
90%以上を持つ大株主が
10%以下の少数株主の持つ株式を
強制的に買い取る制度があります。
これは
「特別支配株主の株式売渡請求」と言われる制度で
少数株主との内部対立を解消する効果があります。
(今日の「棒人間」 強制的に株を取り上げる??)
<毎日更新1115日目>
学生時代の親友だった
AさんとBさんは
共同して株式会社を設立。
資本金の100万円は
90万円をAさんが
残りの10万円を
Bさんが用意しました。
そこで
お互いの持ち株比率は
Aさんが90%
Bさんが10%としました。
そして
Aさんが代表取締役
Bさんが取締役に就任。
幸い事業は軌道に乗り
経営は順調でした。
しかし
会社が成長するにつれて
社長であるAさんは
Bさんとの間で意見が対立
することが多くなりました。
Aさんとしては
もっと会社を成長させて
拡大していきたい。
ところが
Bさんは逆で
あまり会社を大きくせず
昔のまま小ぢんまりと仕事が
したいと考えていました。
AさんとBさんは
何度も話し合いましたが
お互いの意見は平行線。
そこで
残念ながら
AさんとBさんは
会社設立10年目にして
共同経営を解消する
ことにしたのです。
何ごとも
くっつくのは簡単ですが
別れる際の後始末は難しい。
Bさんは
Aさんと袂を分ち
取締役を退任して会社を
去ることになりました。
ところが
相変わらず会社の株式の
10%を保有する株主です。
法律上
取締役という会社の役員の地位と
株主としての地位は別物です。
Bさんが取締役を退任しても
株主としての地位は
残るというわけです。
その点が
Aさんにとっては
不安なわけです。
株式会社は
毎年定時株主総会というものを
開催しなければならない
とされています。
Bさんは
上記のとおり相変わらず
株主ですから
株主総会を開催する度に
Bさんに対して総会の招集通知を
送らなければなりません。
それだけではなく
社長であるAさんにしてみれば
決裂して会社を出て行ったBさんが
株主としての権利を盾に
何かを仕掛けてこないか
という不安があります。
10%程度しか持っていない
少数株主であっても
法律上いろいろと権利が
与えられています。
たとえば
会社の会計帳簿の閲覧請求権や
株主総会の招集請求権などもあり
会社の役員の経営責任を
追及することも可能です。
そこで、Aさんは
いっそのこと
Bさんから
Bさんが持っている10%の株を
買い取りたいと申し出たのですが
Bさんからは拒否の回答。
やはりあいつは、会社に対して何かをしようとしている!
A社長の不安はつのるばかりでありました。
こんなときに使えるのが
特別支配株主の株式売渡請求
という方法です。
これは
会社法に規定のある制度で
会社の90%以上の株式を
持っている株主のことを
「特別支配株主」と言います。
上記のA社長はまさに
この「特別支配株主」
に当たります。
そして
「特別支配株主」は
他の株主に対して
その持ち株の全部を自分に
売り渡すように請求することが
できるとされています。
要するに
90%以上を保有する「特別支配株主」は
他の株主の同意がなくても
その株式を強制的に
買い上げることができる
という制度なのです。
ただし
「特別支配株主」が株式を買い取る場合
その買取金額は公正な
ものである必要があります。
未公開株式の場合は
会社の財産状況によって
自ずと公正な株式の価格
というものが算定できます。
ともかく
A社長としては
この制度を使うことにより
かつての共同経営者であった
Bさんから株を強制的に買取り
関係を清算することができる
というわけです。
法律の建前として
たとえ少数株主であっても
株主の権利は重要です。
とは言え
10%以下という
会社の支配権についてほとんど
影響力のない株主をどこまで保護するか
というのはバランスの問題です。
場合によっては
90%以上を持つ「特別支配株主」に
強制的に株を買い取る権利を与えた方が
会社運営が合理的に進む
という面もあるわけです。
上記の共同経営を例にとれば
「別れ話のもつれ」を解消するための
1つの合理的な制度と言えるかも知れません。
いわば
無駄な争いが続くことを防止する制度
とも言えるでしょう。
別の道を歩むことになったAさんとBさん
お互いに前向きな人生を歩んで
ほしいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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