「この誓約書にサインしないなら
退職金は出せないよ。」
会社としては自社を守るための対応だとしても
その判断が法的に認められるとは限りません。
今回は
退職時の「競業避止義務」と退職金の
関係について考えてみます。

(今日の「棒人間」 退職金はお預け??)
<毎日更新1889日目>
A社長の会社に長年勤めた社員であるX氏。
このX氏がA社長の会社を
退職することになりました。
この退職にあたり
A社長は、X氏に対して
「競業避止義務」の誓約書を
書くように求めました。
「競業避止義務」というのは
簡単に言えば
自社の業務とライバル関係にある
会社に転職したり
そういう企業を新たに
設立したりしてはならない
義務のことです。
A社長の会社の場合
具体的にはX氏に対して
退職後にA社長の会社の取引先に接触
しないことを誓約させる内容でした。
これについ
X氏は誓約書への署名を拒否。
頭に来たA社長は

それなら、もう君の退職金は支払わない!
とやってしまった。
実は
A社長の会社には
退職時に社員が「競業避止義務」の
誓約書を提出しない限り
退職金を支給しないことがあると
定めた就業規則があったのです。
ここで
社員の退職後の「競業避止義務」
について
法的に少し整理してみましょう。
この点
社員が会社に在職中の間は
社員は一種の雇用契約上の義務として
「競業避止義務」を負って
いるとされています。
社員が競業行為を行うということは
いわば会社の利益を犠牲にする
ことにつながります。
この点
社員は
雇用契約上の義務として
当然会社に損失を被らせる
ようなことをしてはいけない
という義務を負っています。
ただ
これはあくまで
社員が会社に雇われている間
在職中の話です。
社員の退職後というのは
会社との雇用契約は
終わっていますので
当然に社員に「競業避止義務」が
発生するわけではありません。
そこで
退職後の社員に「競業避止義務」を
課したい場合には
個別に会社とその社員で
「競業避止義務」に関する
「合意」を行う必要があります。
「競業避止義務」の合意があれば
社員は会社を退職した後も
定められた範囲で
競業する会社に転職したり
競業する会社を起業したりする
ことができなくなります。
ただ
他方で
社員の側にも
憲法で保障された
「職業選択の自由」があります。
そこで
規制が強すぎるなど
合理性のない「競業避止義務」
の合意をしても
その合意は公序良俗違反で
無効とされてしまいます。
具体的に
退職後の「競業避止義務」の
合意が有効となるためには
次の要件を満たす必要が
あるとされています。
すなわち
まず
社員に「競業避止義務」を課す
正当な必要性があること。
これは
たとえば会社の顧客情報などの
営業秘密や技術・ノウハウなどを
守る必要性がある場合などです。
そして
次に
競業避止義務の制限の
内容が妥当であること。
これには
「競業避止義務」の期間
地域
対象業務の範囲などが
問題となります。
これらが広すぎると
上記の「公序良俗違反」と
なりやすくなります。
そこで
退職後の「競業避止義務」の合意が
有効となるためには
制限される場所は
同一の市区町村やその近隣程度
としておいた方が無難でしょう。
また
禁止期間もせいぜいせいぜい1〜2年
程度に制限しておいた方が良いでしょう。
さて
仮に会社が課そうとする社員の退職後の
「競業避止義務」がこういった合理的な
範囲内のものであった場合。
この場合に
しかし退職する社員が
この「競業避止義務」の誓約書に
サインするのを拒んだ場合
就業規則の定めに従って退職金を支給
しないということができるのでしょうか?
この辺は
長くなりましたので
また明日お話しします。
それでは
また。
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