不動産販売業者が
物件を「新築建物」と表示できる
ためには要件があります。
しかし
その要件を満たしていても
所有権の保存登記がなされた後は
税制上の優遇措置を受けられなく
なるおそれがあるので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 「新築」と表示していいの??)
<毎日更新1326日目>
先日
不動産販売の会社を経営する
A社長からご相談をいただきました。
こんにちは。
今日は、弊社が販売する建売の新築住宅に関してご相談がありまして。
A社長こんにちは。
建売の新築に関してですね。具体的にはどのようなご相談でしょうか?
実は、うちで販売している新築物件で、売買契約成立後、買主が入居する前に、いろいろ事情があって契約を解消してうちが買い戻すことになったのです。
なるほど、新築物件の契約解消で物件の買い戻しですね。
それで、その上で再度その住宅を販売したいのですが、まだ新築後1年以内なので、「新築」と広告しても法律上は問題ないでしょうか?
その建物ですが、所有権の保存登記はされていますか?
はい、保存登記はすでに行なっております。
そうですか〜。
確かに、新築後1年以内であれば、法律上は「新築」と広告で表示すること自体は可能です。
しかし、注意しなければならない点があります。
それはなんでしょうか?
実は、建物の所有権の保存登記を行うと、新築に伴う様々な税務上の優遇措置を受けられなくなる可能性があります。
そうなんですか。
ですから、そうしたことは「重要事項説明書」などで明確に買主に説明し、誤解のないようにする必要がありますね。
そもそも
「新築物件」とは何なのか?
これは
「不動産の表示に関する公正競争規約」
というものに定められています。
それによると
新築とは
を言うとされています。
ちなみ
ここで言う「建築工事の完了」というのは
「建物をその用途に従い直ちに使用する
ことができる状態に至ったこと」
を言うとされています。
具体的には、ガス、水道
電気等の施設が整備され
入居者が引っ越しをした場合に特に
支障なく生活できる状態を言います。
ですから、まず
広告などで「新築建物」
と表示するためには
上記の通り
工事完了後1年以内の
建物でなければなりません。
さらに
「居住の用に供されたことがないもの 」
という要件も加わります。
ですから
1年未満であっても
誰かが実際に入居してしまうと
もう「新築」とは表示
できなくなるわけです。
それでは
冒頭のA社長の会社の例のように
一旦は新築物件の売買契約
を締結したものの
買主が入居する前に契約が解消され
物件が買い戻された場合は
どうでしょうか?
この場合に
A社長の会社では
再びこの物件を広告で「新築建物」と
表示することはできるのでしょうか?
ここで
この場合に1点注意しなければ
ならない問題があります。
実は
「新築建物」については
いくつかの税務上の優遇措置を
受けることができます。
具体的には
住宅ローンの所得税の特別控除
不動産取得税や登録免許税の
軽減措置を受けることができます。
ところが
工事完成後1年以内で
居住の用に供されたことが
ない物件であっても
所有権の保存登記を行うと
話が違ってきます。
これらの税制上の優遇措置との関係では
所有権の保存登記を行うと
もはや「新築」とは認められず
これらの優遇措置を受けられ
なくなる可能性があります。
ですから
上記のA社長の事例では
あくまでその物件を「新築建物」
と広告で表示して販売すること自体は
法律上OKではあります。
しかし
買主の立場からすれば
上記の新築建物に認められる
税制上の優遇措置を期待して
購入することがあります。
にもかかわらず
後でそうした優遇措置を受けられない
ことを買主が知ったときに
買主との間でトラブルになる
危険性があります。
ですから
やはり不動産業者としては
重要事項説明書等で
新築建物ではあっても
税制上の優遇措置が受けられない
可能性のあることを明記して
誤解のないように説明して
おく必要がありますね。
こんな風に
「新築建物」と言っても
それが広告で「新築」と表示
できるかどうかという問題と
税制上の優遇措置を受けられる
「新築建物」に当たるかどうかは
また別問題
ということになっているのです。
法律って
ややこしいですね(笑)
とはいえ
お客様との後々のトラブルを
予防するためには
不動産業者としては
その辺をきちんと理解して
買主に説明する必要があるでしょうね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。