
社用の携帯電話を社員に
貸与している会社はあるでしょう。
その場合
その携帯の利用料を社員に支払わせる
ことはできるのでしょうか?
さらに
給料から利用料を天引き
することは可能でしょうか?
(今日の「棒人間」 携帯利用料を天引きされてビックリ??)
<毎日更新1589日目>
社用の携帯料金の給料天引きはダメ!
ゲゲゲ!
東京都内のある不動産会社で
情報漏えいを防ぐため
社内に社員個人の携帯の持ち込みを禁止し
社員は会社から貸与された携帯を
使用するという決まりがありました。
この会社のある社員が退職した際
給料から在職期間中に社内携帯電話の利用料
約1万7000円が差し引かれていました。
そこで
社員は差し引かれた利用料の返還
などを求めて会社を提訴。
判決は
会社が社用の携帯電話の利用料を給料から
天引きしたのは不当であるとして
差し引いた利用料の
返還を会社に命じました。
判決では
そもそもこの会社では
社用の携帯電話の利用料を社員が
負担する社内規定がないことを指摘。
さらに
そもそも会社都合で貸与された携帯電話の
利用料を社員が負担する必要はないとしました。
他方で
会社側は
給料から差し引いたのは
あくまで業務以外の私的利用の部分に関してであり
業務に使用した部分は除いていると主張しました。
しかし
判決では
会社が差し引いたのが業務以外の利用分であった
と認める証拠はないとし
この会社側の主張は認めませんでした。
この事例では
いくつか検討すべき問題があるのですが
まず
そもそも
会社の業務で使用された携帯電話の利用料を
社員に負担させることができるのか
という問題があります。
この点は
会社は事業主として
事業活動に必要な経費(事業経費)
を負担するのが原則です。
そして
社用携帯の利用料は
業務を遂行するために必要な費用であり
事業経費にあたります。
ですから
上記の判決が指摘するとおり
会社都合で貸与した社用携帯の
利用料を社員に負担させることは
基本的にできないという結論になります。
ただし
社用携帯の利用料であっても
仮に業務とは無関係に社員が
私的に利用した部分については
社員の負担とすることは可能です。
それでは
仮にそうした私的利用部分があったとして
その部分を社員の給料から
天引きすることは可能でしょうか?
この点
労働基準法では
賃金の直接・全額払いの原則
というものが定められています。
すなわち
労働基準法24条1項では
と定められています。
給料というものは
社員(やその家族)の生活を支えるものであり
給料が全額きちんと支払われるかどうかは
社員にとっては死活問題です。
そこで
社員が支払うべき費用などを社員の給料から
天引きして支払わせることは
原則として禁止されているのです。
それでは
社用携帯の私的利用の部分について
その社員が給料からの天引き
に同意しているときは
どうでしょうか?
こうした場合には
には天引きをすることも
例外的に許されるとしています。
ですから
もし給料からの天引きを行うには
その社員の真摯な同意があることが前提で
きちんとした同意書を作成して
おくことが大切です。
さらに
こうした社用携帯の私的利用部分を
給料から差し引くことについての
「労使協定」がある場合。
その場合にも
給料からの天引きが認められる
とされています。
ただし
その場合は
前提として
あらかじめ就業規則等で
社用携帯の私的利用部分を毎月の
給料から天引きすることを定めておく
必要があります。
さらに
実際に天引きする際には
業務に使用した部分と
それ以外の私的利用部分を
きちんと明確に社員に示すことも
当然必要です。
なかなか厳密にわけて明示することは
実際には難しそうですけどね。
いずれにしても
上記事例のように
社用の携帯を社員に貸与する
会社はあるでしょう。
携帯電話の利用料をめぐって社員との
トラブルや「裁判沙汰」を避けるためにも
そのための対策はきちんと
行なっておきたいものです。
それでは
今日のダジャレを1つ。
社用の携帯電話の利用料を給料から天引きしちゃって、ケッタイな話に・・・
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。