「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【洗剤11個の窃盗?】「懲戒解雇」は重すぎるとの判断

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社員の犯罪行為を

理由にした懲戒解雇。

 

 

しかし

 

 

何らかの犯罪行為があれば懲戒解雇が

有効になるとは限りませんので

注意が必要です。

(今日の「棒人間」 窃盗で懲戒解雇はアリか?)

 

<毎日更新1112日目>

洗剤11個を「窃盗」したとして、懲戒解雇

少し前に

非常に興味深い裁判所の

判決がありましたので

 

 

今日はその話題を。

 

日経電子版・「1人1個ご自由に」持ち帰りクビの銀行員

 

 

 

長野県内のある銀行の女性の行員。

 

 

この女性の勤務先の斜め向かいに

携帯ショップがあり

 

 

店頭近くに「ご自由にお取りください」

と書かれた箱があり

 

 

中に小分けにされた

洗剤の袋が入っていました。

 

 

これは

この携帯ショップが販売促進として

 

 

顧客に対するサービスで

置いていたものでした。

 

 

この女性は

これを1日1個

 

 

合計11個持ち帰って自宅で

使っていたとのことです。

 

 

問題は

 

 

女性が洗剤を取った時間が

まだこの携帯ショップの営業時間前だった

ということです。

 

 

後日

携帯ショップの社員が

この販促物が減っているのを不審に思い

 

 

防犯カメラを確認したところ

この女性行員の姿が確認された

とのことです。

 

 

携帯ショップの店長は激怒。

営業時間外の取得は窃盗!
まさか銀行員が犯人とは、がくぜんとする!!

 

約1ヶ月後

この女性の元に

銀行から懲戒解雇の通知が届きます。

 

 

 販促物の取得は窃盗罪に該当し、明確に法令、社会規範、行動規範に反する

 金銭その他の有価物を扱う銀行職員が決して犯してはならない重大な非違行為

納得の行かないこの女性は

不当解雇だと争い裁判所に

提訴しました。

 

 

 

懲戒解雇は重すぎる、との判決

 

裁判で、この女性は

営業時間前だったとしても

 

 

販促用の洗剤は通行人が

手に取れる場所にあり

 

 

携帯ショップは取得を

許容していたと主張しました。

 

 

そして

自身の行為はそれほど非難される

行為ではないと主張しました。

 

 

これに対し、銀行側は

銀行員という職種の特性もあげて

厳正に処分する必要性を強調しました。

 

 

具体的には

預金者の信用を失えば、取り付け騒ぎが生じて、銀行の資金繰りが破綻する。

そうなると、他の銀行にもリスクが伝播して、銀行が連鎖的に倒産し、金融恐慌が生じる

まあ

少々大袈裟な気がしますが

こんな主張を展開しました。

 

 

この点、判決は

営業時間前に洗剤を持ち帰った女性の行為は、「窃盗罪に該当しうる

とし

厳しい非難に値する

実際に信頼を大きく失墜させた

として

懲戒処分は避けられない

としました。

 

 

他方で

販促物である洗剤がそれほど

高価なものではないことなどから

懲戒解雇を選択したのは重すぎる

として

解雇は無効であると

判断しました。

 

 

 

 

 

 

「犯罪行為」があるから解雇が有効とは限らない?

このブログでも何度か

取り上げていますが

 

 

社員を懲戒解雇するためには

前提として就業規則でその根拠となる

規定を定める必要があります。

 

 

さらに、その上で

実際に社員を解雇するためには、

① 解雇の客観的合理的理由
② 解雇の社会通念上の相当性

という2つの要件を

満たす必要があり

 

 

これを満たさない解雇は

「解雇権の濫用」として

解雇が法的に無効とされます。

 

 

具体的に

どんな場合に解雇が

許されるのかと言えば

 

 

典型例としては社員が不祥事

犯罪行為などを行った場合です。

 

 

よくある例としては

多額の横領(使い込み)

長期間の無断欠勤

 

 

重要機密情報の意図的な

漏えいなどがあります。

 

 

ただし

 

 

実際に

社員が何らかの犯罪行為を行えば

 

 

懲戒解雇が有効になるかと言えば

そうとも限りません。

 

 

確かに

犯罪行為はやっては

いけない行為です。

 

 

ただ

会社がそれを理由にこの社員を

懲戒解雇できるかどうかは

 

 

これまた別問題です。

 

 

この点は

上記の「② 解雇の社会通念上の相当性」

の要件が関係してきます。

 

 

すなわち

いくら犯罪行為を行ったからといって

 

 

社員のやったことと比較して

「懲戒解雇」が重すぎるという場合には

 

 

この「相当性」の要件を満たさない

ということになります。

 

 

この点

上記の判決では

 

 

女性が持ち帰った販促用の洗剤が

それほど高価ではないことを

重視しているようです。

 

 

確かに

営業時間外にこれを持ち帰ることは

 

 

銀行員の行動としては極めて

不適切と言えるでしょう。

 

 

ただ、「懲戒解雇」というのは

懲戒処分の中でも最も重いもので

社員の生活にも重大な影響を与えます。

 

 

ですから

仮に犯罪行為があったとしても

懲戒解雇が有効であるのは

 

 

会社の信用に対する影響が相当重大

であると客観的に評価されるような

場合に限定されている

 

 

と言えます。

 

 

実際の判断は微妙な部分はありますが

犯罪行為があれば懲戒解雇が

有効になるとは限らない

 

 

ということは押さえておいた方が

良いポイントだと思います。

 

 

それでは

また。

 

 

 

 

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今回は、「【ランニングの5つのメリット】走り始めて13年、なぜランニングを続けるのか?」というテーマでお話ししています。

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、軽井沢ハーフマラソンに参加してきました。
例によって練習不足で、走れるか不安でしたが、なんとか完走。走った後も意外にもほとんどダメージもなく。終わった後のビールはやはり格別でしたね。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
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Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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