いったん「裁判」を起こしても
「取り下げ」によって裁判が
終了することがあります。
「訴えの取り下げ」は
場合によっては「裁判沙汰」を
早く終らせる効果があります。
(今日の「棒人間」 訴えの取り下げとは?)
<毎日更新1287日目>
先週
ダウンタウンの松本人志さんの
話題は衝撃でしたね。
松本さんが
文藝春秋などに損害賠償を
求めている裁判で
松本さん側が訴えを取り下げる
方針であると報道されました。
松本さんは
今年1月
文藝春秋と週刊文春編集長に対して
5億5000万円の損害賠償を
求める裁判を起こしました。
かなりの大きな裁判で
その結果がどうなるか
多くの人の関心ごとではありました。
しかし
もし今回松本さんが訴えを取り下げれば
「裁判」は終了することになります。
訴えの取り下げ
というのは民事訴訟法上の用語で
民事裁判では
裁判を起こす方を「原告」
起こされる方を「被告」と言います。
訴えの取り下げは
原告が提起した裁判を
裁判の審理の途中で取り下げ
裁判自体を終了させる
ことを意味します。
これだけの大きな裁判を
起こすにあたっては
松本さん側もいろいろとこれまで
大変な準備をしてきたことでしょう。
今回
松本さんはなぜ訴えを取り下げ
裁判を終了させたのでしょうか?
実は
この訴えの取り下げというのは
原告が自由にできるわけではありません。
裁判が開始して
実質的な真理が始まった後は
裁判の相手方
すなわち被告側の同意がなければ
原告は訴えを取り下げる
ことはできません。
というのは
裁判で判決が出されて確定すると
一定の拘束力があります。
もし
松本さんの5億5000万円の損害賠償請求が
判決で認めらなかったとしましょう。
そうすると
文春側には、法律上
松本さんに対してこれだけの
高額の賠償義務はない
ということが確定するわけです。
今回、文春側も
裁判の中で全面的に争っていた
と言いますので
おそらくこの賠償義務がないことが
確定される判決の獲得を
目指していたはずです。
もし
裁判を起こした原告の方で
自由に訴えを取り下げる
ことができるとすると
どうなるでしょう?
これだけ高額の裁判を
起こされた文春側も
費用と時間をかけてこれかで
裁判の準備をしてきた活動が
すべて無駄になってしまいます。
さらに
訴えが取り下げで終了すると
判決のように法律関係を
確定する効果がありません。
そうすると
仮に松本さんが裁判の中で
ちょっと自分が不利になってきた。
このまま判決になると
負ける確率が高いとなったら
どうするでしょう?
一旦裁判を取り下げて
もう少しいろいろ準備をして
自分に有利な材料がそろったら
もう一度同じ裁判を起こす。
こんなことをされたら
被告の立場に立たされた側は
たまらないでしょう。
いくらでも裁判を使った
「紛争の蒸し返し」が
できてしまいます。
それゆえ
上記のとおり
一定の段階に入った後は
訴えの取り下げは原告の自由にはできず
被告の同意がいるとされているのです。
そこで、今回は
松本さん側が裁判の中で訴えを
取り下げる打診を行い
被告である文春側がそれに
同意したと考えられます。
一体なぜ
文春側は訴えの取り下げに
同意したのでしょうか?
実は
今回の松本さんの件に限らず
訴えの取り下げが行われるときは
裁判外で原告と被告と
話し合いなり示談がまとまって
一定の合意に至っている
ケースが多いのです。
簡単に言えば
裁判外で話がついたので
裁判はもう意味がないので
取り下げましょう
ということです。
ですから
今回の件も
松本さん側と文春側で
裁判外で何らかの話し合いが行われ
一定の合意が成立した
可能性はあります。
どういう合意が成立したのかは
もちろんわかりませんが。
ただ
民事裁判というものは
一度始めたら必ず最後まで手続きを
行わなければならない
わけではありません。
裁判の途中で
原告と被告で一定の合意ができれば
「和解」で終了することもあります。
訴えの取り下げは
「裁判上の和解」のように裁判上何らかの
強制力が発生するわけではありません。
しかし
裁判外でもし話がついた
ということであれば
裁判を終了させるという
意味があるわけです。
いわば
「裁判沙汰」になっても
それを早く終わらせる手段に
なり得るということです。
それにしても
あれだけセンセーショナルに
裁判を起こした松本さんの
突然の訴え取り下げの
報道には驚きましたね。
裁判外でどんな話し合いになったのか
気になるところではありますが。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。