
社員が会社に損害を与えた場合に
社員に代わって賠償責任を
負担してもらう身元保証契約。
しかし
身元保証人の責任が
過大になるのを防ぐため
法律上の厳しい規制があります。
要件を満たさない身元保証契約は
法的に無効となってしまいますので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 保証します??)
<毎日更新1618日目>
社員が会社のお金を着服する横領事件。
2024年度の社員による横領事件の
認知件数は2365件ということで
増加傾向にあるようです。
被害金額も
数百万円から数千万円程度
のものも珍しくなく
中には数億円レベルの
被害もあるようです。
先日
都内で会社を経営するA社長より
やはり社員の横領事件に関する
相談を受けました。
実は、お恥ずかしい話、うちの社員が会社のお金を横領していたことが発覚しまして。
なるほど、どのくらいの被害ですか?
それが、3年くらいの期間で行われているのですが、合計800万円以上の被害になりそうです。
それは、大きいですね。
そうなんです。それで、その社員には会社を辞めてもらうことになったのですが、横領したお金は全部ギャンブルで使ってしまって、ほとんど残っていないのです。
それは、困りましたね。
ただ、この社員の入社時に、この社員の親族が身元保証をしていまして、この親族に請求できないかと考えているのです。
その社員は、何年前に入社したのでしょうか?
ええと、ちょうど10年前です。
残念ながら、身元保証契約というのは、最長で5年を超えてはいけないと決まっているので、10年前ではすでに効力がなくなっていますね。
そ、そうなんですか!
さらに、数年前に民法が改正されまして、保証契約には上限額の定めを設けなければいけないことになっていて、上限額の定めがないと無効になってしまうのです。
そうだったんですか。
A社長、これを機に、他の社員さんの身元保証契約も全面的に見直しをされた方が良いと思いますよ。
わかりました。そうします。
身元保証契約というのは
会社と社員の身元保証人との間で
締結されるもので
損害賠償責任に関する契約です。
簡単に言えば
社員が会社に損害を与えたようば場合に
身元保証人がその社員に代わって
賠償責任を負担する契約を言います。
この身元保証契約に関しては
昭和8年にできた「身元保証ニ関スル法律」
(通称「身元保証法」)という法律の
規制があります。
すなわち
身元保証人の責任が過大にならないように
法律で規制しているわけです。
具体的には
身元保証について
特に期限を設けなかった場合は
身元保証契約の有効期間は
3年とされています。
つまり
その場合は
3年を過ぎると身元保証契約は
効力を失ってしまう
ということです。
また
契約期間を定める場合でも
身元保証契約の期間は5年を
超えてはならないとされています。
ですから
仮に身元保証の期間を
10年と契約で定めても
5年に短縮されるというわけです。
また
2020年の民法改正により
身元保証を含む保証契約については
極度額と言われる上限額を
定めなければならなくなりました。
この極度額の定めのない保証契約は
無効となってしまいます。
ですから
5年以上前に締結された身元保証契約とか
極度額の定めのない身元保証契約は
効力がないということになります。
そこで
たとえば会社が新入社員を雇うにあたり
身元保証契約を締結する場合
会社としてはどのような点に
注意すれば良いでしょうか?
まずは
何といっても上記で述べた
「極度額」の定めを入れることです。
たとえば
というような定めをすることです。
次に
身元保証契約の期間に
関する定めをすることです。
上記のとおり
期間を定めなかった場合は
身元保証契約の期間は3年に
制限されてしまいます。
そこで
と定めておきます。
しかし
このように定めても
5年が経過すれば
身元保証契約は効力を失ってしまいます。
そこで
5年ごとに契約更新の手続きを行う
ことを忘れないようにすべきです。
雇用期間が長い社員などは
かなり昔に作成した身元保証契約書の
ままになっているケースがあります。
しかし
身元保証に関して上記のような
法的な規制があります。
いざというときに効力が生じない
契約では意味がありません。
これを機に
社員さんの身元保証契約の見直しを
行うことをお勧めします。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。