施主→元請け→下請けという取引の流れで
基本的に施主と下請けは
直接の契約関係にはありません。
ですから、この場合
下請けが直接施主に工事代金の
請求をすることはできません。
(今日の「棒人間」
<毎日更新1212日目>
都内で建設業の会社を営むA社長が
先日ご相談にお見えになりました。
実は、受注した建物建築工事の件で、下請会社とトラブルになっていまして、困っているのです。
そうなんですね。いったいどうなさったのですか?
下請会社との間で、依頼した追加工事の代金のことで、トラブルになりまして。
工事代金のトラブルですね。具体的にはどんなことでしょうか?
下請会社が、こちらが依頼していない工事まで行って、工事代金も、事前に話していた金額よりもかなり多めに請求してきたのです。
なるほど。下請会社との間で契約書は作らなかったのですか?
それが、お恥ずかしい話、見積書だけでして、あと追加工事は口頭で話しただけで、契約書は作成しておりません。
なるほど、そうなんですね。
それで、うちが支払いを拒否していると、下請会社が施主に直接連絡し出して、施主に対して代金を請求したりしているので、困っているのです。
なるほど。お話を伺っていると、施主と下請会社は直接の契約関係はありませんから、原則として下請会社が施主に代金を請求する権利はありませんね。
やっぱりそうですか。下請会社に、施主に直接連絡されたくないのですが、何かよい方法はないでしょうか?
そうですね。下請会社が施主に直接連絡するのは、一種の越権行為です。もし万が一、それが原因で施主と御社との間の契約が解除されたりしたら、こちらは大きな損害を受けます。その場合には、下請会社に対して損害賠償請求をすることになります。このことを下請会社に伝えて、今回のトラブルの件で施主に直接連絡しないように警告すべきでしょうね。
なるほど、わかりました。
しかしA社長、そもそも、今回の下請会社とのトラブルは、契約書がないために、追加工事の範囲や代金額について争いになっているわけです。やはり、契約書はきちんと作らなければいけませんね。
スミマセン、反省します・・・。
ここでは
まず「契約関係」がどうなって
いるかを整理してみましょう。
A社長の会社は
施主から建物建築の
受注を受けていますので
施主とA社長との会社は
建築請負契約を結ぶ
という契約関係にあります。
そして
A社長の会社と下請会社との間も
同様に別途建築請負契約を
結ぶという契約関係にあります。
ところが
今回のケースでは
施主と下請会社との間には
直接の契約関係にはありません。
ですから
このケースでは
下請会社がA社長の会社を飛び越えて
施主に直接工事代金を請求できる
という関係にはありません。
したがって
下請会社が施主に連絡して
代金を請求するというのは
一種の越権行為と言えるわけです。
下請会社がこのような行動に出れば
施主には
A社長の会社が下請とトラブルに
なっていることがわかってしまいます。
そうなると
ヘタをするとA社長の会社としては
施主からの契約を解除されたり
今後の取引関係に影響が出るなど
損害を被る可能性があります。
そこで
そのような場合には
A社長の会社としては
その原因を作った下請会社に対して
損害賠償請求を行うことが考えられます。
そうしたことを下請会社にきちんと伝え
A社長の会社としては
直接この件で施主に連絡を
とらないように警告を発する
ということが考えられる対応でしょう。
それにしても
そもそも下請会社が施主に直接連絡して
代金請求を行なった原因は
A社長の会社との間で
追加工事の範囲及び代金額を
めぐってトラブルになった
ということがあります。
法律上
一定の例外を除いて
契約というものは必ずしも
契約書という書面を作成しなければ
ならないわけではなく
口頭でも契約は成立します。
しかし
口頭では契約の成立や
その内容などが証拠に残らないため
とかく後々「言った、言わない」の
トラブルになりがちです。
特に
追加工事の範囲や代金額というのは
契約書を作っていなくてトラブルに
なるケースはよく見聞きする話です。
きちんと契約書が
作成されていないために
トラブルが深刻になり
後々「裁判沙汰」になる
リスクも大きくなります。
この点
私のミッションは
「裁判沙汰」を避けるためにも
やはり工事にあたって
契約書の作成は必要です。
ただ
追加工事のたびに契約書を作り直す
というのは確かに面倒です。
その場合は
合意書とか覚書といった
書面で構いませんので
追加工事の内容と代金額
工期などある程度重要な
要素を定めておくべきです。
紙の契約書が面倒だ
という場合には
電子契約書もかなり便利に
使えるようになってきていますので
お勧めです。
とにかく
普段の取引の際に
将来起こり得るトラブルを予想し
それに対してどう予防していくか
という発想は大切ですね。
それでは
また。
◾️裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
◾️【無料】セルフマガジン『裁判しないで解決する方法』の無料送付
◾️YouTube(渋谷の弁護士・吉田悌一郎の中小企業ビジネス法務チャンネル)
最新動画
今回は、「「顧問弁護士の表示」はカスハラ・クレーマー対策に有効」というテーマでお話ししています。
住所 | 150-0031 東京都渋谷区桜丘町4番23号渋谷桜丘ビル8階 マップを見る |
---|---|
受付時間 | 【平日】9:30〜18:00 【土曜日】9:30〜12:00 |
Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。