後継者として着々と準備を進めていた長男が
なぜ会社を失ってしまったのか。
円滑な事業承継のための遺言の
役割について考えてみました。

(今日の「棒人間」 会社から追放される??)
<毎日更新1830日目>
都内で建設業を営んでいるX株式会社。
そこの社長であるAさんは
70歳を過ぎても第一線で活躍する
パワフル経営者でした。
ただ
そうは言っても
A社長の年齢も年齢なので
そろそろ会社の事業承継という
ことを考えなければなりません。
その時点でAさんの妻は
すでに他界しており
残された家族は長男と次男
及び長女の3人の子どもでした。
幸い
長男は親孝行で能力も高いため
早くからX社に入社して
A社長の後継になるべく
業務に邁進していました。
他方で
次男は遊び人で若い時から
親にお金の無心ばかり。
仕事も職を転々としていて
一定の年齢になっても
落ち着きません。
当然
次男は父親が経営するX社のこと
などにもまったく関心を示しません。
そして
末っ子の長女は
すでに結婚しており
遠方に居住しています。
そのような状況でしたので
A社長としても
X社の時期社長は長男にと考えており
実際にその準備も進めていました。
具体的には
X社の株式500株のうち
すでに200株については
長男の名義に変えていました。

ただ
A社長としては
まだまだ自分が会社経営の
第一線から退く決意ができず
そのままになっていました。
周囲も
A社長の元気な姿を見ていて
しばらくはこのままAさんが社長を続け
頃合いを見て長男に社長を交代
するのだろうと考えていました。
ところが
やはり人間は何が起こるかわかりません。
元気そうに見えたA社長ですが
くも膜下出血になり
突然亡くなってしまったのです。
問題は
この場合A社長が持っていた
自社株300株がどうなるのか
ということです。
A社長が特に遺言を残さずに亡くなった場合
遺産であるこの300株の株式は
法定相続人である長男、次男及び
長女の3人で共有(正確には準共有)
ということになります。
そして
その共有の持分は
法定相続分にしたがって
それぞれ3分の1ずつ
ということになります。
その後相続人間で遺産分割協議が
行われるまでは
この共有の状態が続きます。
さらに
株式が共有となった場合
この株式(300株)について権利行使
(たとえば株主総会での議決権行使など)
を行うには
権利行使すべき者1人を共有者の中から選び
会社に通知しなければならない
とされています。
この権利行使者の指定は
それぞれの持分価格の過半数による多数決
で行うことができるとされています。
ここで注意しなければならないのは
A社長が生前持っていた300株は
株式数と法定相続分に応じて当然に
1人100株ずつ分割されるわけではない
ということです。
つまり
長男と次男及び長女のそれぞれが
100株ずつ保有するのではなく
3人で300株を共有(準共有)
することになります。

もちろん
残された子ども達の関係が円満であれば
それでも良いかも知れません。
しかし
何かで意見の食い違いが生じて
もし仮に後継者である長男と
次男及び長女との間に対立が
生じた場合はどうなるか。
長男は上記のように単独で
200株は持っているものの
A社長が持っていた300株については
上記のとおり3分の1の持分
しかありません。
そして
上記の権利行使者の指定は持分価格の
過半数の多数決でできますので
次男と長女の意見(過半数超)
によって権利行使者が決まります。
仮に
この多数決で
A社長の株式300株の権利行使者を
次男と指定したとしましょう。
そうすると
X社の株主総会を開いたとしても
長男は200株の議決権しか行使できず
他方で次男は300株の権利行使ができる。
つまり
長男はX社の株式の過半数を
押さえることができず
会社経営に重大な支障が
出てしまうことになります。


結果的に
親孝行で後継者にふさわしい
長男が会社から追放され
放蕩息子の次男によってせっかくA社長が
築き上げたX社の経営が荒らされてしまう。
結構
恐ろしい結果になると思いませんか?
さてさて
こういった事業承継の足かせとなる
トラブルを予防するためには
どうしたら良いのでしょうか?
それは
やはりA社長が元気なうちに
会社の株式についても「遺言」を
作成しておくことです。
具体的には
A社長が生前に
自分の持株(300株)をすべて
長男に相続させる
あるいは
最低でも長男が自身の持株(200株)と
合わせて過半数の持株を持てるように
A社長の持株のうち100株を長男に相続させる
という内容の遺言を作成しておくことです。
そうすれば
後継者である長男は
A社長の死後
A社長の持株全部か
少なくとも100株は取得する
ことが可能になります。
このように
社長が「遺言」を残すというのは
事業承継対策としてとても
有効な手段です。
ただ
A社長の遺言によって
他の相続人である次男や長女の
「遺留分」を侵害してしまう
ことがあります。
「遺留分」とは
亡くなった人が遺言で財産を
自由に分けようとしても
特定の相続人(配偶者、子など)に
最低限保証される取り分
のことを意味します。
この点
遺言によってA社長の株式を
長男に承継させても
次男や長女から遺留分の請求をされると
会社の株式も含めたA社長の遺産についての
相続争いとなってしまうリスクがあります。
ですから
遺言を作成する段階で
この他の相続人の「遺留分」にも
配慮した内容にすることが重要です。
いずれにしても
社長の死亡後に会社の株が
分散してしまうと
後継者が会社を運営していくにも
大きな支障が出てしまいます。
そこで
早めの遺言作成による事業承継対策を
検討された方が良いでしょう。
それでは、また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。