
自社の顧客名簿を他社に漏洩した社員。
会社は
この社員を解雇できるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 情報を盗む人?)
<毎日更新1477日目>
都内で歯科医院のクリニックを
複数経営しているA院長。
最近
クリニックのある事務職員を
解雇するかどうかで非常に悩んでいます。
というのは
この職員は
他のライバルクリニックに
A院長のクリニックの顧客名簿の情報を
流していたことが発覚したのです。
発覚した経緯は
この職員が
ライバルクリニックの職員宛に
作成したメールを
誤ってA院長のクリニックのメールに
送ってしまったのがきっかけでした。
A院長は
動かぬ証拠をつきつけ
この職員を問いただしました。
ところが
この職員は悪びれる様子もなく
自ら退職しようともせず
平然と毎日クリニックに出勤しています。
自分のクリニックの顧客名簿の情報を
ライバルクリニックに流す
などというのはひどい裏切り行為。
A院長としては
もはやこの職員を信用することができず
1日も早くクリニックを辞めて
もらいたいと考えています。
A院長は
この職員を解雇することは
できるのでしょうか?
まず
大前提として
懲戒解雇をするためには
就業規則でその根拠となる
規定を定める必要があります。
いわゆる「懲戒規定」というものですね。
さらに、その上で
実際に解雇するためには
という2つの要件を
満たす必要があり
これを満たさない解雇は
「解雇権の濫用」として
解雇が法的に無効とされます。
①の解雇の客観的合理的理由では
職員の行為の悪質性が
問題となります。
たとえば
職員がクリニックの「顧客名簿」を
どうやって持ち出したのか。
厳重にパスワードなどで
管理されていたものを盗み出したのか。
逆に
その「顧客名簿」が職員であれば誰でも
アクセス可能な状態にあったのか。
また
職員の行為によって
クリニックに実害が生じているかどうか。
実害というのは
顧客名簿をライバルクリニックに
流されたことで
売上が減少したとか
信用が低下したとか
そういった事情です。
また
事後的にこの職員に弁明の機会を
与えたかどうかも1つの
ポイントになってきます。
このように
職員の問題行動や違法行為があれば
即懲戒解雇できるというものではなく
実際上は結構ハードルが高いのです。
就業規則に懲戒規定が
整備されていない場合は
懲戒解雇はできません。
その場合は
普通解雇の要件を
満たすかどうかを検討します。
普通解雇においても
上記の2つの解雇の要件を
満たす必要があります。
いずれにしても
社員を解雇しようという場合には
法的な要件を満たすかどうかを
慎重に検討する必要があります。
そうした検討をせずに
安易に解雇することだけは
避けなければなりません。
もし安易な解雇をすると
後々社員から解雇無効の裁判を
起こされる危険があります。
裁判に引きずり込まれた挙句
裁判所で解雇が認められなかった場合
多額の解決金の支払いを
余儀なくされるケースもあります。
顧客名簿を漏洩された上
お金まで払わされたのでは
たまったものではありません。
やはり解雇というのは裁判実務上
非常にハードルが高いのが現実です。
なるべくなら
解雇ではなく
その社員が自ら会社を
辞めるように働きかける
退職勧奨から行なっていくべきでしょうね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。