「慰謝料」というのは
受けた精神的苦痛を
お金に換算したものです。
日本の裁判所の現状では
「慰謝料」は限定的な場合しか認められないし
認められてもあまり高額の慰謝料は
認められない傾向にあります。
(今日の「棒人間」 この精神的苦痛はいくら??)
<毎日更新1175日目>
楽しいクリスマスパーティーのためのピザが52分も遅れるなんて!
とても精神的苦痛を受けました。
訴えてやる!!
宅配ピザを頼んだら
混んでいて到着までに時間がかかる。
何分までなら待てますか??
クリスマスパーティーのために
ピザーラでピザの出前を頼んだら
52分遅れて到着。
精神的苦痛を受けたとして
この男性は
ピザーラの運営法人に対して
慰謝料10万円を請求する裁判を起こしました。
この男性曰く
そして
と訴えました。
まぁ
早くピザが食べたい気持ちはわかりますがね
しかしクリスマスはやっぱり宅配ピザも
混雑しているのでしょうね。
裁判所の判決では
この男性がピザーラからピザの
代金の返金を受けたことに着目し
財産上の損害が補填(ほてん)されているのだから、それを超えてこの男性に「精神的苦痛」なない
という趣旨の判断を行い
慰謝料は認めませんでした。
「ピザ52分の遅配は我慢の限界」 慰謝料求めた男性、司法の判断は
なんか、
ちょっとおもしろい裁判だったので
今回のブログで紹介してみました。
ここで
「慰謝料」というのは何かというと
他人の行為によって精神的な
苦痛を受けたという場合に
その精神的苦痛をお金に換算したものを
法的な「慰謝料」と言います。
わかりやすいのは交通事故で
被害者が後遺障害を負った場合には
後遺障害の重さの程度に応じて
加害者には慰謝料の支払い義務が発生します。
また
被害者が入院や通院を
余儀なくされた場合には
別途入院・通院の期間に
応じて慰謝料が発生します。
まぁ
交通事故の場合は
実際には保険から支払われる
ことがほとんどではありますが。
交通事故の場合は
これまでの非常に多くの事例の集積によって
だいたい事故や怪我のパターンなどによって
慰謝料もある程度類型化されているので
計算がしやすいという面はあります。
しかし
交通事故以外の場面では
そのような類型化がありませんので
実際に受けた精神的な苦痛を
いくらの慰謝料と計算するか
実務的には結構難しい問題があります。
特に
日本の裁判所は
慰謝料を認めることには消極的です。
たとえば
交通事故とか
名誉毀損のように
被害が重篤だったり
目に見えやすい被害の場合は
慰謝料が認められる傾向にありますが
取引など財産的行為が絡む場合は
慰謝料は認められにくいです。
たとえば
友だちに100万円を貸したけれども
期限までに返してくれない。
再三督促をして
期限を1ヶ月も遅らせて
ようやく返してくれた。
この場合には
法定の遅延損害金を請求
することができます。
しかし
貸した方としてはそれでは
収まりがつかない。
期限に遅れてどうして返して
くれないのかとヤキモキし
督促をなん度もして
嫌な思いをした。
それこそ
1ヶ月遅れたことの
精神的苦痛はどうしてくれる?
遅延損害金とは別に
慰謝料を請求したいと考える
場合もあり得るわけです。
しかし
裁判になると
通常は
遅延損害金を払わせることでお金を
貸した方の損害は補填されているので
それに加えて慰謝料までは認めない
ということが多いのです。
冒頭の事例でも
裁判を起こした男性は
ピザーラからピザの代金の返金を受けており
これで損害は補填されて
いると判断されています。
また
仮に「慰謝料」が認められたとしても
その金額がとても低くなりがちです。
被害者が亡くなったとか
重篤な後遺症が残った
交通事故の事案などは別として
ほとんどの事案は
数十万円から
高くても2〜300万円と
いったところが相場です。
長年弁護士をしていると
時たま
非常に高額の慰謝料を請求したい
というご相談を受けることがあります。
そんなとき
私は上記のような説明をして
残念ながら
裁判で高額の慰謝料が認められる
可能性は低いことをお伝えします。
そう言っても
ということをおっしゃる方がいます。
しかしながら
弁護士としては
裁判所の相場からかけ離れた
裁判で認められる可能性の低い
請求を行うことには問題があります。
突然
弁護士から1億円を請求する手紙が
届いたことを想像して下さい。
モメごとに慣れていない普通の方は
それだけで大きな精神的
ダメージを受けます。
それが正当な請求であれば
仕方ありませんが
裁判で認められる可能性が低い請求を
弁護士の名前を使ってやる
というのはやはり悪質です。
そんなわけで
慰謝料を1億円請求してやりたい
というお気持ちは
わからなくはないのですが
そのようなご依頼はお断り
するようにしています。
日本の裁判の現状を考えると
あまり「慰謝料」というものに過剰な
期待を抱かない方が良さそうですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。