
承諾を得ないで会話などを
録音する「秘密録音」
「秘密録音」は原則違法とは言えませんが
やり方次第では違法と判断
される場合がありますので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 会話を秘密で録音??)
<毎日更新1522日目>
みんなでオレの陰口を言いやがって!訴えてやる!
Aさんは
職場で周囲の同僚社員から陰口を
言われていると悩んでいました。
陰口を言われていることは
わかっていましたが
目にみえる証拠がなく
手の打ちようがありませんでした。
次第にAさんは追い詰められ
陰口を言っている相手を
訴えることを決めました。
裁判となれば
陰口を言われているという
動かぬ証拠が必要。
そこでAさんは
職場の休憩室にボイスレコーダーを設置。
約4ヶ月間
20回ほど気づかれないように
1回につき3時間ほど録音しました。
そうしたところ
録音から
他の同僚がAさんの噂や悪口を
吹聴する声が数々出てきました。
そこで
Aさんはこの録音を証拠に
陰口を言っていた同僚2人に対し
慰謝料を求めて裁判を起こしました。
ところが、裁判では
訴えられた同僚2人から
意外な反論が出てきました。
それは
休憩室での無断録音は「盗聴」にあたり
プライバシー権や人格権を侵害されたとして
逆にAさんに対して損害賠償の
裁判を起こされたのです。
相手に内緒で録音することは合法なのか?
これは
結構多くの方が関心を
持たれているテーマです。
この点
刑事事件では
秘密録音などが裁判の証拠
として扱えるかどうかは
かなり厳しく判断されます。
しかし
民事事件の世界では
無断で録音すること自体は特に
禁止されているわけではありません。
ただ
「秘密録音」は
やり方次第では民事上の不法行為となり
損害賠償義務が発生することも
あり得ます。
この点
相手方との会話を録音することは
違法ではない
という趣旨の最高裁判決が
あります。
ただ
仮に「秘密録音」自体が違法
ではないとしても
その録音した記録(音声データなど)
が民事裁判で証拠として使えるか、
という問題があります。
この点も裁判例があり
というような場合には、
裁判の証拠とすることが
できないとしています。
逆に言えば
このような例外的な場合に
当たらない限り
秘密録音の記録も民事裁判の証拠
とすることができる、
ということになります。
さてさて
上記のAさんの裁判は
どうなったのでしょうか?
判決では
休憩室という一定のプライバシー権が
認められる場所で
録音が「長期間、網羅的にされた」
ことなどを総合的の考慮し
録音によって相手の「著しい権利侵害」が
あったと判断されたのです。
要するに
Aさんが行った録音は違法であると
判断されたわけです。
これは
一般に秘密録音に対してそれほど
厳しくない民事裁判においては
例外的な判断であると思われます。
確かに
公の場所ではなく
「休憩室」と言えば
ある程度プライバシーが
尊重されるべき場所です。
また
録音のやり方も
4ヶ月という長期間にわたり
1回3時間で20回という
多数回に及んでいます。
いわば「盗聴」とも言えるやり方で
常識的な範疇を超えたやり方
であったと評価できます。
判決では
こういった点が重視され
例外的に秘密録音が違法
とされたものと考えられます。
ただ
この判決では
陰口を言った同僚2名に対しても
Aさんに対する一部の賠償を命じました。
いわば
「ケンカ両成敗」のような
判決になったようです。
Aさんの秘密録音に対しては
厳しい態度をとりつつ
2名の同僚による職場での陰口も
悪質であったいうことで
ある意味バランスをとった
判断と言えるかも知れません。
そのようなわけで
内緒での録音は基本的に
許されていると考えて良いのですが
やり方次第では違法と
されることがありますので
注意が必要ですね。
それでは
また。
*なお、上記の事例は、日本経済新聞電子版「揺れた天秤」より引用しました。
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