
わずか1000円を着服したために
約1200万円あった退職金が
全額不支給に。
実は
社員の不祥事と退職金の
不支給は結構微妙な問題で
裁判例も判断が
わかれていたりします。
<毎日更新1448日目>
あなたは不祥事で信頼を大きく損なった。
はぁ〜。
退職金全額の不支給は妥当です!
そんな、殺生な!
運賃1000円を着服したとして
懲戒免職になった京都市営バスの
元運転手の男性。
約1200万円の退職手当を全額不支給
とした市の処分が重すぎるとして
取り消しを求めて訴訟提起。
先日
最高裁の判決で
全額不支給は妥当との判断を
示したという報道がありました。
1000円着服のバス元運転手、退職手当の不支給「妥当」 最高裁、男性敗訴
実は地裁と高裁の判断は分かれていて
一審の京都地裁は
と指摘。
被害額が1000円で弁償
していることなどを考慮しても
退職金全額不支給の市の処分は
妥当と判断しました。
ところが
二審の大阪高裁では
退職手当について
として
この男性が行った行為の内容や程度に比べて
退職金全額不支給の処分は酷であるとして
この市の処分を取り消しました。
こんな風に
地裁と高裁で判断が分かれていたのですが
最高裁は
地裁と同様に
退職金全額を不支給とした市の判断が
妥当であるとの判断を下したわけです。
ここで
整理しておきたいのは
一般の会社においても同じですが
社員の不祥事と
退職金の不支給の問題は
一応別問題だということです。
つまり
社員の不祥事を理由に
懲戒解雇がなされたとしても
さらに退職金の不支給が有効
となるかどうかはまた別問題なのです。
というのは、
退職金というものには
次の2つの性質があると
言われています。
1つ目は
です。
これは
社員の長年の功労に対して
退職金というお金で報いる
といった性質です。
そして
もう1つは
といわれるものです。
これは
賃金の一部を後払いとすることで
社員の定着を促す役割があると
言われています。
たしかに
不祥事を起こして懲戒解雇になった社員
については
1つ目の功労褒賞としての側面
で考えれば、退職金の不支給や減額は
認められやすいでしょう。
しかし
もう1つの
賃金の後払い的性質を考えれば
いくら懲戒解雇になった社員だからといって
そう簡単に不支給や減額はできない
という結論になります。
なので
懲戒解雇になった社員に対して
退職金を不支給ないし減額が有効
となるためには
社員のそれまでの勤続の功労を抹消ないしは減殺してしまう程度の、著しく信義に反する行為があった場合に限られる
とされています。
そう考えると、今回
1000円の着服で
約1200万円の退職金全額を
不支給とした市の処分の妥当性は
かなり微妙だということになりそうです。
わずか1000円の着服で
しかも弁償もすんでいるのに
果たしてこれが
と言えるかどうか。
それで
約1200万円の退職金全額が
不支給となってしまうのは
確かに上記の大阪高裁が
判断しているように
少々酷な感じもします。
この点は
民間企業とは違い
市営バスの運転手という公務員という立場が
地裁や最高裁の厳しい判断を
導いたとも言えそうです。
ただ
別の裁判例では
もっと大きな不祥事を起こしているケースで
退職金全額の不支給は違法と
判断しているものも多いので
注意が必要です。
あくまで今回の判決は
少し特殊なケースと考えた方が
良いかも知れません。
一般的には
退職金の全額の不支給が許されるのは
相当限定的な場合が多いかと思います。
そんなわけで
私はやはり
社員の不祥事があったからといって
安易に退職金全額を不支給としてしまうのは
後からそれが違法と判断される
リスクも小さくないと考えます。
その辺は
事案に応じて慎重に
判断したいものですね。
それでは
今日のダジャレを1つ。
1000円の着服で退職金1200万円がパーに。最高裁まで行って最高級に酷な判決。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。