員は、会社に早くきたり、遅く帰ったりしているが、仕事はしてないんだ!
と叫んでも
それを裏付ける
証拠がありません。
裁判所に証拠として
提出されているのは
その社員が出した始業時間前の
パソコンのログイン時間の記録。
そして
終業時刻後のパソコンの
ログアウト時間の記録のみ。
つまり
客観的には
社員が朝始業時刻よりも前に来て
夜終業時刻よりも遅く帰っている
ことだけが明らかになります。
そうなると
やはり
会社側にとっては
証拠上とても不利に
なってしまうのです。
こうなってしまうのは
そもそもこのA社が
社員の労働時間を適切に把握し
管理していなかったことが
最大の問題です。
A社としては
社員のことを信頼して、自由にさせていたのに、ひどい!
ということになるでしょう。
しかし
世の中では
社員が何らかのトラブルで
会社を退職した後になって
多額の残業代請求をしてくる
というケースがよくあります。
残念ながら
そうなってしまっては
後の祭りです。
そもそも、法律上
会社には自社の社員の労働時間を
把握する義務があります。
ところが
実際には
上記のA社のように
自社の社員の労働時間をきちんと
記録や把握をしていない
会社というのは結構あります。
会社が自らの義務を怠って
社員の労働時間を把握していないと
上記のとおり
社員と残業代をめぐるトラブルになったとき
決定的に不利になってしまいます。
最近では
テクノロジーの進化によって
残業代請求をする側の社員の
労働時間の証明手段は
高度化しています。
上記のパソコンのログイン・ログアウト時間
の記録などの他
最近では
スマホの行動履歴によって
残業時間を立証した
というようなケースもあります。
ですから
やはり
会社側が自衛するためにも
社員の労働時間を適正に把握し
管理しておくことは非常に重要です。
この点
厚生労働省が
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
というものを
公表していますので
こちらも参考にしてみてください。
タイムカードで管理する他
さまざまな労働時間の管理・把握
の指針が示されています。
いずれにしても
社員との「裁判沙汰」のリスクを
避けるためにも
社員の労働時間はきちんと
管理・把握しておきたいものです。
それと
やはりそもそも仕事も
しないのに朝早く来たり
夜ダラダラ残っていたり
ということを会社として
放置すべきではないでしょう。
社員にダラダラ残業や
不要な残業をさせない
ことも重要です。
残念ながら
「信じてたのに!」というのは
通用しないこともあるのです。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。